斜め(読み)ナナメ

デジタル大辞泉 「斜め」の意味・読み・例文・類語

ななめ【斜め】

[名・形動]《「なのめ」の音変化》
垂直・水平面正面に対し、方向がずれていること。また、そのさま。はす。はすかい。「少し斜めを向く」「帽子斜めにかぶる」
日や月が中天を過ぎること。「日ざしが斜めになった」
普通とは違っているさま。正常でないさま。「ご機嫌が斜めだ」「世間斜めに見る」
普通。ひととおり。世間なみ。
「げに―にかたほなるだに、人の親の習ひ、いかが思ふめるに」〈浮・男色大鑑・三〉
ひととおりでないさま。甚だしいさま。
西行―に喜びて」〈仮・薄雪
[類語](1はす斜交はすか斜掛はすか筋交すじか筋違いなぞえ袈裟けさ懸けしゃ斜面筋向かい

なのめ【斜め】

[形動ナリ]
傾斜しているさま。ななめ。〈新撰字鏡
ありふれているさま。平凡。普通。
「わが娘は―ならむ人に見せむは惜しげなるさまを」〈東屋
いいかげんであるさま。なおざり。
「世を―に書き流したることばのにくきこそ」〈・二六二〉
中世以降「なのめに」の形で)ひととおりでないさま。大いに。なのめならず。
大将―に喜うで三杯ほし給ひ」〈虎明狂・二千石

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「斜め」の意味・読み・例文・類語

ななめ【斜・傾】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 「なのめ」の変化したもの )
  2. 傾いているさま。垂直・水平でないさま。はす。なのめ。
    1. [初出の実例]「錫杖は斜(ナナメ)に陜(わきはさ)むて、進止安祥にせよ」(出典:南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一)
    2. 「狭い露地を、体を斜(ナナメ)にして通らなくてはならない」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉四)
  3. 日月が中天を過ぎたこと。
    1. [初出の実例]「日脚已斜」(出典:玉葉和歌集‐文治三年(1187)五月二四日)
    2. 「日も斜(ナナメ)なれば」(出典:読本・雨月物語(1776)青頭巾)
  4. 時刻などが半ばを過ぎて終わりに近いこと。特に、夕方の刻についていうか。さがり。
    1. [初出の実例]「申斜帰洛」(出典:兵範記‐保延七年(1141)三月九日)
  5. 普通であるさま。また、不十分であるさま。なのめ。→ななめ(斜)ならず
  6. ( 「ななめに」の形で、「ななめならず」と同意に用いる ) 並み一通りでないさま。なのめ。
    1. [初出の実例]「子共もななめに悦ふで」(出典:幸若・信太(室町末‐近世初))
  7. 普通でなく、わるいさま。
    1. [初出の実例]「日下さん、なんだか御機嫌斜めのようね」(出典:胸より胸に(1950‐51)〈高見順〉六)

斜めの語誌

( 1 )「なのめ」より遅れて、平安後期になって生じた語。当初は主に漢文訓読文に用いられたが、中世になって「なのめ」が勢力を失うに伴って「なのめ」の表わしていた意味・用法を包含し優勢となった。
( 2 )日葡辞書」には両形の見出しがあるが、「Nanomena(ナノメナ)」の項には「Nanamena(ナナメナ)と言う方がまさる」との記述がある。ただし程度を表わすの用法は現代語では「御機嫌ななめ」といった慣用句以外すたれてしまった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android