山形県北東部,新庄市を中心に周辺の最上郡に広がる盆地で,最上盆地とも呼ばれる。東を奥羽山脈に属する神室(かむろ)山地,北を丁岳(ひのとだけ)山地,西は出羽山地に囲まれ,南は猿羽根(さばね)峠で尾花沢盆地と画されている。盆地南部は最上川に,中央部は鮭川とその支流によって盆地床の浸食がすすみ,段丘や丘陵の多い開析盆地となっている。盆地内は低起伏の丘陵によって北部の金山(かねやま)川流域の金山盆地,中央部泉田川扇状地の塩野原や指首野(さすの)川扇状地の広がる狭義の新庄盆地,小国川下流の舟形盆地などに細分される。南から流入する最上川は盆地南辺を曲流しながら本合海(もとあいかい)付近で西に向きをかえ,先行性の最上峡となって出羽山地を横断する。盆地一帯は奥羽山脈の低い鞍部を越えて流入するやませ(山背)の影響を受けやすく,夏季の平均気温は県内の平地で最も低く,日照時間も少ない。また冬季は西寄りの季節風が最上峡を通って吹き込むために積雪が多い。このような気候的な悪条件と,開析扇状地や段丘が多く水利に恵まれないことから,農業の生産性は低く,第2次世界大戦前は馬産が主であった。戦後,最上特定地域総合開発計画が実施され,1965年には灌漑用の桝沢ダムが建設されて,以後水田化がすすんだが,出稼ぎが多い地域となっている。北部の金山盆地周縁の山地には金山杉の美林があり,林業が盛んである。
執筆者:中川 重
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山形県北東部、新庄市を中心に周辺の最上(もがみ)郡に広がる盆地。南部は北西流する最上川に、中央部は南・西流する諸河川をあわせる鮭川(さけがわ)によって盆地床を刻み込んだ段丘や丘陵の多い開析盆地の形態を示す。低起伏の丘陵によって北部金山(かねやま)川流域の金山盆地、中央部泉田(いずみだ)川の塩野原(しおのはら)、指首野川扇状地(さすのがわせんじょうち)などに細分される。盆地一帯は年平均気温が低く、日照時間も少ないうえに、冬季は積雪量が多いため、農業生産性が他地域に比べて低く、出稼ぎ者が多い。新庄市街地は指首野川扇状地の扇央に発達した戸沢氏新庄藩の城下町。南部の舟形(ふながた)町の亜炭、北部の金山町の杉の美林などが知られる。
[中川 重]
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