文台(読み)ブンダイ

デジタル大辞泉 「文台」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐だい【文台】

書籍・硯箱すずりばこなどをのせる台。また、歌会連歌俳諧会席で、短冊懐紙などをのせる台。
歌比丘尼うたびくにの持つ手箱
能の作り物の一。竹で机の形を作って紅の絹ひもで巻き、所々を千鳥がけにしたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「文台」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐だい【文台】

〘名〙
① 書籍・すずり箱などをのせる台。また、歌会や連歌・俳諧の会席で、短冊・懐紙などをのせる台で、会席の中心・象徴となるもの。ふだい。
内裏式(833)九月九日菊花宴式「内蔵寮立文台於舞台西北
歌比丘尼の持つ手箱。
※浮世草子・好色一代女(1686)三「絹の二布の裾短く、とりなり一つに拵へ、文台(ブンダイ)に入しは、熊野の牛王」
能楽の作り物の一つ。竹で机の形を作ってその上を香緂(こうだん)と呼ぶ紅色の細布で巻き、所々を千鳥がけにして飾りとしたもの。「草子洗小町(そうしあらいこまち)」で用いる。

ふ‐だい【文台】

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改訂新版 世界大百科事典 「文台」の意味・わかりやすい解説

文台 (ぶんだい)

机の一種であるが,平安時代を中心に使われたものと,室町以降のものとがある。いずれも詩文に関係が深い点が共通している。前者甲板の大きさが1尺5寸×1尺ほどで,高さは約3尺くらい,黒漆塗で経机のような反り脚になった4本の脚がついた台である。方2尺,高さ4尺などという大きなものもあったようだ。主として朝廷で使われ,内宴,釈奠(しやくてん),曲水,重陽(ちようよう),歌合(うたあわせ),根合といった詩歌に関係のある儀式や行事の際に用いられた。このとき,文台の上に〈文台の筥(はこ)〉とよぶ筥を置き,これに詩文を書いた懐紙などを入れた。後者の室町以降の文台はこの〈文台の筥〉が変化したものといえる。最初は硯筥(すずりばこ)の蓋などをあおむけにして文台の筥と称し,懐紙や短冊などをのせていたが,やがてこれを専用の小机に作るようになった。高さ3~4寸,長さ1尺7~8寸,幅1尺2寸ほどで,蒔絵(まきえ),螺鈿(らでん)が施されたり,唐木(からき)や桐,埋木などが使われた風雅なものが多い。このため後には床飾(とこかざり)にも用いられた。

 なお,熊野信仰の布教者であった熊野比丘尼が,布教用具である熊野牛王(ごおう)やささら,護符類を入れて持ち歩く小箱も文台といった。方1尺,厚さ2~3寸の文箱(ふばこ)のような箱である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文台」の意味・わかりやすい解説

文台
ぶんだい

机の一種。甲板が縦 30~36cm,横 55~60cmで,それに繰形 (くりかた) の脚を四隅につけた高さ 10cm前後の小型の低い文机。歌会,連歌,俳諧の席などで,詠まれた短冊や懐紙を載せて披露するのに用いるが,平安時代にはものを書く台として用いられた。現存する文台の遺品では,室町時代中期頃の蒔絵で装飾された『塩山蒔絵文台』 (重文,東京国立博物館) ,『薄鶉蒔絵文台』 (重文,京都金蓮寺) が古く有名。

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