改訂新版 世界大百科事典 「日米友好通商航海条約」の意味・わかりやすい解説
日米友好通商航海条約 (にちべいゆうこうつうしょうこうかいじょうやく)
日本とアメリカの間の経済関係の基礎をなす条約。第2次大戦後,独立を回復した日本はアメリカとの経済関係において,対日平和条約12条の適用を暫定的に受けていたが,1953年4月2日,同条項に基づいて日米間で署名調印され,同年10月30日に発効した条約である。正式名称は〈日本とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約〉である。これは,前文,本文25ヵ条ならびに議定書15項目から構成されている。前文では,この条約が,日米間の経済通商関係を促進するために最恵国待遇および内国民待遇の原則をその基礎とすることを定めている。本文のおもな内容をあげると,まず1条では商業目的あるいはその他の目的で入国し,居住する自由が認められ,7条では両国の国民と会社はすべての種類の事業活動を行うことが認められている。なお,3条は他方の締約国の領域内において業務上の災害を受けたときの労災保障および老齢失業などに対する社会保障について内国民待遇を与えることを定めている。また,6条は,両国の国民と会社の財産が不断の保護を受けること,ならびに不動産あるいは動産について自由に取得し,処分する権利を保障している。工業所有権についても同様のことがいえる。なお,4条は本条約で認められた諸権利の行使の保護については,相手国のすべての裁判所における出訴権ならびに行政機関に対する申立権を認めている。11条は相手国内における所得,資本,取引などに対する課税について内国民待遇および最恵国待遇を与えている。
執筆者:岡村 尭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報