据える(読み)スエル

デジタル大辞泉 「据える」の意味・読み・例文・類語

す・える〔すゑる〕【据える】

[動ア下一][文]す・う[ワ下二]
物を、ある場所に動かないように置く。「大砲を―・える」「三脚を―・える」
建造物などを設ける。「本陣を―・える」「関所を―・える」
位置を定めて人を座らせる。「上座に―・える」
ある地位任務に就かせる。「部長に―・える」「見張りに―・える」
心をしっかりと居定まらせる。「度胸を―・える」「腹を―・える」
厳しい視線を置きつづける。「目を―・える」
きゅうをする。「灸を―・える」
捺印なついんする。「印を―・える」
鳥などを止まらせる。
矢形尾の真白の鷹をやどに―・ゑで見つつ飼はくし良しも」〈・四一五五〉
10 植えつける。
「世の中の常のことわりかくさまになり来にけらし―・ゑし種から」〈・三七六一〉
[補説]室町時代以降はヤ行にも活用した。→
[下接句]きもを据えるきゅうを据える腰を据えるしりを据える腹を据える御輿みこしを据える目を据える
[類語]置く据え付ける取り付ける敷く

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「据える」の意味・読み・例文・類語

す・えるすゑる【据・居】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ワ下一) 〙
    [ 文語形 ]す・う 〘 他動詞 ワ行下二段活用 〙
  2. 物を動かないように、一定の場所に置く。きちんと置く。また、安置する。供する。
    1. [初出の実例]「味白檮の言八十禍津日の前に、玖訶瓫(くかへ)を居(すゑ)て」(出典古事記(712)下)
    2. 「かきつばたといふ五文字を句の上にすへて」(出典:伊勢物語(10C前)九)
  3. ほこり、ちりなどをたまったままにする。
    1. [初出の実例]「ちりをだにすへじとぞ思ふさきしよりいもとわがぬるとこ夏の花〈凡河内躬恒〉」(出典:古今和歌集(905‐914)夏・一六七)
  4. 人を一定の場所に住まわせる。ある場所や人のもとに、人をとどめておく。
    1. [初出の実例]「かぐや姫すへんには例やうには見にくしとの給ひて、うるはしき屋を作り給ひて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  5. 人を置く。人を置いて番などをさせる。
    1. [初出の実例]「あしひきの 彼面此面(をてもこのも)に 鳥網張り 守部を須恵(スヱ)て」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇一一)
  6. 人をすわらせる。
    1. [初出の実例]「一りの少女(をとめ)を中間(なか)に置(スヱ)て撫(かいな)てつつ哭く」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
  7. 人をうずくまらせる。→ひきすえる
  8. 鳥、とくに鷹をとまらせる。
    1. [初出の実例]「小鈴を以て其の尾に着けて腕(たたむき)の上に居(スエ)て天皇に献る」(出典:日本書紀(720)仁徳四三年九月(北野本室町時代訓))
  9. 種子などをまく。植える。
    1. [初出の実例]「世の中の常のことわりかくさまになり来にけらし須恵(スヱ)し種から」(出典:万葉集(8C後)一五・三七六一)
  10. 建築物などを構える。構築する。設ける。かまえる。
    1. [初出の実例]「御桟敷の前に陣屋すゑさせ給へる」(出典:枕草子(10C終)二七八)
    2. 「勿来(なこそ)の関をやすへさせ給へらむとなん」(出典:源氏物語(1001‐14頃)常夏)
  11. 用意する。ととのえる。
    1. [初出の実例]「侍の入るべき所、雑色所など、さまざまに物すゑなどして、待ち居給ふ」(出典:落窪物語(10C後)二)
  12. 一定の地位につける。位につかせる。
    1. [初出の実例]「坊にもすゑ奉らずなりにしを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  13. 印判などを押す。印として刻みつける。
    1. [初出の実例]「足利殿自筆を執て判を居(スヘ)給ひ」(出典:太平記(14C後)九)
  14. 感情、気持、動作などを動揺しないようにじっと落ち着かせる。しずめる。
    1. [初出の実例]「大男の眼(まなこ)をすへ」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)
    2. 「据ゑた胸も率(いざ)となれば躍る」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
  15. ぐさを灸穴(きゅうけつ)にあてて火をつける。灸点する。灸をする。
    1. [初出の実例]「灸治穢者七日。居灸之人三日」(出典:拾芥抄(13‐14C)下)
  16. 醸造する。製造する。
  17. 弓を切ったり、曲げたりする。
  18. 馬をとめる。

据えるの補助注記

室町時代ごろからヤ行下二段「すゆ(る)」が使われたが、その明らかな例は「すゆ」の項にあげた。→すゆ(据)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android