日新館(読み)にっしんかん

精選版 日本国語大辞典 「日新館」の意味・読み・例文・類語

にっしん‐かん ‥クヮン【日新館】

[一] 会津藩藩校。延宝二年(一六七四)藩主保科正経が設立天明八年(一七八八)改組し、儒学・国学・洋学・医学のほか兵学武術などを教える総合学校となる。日新館の名称を用いたのは寛政一一年(一七九九)以降。
[二] 対馬府中藩美濃苗木藩にあった藩校の名。

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デジタル大辞泉 「日新館」の意味・読み・例文・類語

にっしん‐かん〔‐クワン〕【日新館】

江戸時代会津藩の藩校。藩主松平容頌かたのぶが創立した藩校に寛政11年(1799)命名したもの。同名のものが、美濃土佐対馬つしまなどにもあった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日新館」の意味・わかりやすい解説

日新館
にっしんかん

会津(あいづ)藩(福島県)の藩学。好学の藩祖保科正之(ほしなまさゆき)の後を受け、1788年(天明8)5代藩主松平容頌(かたのぶ)が、家老田中玄宰(はるなか)の建言で創立。藩士の子弟10歳以上の就学を規定。1799年(寛政11)日新館と命名、生徒1000名余。漢(朱子)学を中心に、皇学、神道(しんとう)(垂加(すいか))、洋(医)学、武学を教え、15歳以上は武学も併修。生徒は学業の進度により4等級に編成され、試験により進級する制度であった。成績優秀者は大学校(至善堂)に進み、学業・武道で一定の成績に達しない者は退塾を許さず、家督(かとく)相続で扶持(ふち)を減じられたりした。下士層は城外の南学館・北学館に学んだ。出版事業も盛んで『日新館童子訓』の編・刊など著名である。

 ほかに同名の藩学が、美濃(みの)苗木(なえぎ)藩、近江(おうみ)西大路(にしおおじ)(仁正寺(にしょうじ))藩、但馬(たじま)村岡藩、対馬(つしま)府中(厳原(いづはら))藩、土佐藩支封宿毛(すくも)(家老伊賀氏領)にあった。

[木槻哲夫]

『吉村寛泰編「会津日新館志1~5」(『会津史料大系』所収・1983~85・歴史春秋社)』『小川渉著『会津藩教育考』(1931・同書発行会)』『文部省編・刊『日本教育史資料 1、5、6』(1889)』『笠井助治著『近世藩校の綜合的研究』(1960・吉川弘文館)』


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百科事典マイペディア 「日新館」の意味・わかりやすい解説

日新館【にっしんかん】

陸奥(むつ)会津藩の藩校。1788年藩主松平容頌(かたのぶ)のとき従来の講所を朱子学派の構想下に改めて設立。1799年日新館と称し,教学体制を整え,生徒を武士子弟に限定,漢学,和学,書,神道,兵学,医学,算術,洋学等を教えた。対馬(つしま)府中藩,美濃(みの)苗木(なえぎ)藩等に同名の藩校があった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「日新館」の解説

日新館
にっしんかん

陸奥国会津藩の藩校。従来の学問所稽古堂を発展・解消して,1788年(天明8)から追手前大町通りに建設,99年(寛政11)に命名。規模・内容が整備されたのは享和・文化期で,経費は年5000石で運営。武術,朱子学を主流とする漢学のほか,和学・神道・算法・習字・習礼・天文・医学・洋学の学科が設けられ,藩士子弟は入学が義務づけられた。中央に聖堂,その門の東西に東・西両塾を配置して内容別に教授し,他に講釈所・文庫・武芸稽古所を設置。教科書の刊行も行われた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日新館」の意味・わかりやすい解説

日新館
にっしんかん

会津藩の藩校。寛政 11 (1799) 年設立。延宝2 (1674) 年,藩主保科正経が設立した「講所」が起源。学制を改革するとともに,日新館と改称した。塾学と大学とから成り,教科目は漢学,習礼,習字,兵学,武術,和学,書学,神道,和歌会,音楽,数学など多岐にわたっている。なお,対馬藩,苗木藩などにも同名の藩校があった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「日新館」の解説

日新館
にっしんかん

江戸時代,会津藩の藩校
寛文年間(1661〜73),藩主保科正之が設立。初め稽古堂と称したが,1799年5代松平容頌 (かたのぶ) が日新館と改称。士庶の別なく入学させ,また1842年開版局を特設し出版事業も活発であった。

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