置く(読み)オク

デジタル大辞泉 「置く」の意味・読み・例文・類語

お・く【置く】

[動カ五(四)]
1 人や物をある位置・場所にとどめる。
㋐そこに位置させる。「要所に見張りを―・く」「手をひざに―・く」
㋑ある状態にすえる。「目的を―・く」「重点を―・く」
㋒心をそこにとどめる。「信を―・く」「念頭に―・く」
2 人をある立場につかせる。
㋐雇う。抱える。「タイピストを―・く」
㋑同居させる。「下宿人を―・く」
3 ある場所に残す。残しとどめる。「家族を郷里に―・いて働く」
4 新たに設ける。設置する。「事務所を―・く」
5 時間的、空間的に間を隔てる。「一日―・いて行く」「一軒―・いた隣」
6 その状態を続けさせる。そのままにする。「この肉は明日まで―・くと腐る」「ただでは―・かない」
7 預け入れる。差し出す。「抵当を―・く」「質に―・く」
8 算木などの用具の位置を決めて、計算する。占いをする。「そろばんを―・く」
9 蒔絵まきえや箔はくを施しつける。「金箔を―・く」
10 相手に対して心を配る。気がねをする。→気が置けない
「我に心―・き、ひき繕へる様に見ゆるこそ」〈徒然・三七〉
11 露・霜などが降りる。「草に―・く露」
12 (補助動詞)多く動詞の連用形、または、それに助詞「て」を添えた形に付く。
㋐今後の用意のために、あらかじめ…する。「話だけは聞いて―・こう」「この程度のことは勉強して―・くべきだ」「名前は仮にAとして―・こう」
㋑その状態を続けさせる。そのままにする。「窓を開けて―・く」「言わずに―・く」
[可能]おける
[下接句]朝雨馬に鞍くら置け・一目置く・重きを置く・風上かざかみに置けない・眼中に置かない・木にも草にも心を置く・気が置けない・奇貨きか居おくべし・草木にも心を置く・算を置く・歯牙しがの間かんに置く・下にも置かない・質しちに置く・借金を質に置く・隅に置けない・赤心せきしんを推おして人の腹中ふくちゅうに置く・算盤そろばんを置く・泰山たいざんの安きに置く・念頭に置く・間を置く・胸に手を置く
[類語]据える・据え付ける・取り付ける・敷く・挟む

