進む(読み)ススム

デジタル大辞泉 「進む」の意味・読み・例文・類語

すす・む【進む】

[動マ五(四)]
前方に向かって動く。動いて先へ行く。前進する。「一歩―・んで礼をする」「出口に向かって―・む」⇔退く
物事はかどる。進行する。「仕事が―・む」「研究が―・む」「開発が―・む」
盛んになる。勢いがつく。「暑さ続きで食が―・まない」
物事の程度・状態が、その度合いを増す。
㋐上達する。進歩・進展する。「世の中が―・む」「先進国の―・んだ技術を学ぶ」
階級・段階が上がる。昇級・昇進する。「管理職まで―・む」「中学に―・む」「決勝戦に―・む」
病状などが悪くなる。悪化する。ひどくなる。「近視が―・む」「インフレが―・む」「自然破壊が―・む」
めざす方向に行く。ある分野で身を立てる。志す。「法曹界に―・む」
乗り気になる。積極的になる。「気が―・まない」「―・んでつらい仕事を引き受ける」
他よりも先を行く。先行する。「―・んだ考えの持ち主」「この時計は日に一分―・む」⇔遅れる
はやり立つ。高ぶる。
「家思ふと心―・むなかざまもりよくしていませ荒しその道」〈・三八一〉
あふれ流れる。
「涙の―・むをさらぬていにもてなし」〈保元・中〉
[可能]すすめる
[動マ下二]すす(進)める」の文語形
[類語](1向かう前進する直進する突進する驀進ばくしんする邁進まいしんする進行する進出する・歩を進める・進める/(2はかどる運ぶ進捗しんちょくする進行する進展するはかが行く軌道に乗る波に乗る流れに棹差すエンジンが掛かる/(4㋐)進歩する進化する発展する発達する向上する/(4㋑)上がる昇進する昇格する昇級する進級する進学する栄進する昇任する栄達する昇段する栄転する出世する立身する立身出世する累進する特進する格上げ利達成り上がり成り上がる身を立てる/(4㋒)こうずる進行する昂進こうしんする激化する悪化する退歩する退化する後戻り冷える

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「進む」の意味・読み・例文・類語

すす・む【進】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙
    1. 前方へ動いて行く。前進する。
      1. [初出の実例]「ますらをの すすみ先立ち 踏める足跡(あと)を 見つつしのはむ」(出典:仏足石歌(753頃))
      2. 「是を矢立の初として行道なをすすまず」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立)
    2. 自然と時がたつ。また、時とともに人生を送る。
      1. [初出の実例]「年、我より少し進(すすみ)たるをば兄の如くにし」(出典:今昔物語集(1120頃か)五)
    3. 階級、段階があがる。また、次の段階に移る。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
      1. [初出の実例]「つかさ、くらゐはややすすみてさへこそ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
      2. 「優勝戦にまで進んだようである」(出典:三とせの春は過ぎやすし(1973)〈杉浦明平〉二)
    4. 物事がよい方に移る。上達する。進歩する。すぐれる。
      1. [初出の実例]「才学といふもの、世にいと重くする物なればにやあらむ、いたうすすみぬる人の、命とさいはひとならびぬるは」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
      2. 「アメリカの暗号が一番進んでいた」(出典:春の城(1952)〈阿川弘之〉二)
    5. 仕事や計画がはかどる。
      1. [初出の実例]「こっちの仕事は一向進みません」(出典:古い玩具(1924)〈岸田国士〉第二場)
    6. 物事の程度がはなはだしくなる。つのる。また、病気などが進行する。
      1. [初出の実例]「なかずみがゑひこそすすみて侍けめ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
      2. 「もう左肺がありませんし、それに右も、もう余程進んでをります」(出典:春は馬車に乗って(1926)〈横光利一〉)
    7. 早くしたいと心がはやる。また、積極的にそうしようとする。→進んで
      1. [初出の実例]「家思ふとこころ進(すすむ)な風守り好くしていませ荒しその路」(出典:万葉集(8C後)三・三八一)
      2. 「心もすすまぬ道心をおこしければ」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)一)
    8. 盛んになる。勢いがつく。特に、食欲が出る。
      1. [初出の実例]「思かたの風さへすすみて、あやふきまで走りのぼりぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
      2. 「此計にてはいか程も飯(めし)がすすむゆえ」(出典:咄本・軽口露がはなし(1691)一)
    9. (涙が)次々とあふれて出てくる。
      1. [初出の実例]「涙さへいづちとさきにすすむらん我だにゆくへ知らぬところに」(出典:浜松中納言物語(11C中)四)
    10. 仕官する。出仕する。
      1. [初出の実例]「召しにすすみて侍りし」(出典:弁内侍日記(1278頃)寛元五年一一月一八日)
    11. 時計が、正しい時刻よりも早まる。
      1. [初出の実例]「この時計は十分位進んで居たなと余は思った」(出典:東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉二)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙すすめる(進)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android