しん‐たい【進退】
① (━する) 進むこととしりぞくこと。また、進めることとしりぞけること。
往路と
帰路。
※続日本紀‐延暦八年(789)九月一九日・宣命「
愚頑(かたくな)に畏拙
(をぢな)くして、進退度を失ひ、軍の期
(ちぎり)をも闕き怠れり」 〔礼記‐郷飲酒〕
② (━する) 身を動かすこと。たちいふるまい。
挙動。動作。行動。
進止。
※続日本紀‐慶雲四年(707)一二月辛卯「今聞。内外庁前。皆不二厳粛一。進退无レ礼」 〔論語‐子張〕
※玉葉‐嘉応二年(1170)一〇月二五日「非レ無二自由之恐一、進退之間、可レ在二勅定一」
④ (形動) (━する) 心のままに取り扱うこと。意のままにすること。自由に支配すること。また、そのさま。
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)
真木柱「ともかくも、もとより、しむたいならぬ人の御ことなれば」
⑤ (━する) 所領・所職について宛行
(あておこない・あてがい)・
没収や
補任・改易の権利を持ち、その
権限を自由に行使すること。またその対象である所領・所職。進止。
※山城東文書‐弘安二年(1279)六月日・行奝田畠譲状「行奝いちこのあいたは、しんたいせさせられ給へし」
※
高野山文書‐(文祿二年)(1593)正月一六日・興山上人応其書状「衆に被
レ入候時、其国・其仁を、進退を能々被聞居」
し‐だい【進退】
〘名〙 (「しんだい」の
撥音「ん」の無表記) 思い通りにすること。自由にすること。
※
落窪(10C後)一「いといみじきわざかな、よくなりて我がしだいにはかなふまじきなめり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「進退」の意味・読み・例文・類語
しん‐たい【進退】
[名](スル)《古くは「しんだい」とも》
1 進むことと退くこと。動くこと。
「常人の情は兎角世の風潮に従いて―する者にて」〈西村茂樹・日本道徳論〉
2 身を動かすこと。立ち居振る舞い。「挙止進退」
3 職を辞めるかとどまるかという、身の去就。「進退を共にする」「進退去就の時機」「出処進退」
4 心のままに扱うこと。自由に支配すること。
「屏風の高きを、いとよく―して」〈枕・一二〇〉
「国ヲ―スル」〈日葡〉
[類語]去就
し‐だい【▽進退】
《「しんだい」の撥音の無表記》自由にすること。思いどおりにすること。
「もとより、―ならぬ人の御ことなれば」〈源・真木柱〉
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普及版 字通
「進退」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の進退の言及
【進止】より
…〈進退〉もほぼ同義。原義は進むことと止まること,つまり進退,挙動,行動そのものを指す言葉であるが,すでに中国でも,他人のそれについての指示という意味をももっており,これが日本に伝わり,〈進止すべし〉(《左経記》)と〈進止を蒙る〉(《令集解》)の二つの用法が並び行われたが,やがて後者の意味が拡大して,人や物を自己の意思に従って自由に取り扱い,あるいは処分する意味に広く用いられるようになった。…
※「進退」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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