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「置く」の意味・読み・例文・類語

お・く【置・措・擱】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙 露や霜が生じて、ある場所を占める。また、雪などが降って地にたまる。
    1. [初出の実例]「秋されば於久(オク)露霜にあへずして都の山は色づきぬらむ」(出典:万葉集(8C後)一五・三六九九)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] 事物に、ある位置を占めさせる。
      1. ① 人や物を、ある位置・状態にすえる。位置させる。のせる。
        1. [初出の実例]「をとめの 床の辺(べ)に わが淤岐(オキ)し つるきの太刀〈倭建命〉」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. ② 死者を墓の中に位置させる。葬る。
        1. [初出の実例]「墓を作りて葬(オク)」(出典:日本書紀(720)崇峻即位前(北野本訓))
      3. ③ 物などを前もって用意する。
        1. [初出の実例]「殿の内に機(おし)を施(オキ)て、請饗(かみへたてまつらむとまう)すに因(よ)りて作難(まちとらむ)と欲(す)」(出典:日本書紀(720)神武即位前(熱田本訓))
      4. ④ 人を、ある場所、家などに住まわせる。下宿させる。また、人を雇う。かかえる。
        1. [初出の実例]「梓弓末は寄り寝む現在(まさか)こそ人目を多み汝(な)をはしに於家(オケ)れ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四九〇)
      5. ⑤ ( 算木などを置くところから )
        1. (イ) 占う。
          1. [初出の実例]「夕凪(ゆふなぎ)に 楫(かぢ)の音しつつ 行きし君 いつ来まさむと 卜(うら)置(おき)て 斎(いは)ひわたるに」(出典:万葉集(8C後)一三・三三三三)
        2. (ロ) 計算する。そろばんで数える。
          1. [初出の実例]「『算おき給ひつるは何の御用ぞ』と問ひければ『年来申しあつめたる念仏の数の覚束なくて』とぞ答へられける」(出典:発心集(1216頃か)二)
      6. ⑥ 制度や施設、機関、役目などを作り設ける。設置する。また、その役目に人を任ずる。
        1. [初出の実例]「年ごとに余ればこふる君がためうるふ月をばおくにやあるらん」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
        2. 「諸国に守護ををき、庄園に地頭を補せらる」(出典:平家物語(13C前)一二)
      7. ⑦ ( 質物として置くところから ) 預ける。
        1. [初出の実例]「このせちゑにはき給ふ御はかしを質におかん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
      8. ⑧ 区別などをつける。
        1. [初出の実例]「あながちに劣りまさりのけぢめををき給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
      9. ⑨ 蒔絵(まきえ)、箔(はく)、模様などをつけほどこす。
        1. [初出の実例]「かばかりの箱の漆つき、まきゑのさま、くちをかれたりしやうなどの、いとめでたかりしなり」(出典:大鏡(12C前)三)
      10. ⑩ 対象に心をとめる。気にかける。また、信用、疑い、遠慮などの気持をいだく。
        1. [初出の実例]「特(おぎろ)に憐愛(めぐしとおぼすみこころ)を鍾(オキ)て以て崇養(かたてひたし)たまふ」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
        2. 「事実から出た心持で無ければウカとは信を措(オ)き難い」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
      11. ⑪ めやすとなるものをすえる。抽象的な事柄を位置づける。
        1. [初出の実例]「きはめて外界の温度に支配され易いから斯う極端な差を示すのでもあらうが、兎に角大体の標準を置くことができる」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一六)
    2. [ 二 ] 間に、はさみすえる。
      1. ① ( 多く、時間に関係ある語を伴って ) 時を隔てる。
        1. [初出の実例]「卯の花の過ぎば惜しみかほととぎす雨間も置(おか)ずこゆ鳴き渡る」(出典:万葉集(8C後)八・一四九一)
      2. ② ( 数量や長さに関係のある語を伴って ) ある数や長さを隔てる。
        1. [初出の実例]「あやまたず扇のかなめぎは一寸ばかりをいて、ひいふっとぞ射きったる」(出典:平家物語(13C前)一一)
    3. [ 三 ] 物事をそのままの状態にしておいて、特別に扱わない。何もしない。
      1. ① そのままにしておいて、特別にとり扱わない。特に、否定・反語・強調表現等において、「その物事を特に考慮しない」「それはそれとして考慮外のこととしておく」の意から転じて、別にする・除く・さしおくの意をもつ。
        1. [初出の実例]「我(あれ)を於伎(オキ)て 人はあらじと 誇ろへど」(出典:万葉集(8C後)五・八九二)
        2. 「其事柄の大切なると否とは姑(しばら)く閣(お)き」(出典:学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉一二)
      2. ② あとに残しとどめる。また、見捨てる。
        1. [初出の実例]「うつくしき 吾(あ)が若き子を 飫岐(オキ)てか行かむ」(出典:日本書紀(720)斉明四年一〇月・歌謡)
      3. ③ ある状態のままにしておく。
        1. (イ) その状態のままでほうっておく。そのままにしてなにもしない。保留する。→おく(置)能わず。
          1. [初出の実例]「かくてをいたらば死にはて侍りぬべし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
        2. (ロ) ( 否定表現を伴って ) その状態を認めて許す。
          1. [初出の実例]「どうでもこうでも聞かにゃおかぬ、かたらせねゃおかぬ」(出典:浄瑠璃・心中二枚絵草紙(1706頃)上)
      4. ④ やめにする。中止する。よす。
        1. [初出の実例]「済世の一念をば、ひらにをかしめ。この白髪ではなるまいぞ」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
        2. 「『いらぬ事じゃ、おけやい』『いやおくまいわい』」(出典:浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)三)
    4. [ 四 ] 動詞の連用形、または、それに助詞「て」の付いた形に続けて補助動詞のように用いる。
      1. ① ある状態をそのまま続ける意を表わす。前もってしておく場合にも、したままほうっておく場合にもいう。
        1. [初出の実例]「あしひきの山桜戸を開け置(おき)てわが待つ君を誰かとどむる」(出典:万葉集(8C後)一一・二六一七)
      2. ② その状態を認めて許す意を表わす。
        1. [初出の実例]「山王さまはおれが贔負(ひいき)だからおれが宗旨にして置(オカ)ア」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)

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