接続水域(読み)せつぞくすいいき(英語表記)contiguous zone

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

接続水域
せつぞくすいいき
contiguous zone

領海に接続する一定範囲の公海海域で,沿岸国が警察,関税,衛生など国内法の履行を確保するために,一定の権限を行使することのできる海域をいう。禁酒法時代,アメリカが実効的な密輸入取締りのために設定したのが顕著な例。領海条約 (1958) では領海を含めて 12カイリまでの接続水域の設定が認められていたが,国連海洋法条約 (82) で領海の幅員が 12カイリまで認められたのに従い,24カイリまで可能になった。接続水域からの継続追跡権は,当該保護法益の侵害が存在する場合にのみ許されている。

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知恵蔵の解説

接続水域

領海の外側に隣接する海域に設定され、沿岸国の法令により一定の必要な規制を行うことが認められた水域。「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」により、領海(12カイリ)に接続し、24カイリを超えない範囲で設定できる。接続水域には沿岸国の排他的な支配は及ばず航行の自由などの公海自由の原則が適用されるが、領海にそのままつながる水域であることから、自国通関、財政、出入国管理、衛生に関して法令の違反を防止することや処罰することができる。
密輸防止などを目的としたイギリス「徘徊法(条例)」(1739年)のように、古くから列強各国は領海外の海洋及び水域についても事実上の管轄権を行使してきた。接続水域の概念に近いものとしては、アメリカが禁酒法時代の1922年に定めた「関税水域」が挙げられる。アメリカはこれに基づいて関係各国と条約を結び、沿岸から航行1時間の範囲で酒の密輸についての臨検・捜索・拿捕(だほ)を行った。国際条約で接続水域について明示されたのは58年、第1次国連海洋法会議で採択された「領海及び接続水域に関する条約(領海条約)」で、接続水域は基線から12カイリまでの公海上の区域であると定めた。日本もこの条約に加わったが、このときに日本は接続水域を設定しなかった。その後、発展途上国などから沿岸国権限の拡大が求められ、科学技術の進歩で海洋の開発利用が進み資源の乱獲や海洋汚染防止の必要性が高まったことや深海底の鉱物資源開発が現実の課題となったことなどから第3次国連海洋法会議が開始された。各国の意見は大きく異なり交渉は長引いたが、82年には国連海洋法条約が採択された。この条約では、12カイリを超えない範囲で領海を設定できると定めたため、接続水域は24カイリまでとなり、200カイリまでの排他的経済水域も定められた。同条約は94年に発効、日本も96年6月に批准し、これに当たって「領海及び接続水域に関する法律」を改正して24カイリの接続水域を定めた。
近年、周辺大陸棚で石油や天然ガスなどの大量地下資源が発見され、尖閣諸島の領有権が注目されている。同諸島は明治時代に日本領に編入され現在も日本が実効支配しているが、台湾や中国も自国の領土であると主張するようになった。2012年に尖閣諸島の一部を日本が国有化したことを契機として、中国海警局の公船などが尖閣諸島周辺に頻繁に出没するようになり、中国海軍艦艇や潜水艦の航行も確認されている。接続水域の航行は国際法上では何ら問題ないが、中国の領土的野心なども鑑み、日本政府は中国政府に抗議している。中国側は逆に中国の接続水域に入った自衛隊艦艇を追跡、監視したなどと応酬している。

(金谷俊秀 ライター/2018年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

接続水域

沿岸から12カイリ(約22キロ)までが「領海」で、そのさらに外側12カイリ、沿岸から24カイリを「接続水域」と呼ぶ。領海は領土や領空のように沿岸国の主権が及び、接続水域では沿岸国が通関や出入国管理、衛生上の規制をすることが認められる。いずれも国連海洋法条約で定められている。

(2012-10-17 朝日新聞 朝刊 3総合)

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デジタル大辞泉の解説

せつぞく‐すいいき〔‐スイヰキ〕【接続水域】

自国の領海に接続する一定範囲の公海の水域。沿岸国は通関・財政・出入国管理などに関して一定の権限を行使することが認められる。
[補説]国連海洋法条約により領海の基線から24海里(約44キロメートル)までの範囲で設定できる。

