散華(読み)サンゲ

デジタル大辞泉 「散華」の意味・読み・例文・類語

さん‐げ【散華/散花】

[名](スル)
花をまいて仏に供養すること。
四箇の法要の一。梵唄ぼんばいのあとにシキミの葉あるいは花を散布すること。また、紙製蓮華花びら花筥けこに入れ、散布すること。
《花を散らす意から》死ぬこと。特に、若くして戦死すること。「南方洋上に散華する」
[補説]書名別項。→散華

さんげ【散華】[書名]

高橋和巳の小説。昭和38年(1963)「文芸」誌に発表。

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精選版 日本国語大辞典 「散華」の意味・読み・例文・類語

さん‐げ【散華・散花】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。
  2. 花をまいて仏に供養すること。〔無量寿経‐下〕
  3. 四箇法要(または、二箇法要)の一つ。梵唄の後に樒(しきみ)の葉あるいは花を散布すること。また、紙製の蓮華の花びらを花筥(けこ)に入れて散布すること。
    1. [初出の実例]「導師前例独身奉仕唄・散花、而此度不唄・散花、又五色水於一鉢混合」(出典:九暦‐九条殿記・擬階奏・承平六年(936)四月八日)
  4. 声明(しょうみょう)の一種。の際にうたわれるもの。壱越調(いちこつちょう)でうたわれる。
  5. の法要をつかさどる僧。七僧の一つ。さんげし。
    1. [初出の実例]「御堂供養請僧、〈略〉唄二人〈略〉散花四人」(出典:左経記‐寛仁四年(1020)三月二二日)
  6. 経典中の散文の部分をいう。〔法華経文句‐一〕 〔嘉祥法華義疏‐二〕
  7. ( 花のように散る意 ) はなばなしく戦死すること。
    1. [初出の実例]「これらの学徒が高めようとしていた知性を否定され、みがこうとしていた理性をふみにじられる矛盾を止揚しえないままに、その矛盾のなかで散華したのを思うと」(出典:彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉教学十話)

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改訂新版 世界大百科事典 「散華」の意味・わかりやすい解説

散華 (さんげ)

仏教経典には仏が説法するときは,天から花が降って来ると説かれているが,これは天人が仏を讃嘆することをしめす。このように仏を讃嘆し供養するために,仏のまわりをめぐりながら,花を地に散らすのが散華である。したがって散華には三匝(さんそう)または七匝の行道(ぎようどう)をともなうものである。また散華には仏を讃嘆する声明(しようみよう)(伽陀)をともなうもので,法要には《散花》,《対揚》,《梵音》,《錫杖》の声明をとなえるのが正式となっている。散華の花はインドではハス(蓮)の花冠や蓮弁をもちいたが,日本では蓮弁形の紙に彩色した花弁を散らし,現在も南都諸大寺の法要にもちいられている。しかし普通はシキミ(樒)の葉を花弁の代りにも投げるもので,これは葉の形が蓮弁に似ているからという。また東大寺修二会(御水取)では,散華行道に花米(米をいってはぜたもの)を散ずる。悪魔をはらう意味とおもわれ,もと米をまいたのであろう。

 散華は職衆(しきしゆう)が声明曲の《散花》《四奉請(しぶじよう)》などを唱えながら華籠(けこ)に盛った花を散らす。道場内を行動しながら行う場合,列立して行う場合,着座のまま行う場合など,いろいろな形式があり,花をいくつずつ散らかすなどについてもきまりがある。特別な庭儀(ていぎ)(庭上を使用する仏事)の大法要では,職衆の散華と同時に,堂塔の上層から多量に散華することがある。散華の花は,法要後に参詣人が自由に持ち帰ることができる。
執筆者:

仏教儀式における僧侶の役名。花を散ずるという宗教的所作が役名の由来であるが,散華師は儀式に先立ち,道場を清める目的で唱えられる声明曲の《散花》を先唱する。詞章の所定個所で全員の斉唱となるが,斉唱に加わる僧侶集団は散華衆と呼ばれる。花を散ずる所作は,詞章に対応して曲中で数回行われる。散華師は散華衆の統括者たる器量を要求され,他の声明曲の先唱者をも兼ねることが多い。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「散華」の意味・わかりやすい解説

散華
さんげ

仏教儀式および声明曲名。散花とも書く。四箇法要二箇法要のなかで,仏前に紙の蓮片や樒 (しきみ) の葉などを散らして道場を清め仏を賛美する行事およびその声明。上中下 (前中後) の3段から成り,上段は起立して,中,下段は行道しながら声明を称え,「供養」の文句のところで花を散らす。中段は本尊によって経文を変える。次第散華 (連散華ともいう) と同音散華の2形式があり,前者は散華師が称えてから職衆が同じ句を繰返し,後者は散華師が頭の句を称えたのち職衆が助音するものである。真宗では,三奉請 (さんぶじょう) という曲を用いるなど,宗派によって声明としての名称は異なることがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「散華」の意味・わかりやすい解説

散華
さんげ

仏を讃(たた)え供養(くよう)するために花を散布すること。もとインドで花や香(こう)を地にまいてその場を清め、また花香をもって信仰対象を供養したことに由来する。古くは蓮(はす)などの花びらを散布したが、日本では紙製の蓮弁(れんべん)形の花びらや樒(しきみ)の花または葉が用いられることもある。大法会(ほうえ)のときに行う4種の儀式(四箇法要(しかほうよう)――梵唄(ぼんばい)、散華、梵音(ぼんおん)、錫杖(しゃくじょう))の一つで、これをつかさどる主僧を散華師(さんげし)という。道場内を行道(ぎょうどう)しつつ行う行道散華と、着座のまま行う次第(しだい)散華とがある。散華の花は、法要のあとで、参拝者たちが自由に持ち帰れる。

[阿部慈園]

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普及版 字通 「散華」の読み・字形・画数・意味

【散華】さんか・さんげ

散花。

字通「散」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の散華の言及

【花】より

…ミズキなどの枝に花が咲いたように小さな餅をつける餅花も,神霊の依代であり,吉兆笹はその変形である。法会の席に摘んだ花や花弁をまく散華の風は仏教がもたらしたが,あまり一般化していない。花びらの代りにシキミの葉をまくことがあるほか,花はちぎらないで自然のままに立てて供えるのが普通で,花を立てて神霊を迎えた古来の作法がよく守られている。…

※「散華」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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