デジタル大辞泉
「打返す」の意味・読み・例文・類語
うち‐かえ・す〔‐かへす〕【打(ち)返す】
[動サ五(四)]
1 打って相手のほうに戻す。打ち戻す。「好球をレフト前に―・す」
2 打たれた仕返しに、こちらからも相手を打つ。また、応戦のため発砲したり矢を放ったりする。「打たれたら―・せ」
3 ひっくり返す。逆にする。「手を何度も―・して暖める」
4 古綿を再生する。打ち直す。「布団綿を―・す」
5 田畑をすきかえす。耕す。「畑を―・して種をまく」
6 波が一度引いてまた岸辺を打つ。「浜辺に―・す波」
7 物に当たってはねかえる。
「初さんの声丈は、坑の四方へ反響して、籠った様に―・してくる」〈漱石・坑夫〉
8 繰り返す。
「畳紙を―・し御覧じて」〈狭衣・二〉
9 ひるがえす。
「袖どもの―・す羽風に」〈源・匂宮〉
10 ひっくり返る。
「よさりの亥子の刻にはかならず大地―・すべし」〈平家・一二〉
[可能]うちかえせる
[類語](5)耕す・鋤く・鋤き返す・鋤き起こす・耕耘・耕作
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
うち‐かえ・す‥かへす【打返・打覆】
- [ 1 ] 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
- [ 一 ] ( 「うち」は接頭語 )
- ① 返す。つき戻す。
- ② ひるがえす。裏返す。
- [初出の実例]「求子(もとめご)舞ひてかよる袖どもの、うちかへす端風に」(出典:源氏物語(1001‐14頃)匂宮)
- ③ ひっくり返す。
- [初出の実例]「大なみたって、すでに此船をうちかへさんとす」(出典:平家物語(13C前)五)
- ④ 名前などの文字の順序を前後さかさにする。
- [初出の実例]「其の頼光をうちかへして、光頼と名のり給へば」(出典:平治物語(1220頃か)上)
- ⑤ それまでの事柄や内容、状態などを根本からかえる。
- [初出の実例]「覆案とて、うちかへして案じたりなんどはせぬぞ」(出典:史記抄(1477)一六)
- ⑥ 繰り返す。反復する。
- [初出の実例]「ひきいづる琴のねをきけばうちかへしてもなほぞかなしき」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
- ⑦ 舞台に立てた背景などの書割(かきわり)の板を中央から上半分を折り曲げて、下の部分に重ね、別の背景にする。あおりかえす。
- [初出の実例]「正面の塀を中より打返す」(出典:歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)四立)
- ⑧ 下落していた相場が急上昇する。〔取引所用語字彙(1917)〕
- [ 二 ] ( 「うち」は「打つ」の意 )
- ① 打たれた仕返しに、その人を打つ。
- [初出の実例]「御所に杖を御ふところに入れて〈略〉、これにて為氏けふうちかへせ」(出典:弁内侍日記(1278頃)建長三年正月一七日)
- ② 攻撃して相手を追い返す。
- [初出の実例]「国司の兵討返されて、死ぬる者多し」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
- ③ 先方へ打って返す。「電報を打ち返す」
- ④ 古い綿を再生する。打ち直す。
- [初出の実例]「打ち返したる綿を厚く敷けるが如く」(出典:薤露行(1905)〈夏目漱石〉五)
- ⑤ 田畑をすき返す。耕す。
- [初出の実例]「このめはるはるの山田を打返し思ひやみにし人ぞこひしき〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋一・五四四)
- ⑥ ばくちをして、前に負けた分をも取り返す。
- [初出の実例]「又すこしなり共もとでがあれは、又うちかへすがたのみじゃ」(出典:虎明本狂言・仁王(室町末‐近世初))
- ⑦ 相撲で、相手が投げようとするのを制して、逆に投げ技をかける。〔相撲講話(1919)〕
- [ 2 ] 〘 自動詞 サ行五(四) 〙
- ① 前と反対になる。
- [初出の実例]「又打かへして世のぬしとなるべき者なりければにや」(出典:愚管抄(1220)五)
- ② ひっくり返る。
- [初出の実例]「よさりの亥子(ゐね)の刻にはかならず大地うち返すべし」(出典:平家物語(13C前)一二)
- ③ ひいた波が再びうち寄せる。
- [初出の実例]「白波のうちかへすとも浜千鳥なをふみつけて跡はとどめん」(出典:歌仙本貫之集(945頃)五)
- ④ 病気がぶりかえす。
- [初出の実例]「うちかへす病気女房はきへたがり」(出典:雑俳・柳多留‐六(1771))
- ⑤ 物に当たってはねかえる。
- [初出の実例]「初さんの声丈は、〈略〉籠った様に打ち返してくる」(出典:坑夫(1908)〈夏目漱石〉)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 