机の一種であるが,平安時代を中心に使われたものと,室町以降のものとがある。いずれも詩文に関係が深い点が共通している。前者は甲板の大きさが1尺5寸×1尺ほどで,高さは約3尺くらい,黒漆塗で経机のような反り脚になった4本の脚がついた台である。方2尺,高さ4尺などという大きなものもあったようだ。主として朝廷で使われ,内宴,釈奠(しやくてん),曲水,重陽(ちようよう),歌合(うたあわせ),根合といった詩歌に関係のある儀式や行事の際に用いられた。このとき,文台の上に〈文台の筥(はこ)〉とよぶ筥を置き,これに詩文を書いた懐紙などを入れた。後者の室町以降の文台はこの〈文台の筥〉が変化したものといえる。最初は硯筥(すずりばこ)の蓋などをあおむけにして文台の筥と称し,懐紙や短冊などをのせていたが,やがてこれを専用の小机に作るようになった。高さ3~4寸,長さ1尺7~8寸,幅1尺2寸ほどで,蒔絵(まきえ),螺鈿(らでん)が施されたり,唐木(からき)や桐,埋木などが使われた風雅なものが多い。このため後には床飾(とこかざり)にも用いられた。
なお,熊野信仰の布教者であった熊野比丘尼が,布教用具である熊野牛王(ごおう)やささら,護符類を入れて持ち歩く小箱も文台といった。方1尺,厚さ2~3寸の文箱(ふばこ)のような箱である。
執筆者:小泉 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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