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百科事典マイペディアの解説

接続水域【せつぞくすいいき】

沿岸国が特定の行政目的に限って管轄権を領海の外に延長して行使することが認められている,領海の外側に接続する一定範囲の水域。隣接水域ともいう。1982年に採択された国連海洋法条約では,沿岸から24カイリをこえない範囲で沿岸国が接続水域を設定することができるとされている。歴史的には,船舶の船足が速くなるにつれて,狭い領海内では密輸の防止など十分な取締りを行うことが困難になってきたので,沿岸国が関係諸国と条約を結んで接続水域の設定を認めてもらうようになったのが始まりである。禁酒法時代のアメリカが,1924年以来イギリスその他の国々といわゆる禁酒条約を結んで,酒の密輸入監視のために,沿岸から航行1時間の範囲まで,密輸の疑いのある船舶に臨検・捜索・拿捕(だほ)を行うことができることを認めさせたのは有名な例である。その後,これにならって多くの国々が条約を結んで接続水域を設定するようになった。1958年の〈領海及び接続水域に関する条約〉は,沿岸国が領海の幅を測定する基線から12カイリまでの範囲で,関係国との条約によらずに接続水域を一方的に設定できることを認め,接続水域は一般国際法上の制度となった。同条約は,沿岸国が接続水域において,自国の領土または領海内における通関上,財政上,出入国管理上または衛生上の規則の違反を防止し,または,これらの違反を処罰するために必要な規制を行うことができることとしている。1982年採択の国連海洋法条約も,上記の規定をそのまま継承しているが,接続水域の範囲についてはさらに延長し,24カイリまでとした。その結果,同条約の下では,領海の外側12カイリまでの部分で,排他的経済水域(経済水域)と接続水域とが重複することになるが,前者が水域内の漁業資源など水域自体を保護法益とするものであるのに対し,後者は水域自体ではなくて,住民の生活の場である領土や領海における法益の保護を目的とする点で,その性格を異にする。日本は,従来,接続水域を設けていなかったが,1996年に国連海洋法条約を批准した際に,従来の〈領海法〉を〈領海及び接続水域に関する法律〉と改め,原則として基線から24カイリまでの水域を接続水域として設定している。→領域尖閣諸島
→関連項目石垣[市]東シナ海

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世界大百科事典 第2版の解説

せつぞくすいいき【接続水域 contiguous zone】

沿岸国が関税・衛生など特定の行政目的に限って管轄権を領海の外に延長して行使することが認められている,領海の外側に接続する一定範囲の水域。隣接水域ともいう。1982年に採択された国連海洋法条約では,沿岸から24カイリをこえない範囲で沿岸国が接続水域を設定することができるとされた。 歴史的には,船舶の船足が速くなるにつれて,狭い領海内では密輸の防止など十分な取締りを行うことが困難になってきたので,沿岸国が関係諸国と条約を結んで接続水域の設定を認めてもらうようになったのが始まりである。

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大辞林 第三版の解説

せつぞくすいいき【接続水域】

領海の外側の一定範囲の水域。沿岸国は、この水域で通関・財政・出入国管理・衛生について一定の権限を行使できる。隣接水域。

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知恵蔵miniの解説

接続水域

「海洋法に関する国際連合条約」に基づいた、沿岸国の主権が及ぶ範囲である領海に接している外側24海里(約44キロメートル)の海域を指す。いずれの国の管轄権にも含まれない公海上にあるが、同海域では沿岸国が領土・領海の通関上、財政上、密輸入や密入国管理など出入国管理上、伝染病の防疫など衛生上の法令違反防止及び違反処罰のため、必要な規制をするなど一定の権利を行使することが沿岸国に認められている。2016年6月9日、政府は中国海軍艦艇が沖縄県尖閣諸島周辺の接続水域内に入ったことを海上保安庁の護衛艦が確認したことと、それとほぼ同じ時間帯にロシア軍艦も尖閣周辺の接続水域に入域したことを発表した。

(2016-6-14)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

接続水域
せつぞくすいいき
contiguous zone

沿岸国が領海に接続して、その国の通関、財政、出入国管理または衛生に関する法令の違反を防止し処罰するために規制を行うことが認められる水域をいう。接続水域の範囲は、領海が3海里とされたときに、領海の基線から12海里までとされてきたが、国連海洋法条約により領海が12海里までに拡大されたことに応じて、24海里までとされている。200海里水域など、沿岸国の海に対する管轄権の拡大に伴って、接続水域の設定と画定に疑問が生じている。[中村 洸]

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精選版 日本国語大辞典の解説

せつぞく‐すいいき ‥スイヰキ【接続水域】

〘名〙 領海に接続する一定範囲の公海で、沿岸国が関税、出入国管理または衛生上の取締りのため必要な規制を行なうことのできる水域。従来は領海の幅を測定するための基線から一二海里(二二一二四メートル)までの水域とされていたが、一九八二年国際海洋法により領海が一二海里まで拡大されたのに伴い、二四海里以内となった。隣接水域。

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