木工芸の加飾法の一つで、「もくえ」ともいう。技法には次の3種がある。
(1)具象的模様を嵌装(がんそう)する法で、木地に模様の形を彫り込み、他の材をはめ込むもの。
(2)象牙(ぞうげ)、角(つの)、木、竹などの細片を貼(は)り合わせて、矢羽根、石畳、矢筈(やはず)などの幾何学的細文を表したもので、ある程度の大きさの各材を貼り合わせて、小口に単位模様ないしその一部をつくり、これを象眼(ぞうがん)する厚さに適宜切断して用いる。
(3)菱形(ひしがた)、方形などに切った薄板を器物の表面に貼って、菱繋(ひしつなぎ)や石畳などの幾何学的模様を表したもの。
木画についての記録は、中国西漢の雑事を記した『西京雑記(せいけいざっき)』の「木画屏風(びょうぶ)」、『唐六典(とうりくてん)』の「木画紫檀(したん)尺」などが古い。古代の遺例としてはエジプトのツタンカーメン王墓出土の木画箱がある。木画の技法はササン朝ペルシアから中国に伝えられ、唐代に発達した技法が日本に伝来したものとみられる。正倉院宝物や法隆寺献納宝物中に遺例があり、(1)の技法を用いた例としては琵琶(びわ)の背面、双六局(すごろくきょく)、碁盤、御物の箱など数例がある。(2)の例は界線文に多く使用され、(3)の技法によるものには沈香、黒柿(くろがき)、檳榔(びんろう)その他の薄板を貼った例がみられる。
[荒川浩和]
一種の寄木象嵌(ぞうがん)で,正倉院の木工芸を特徴づける技法。2種の技法がある。一つは紫檀,黒檀,鉄刀木(たがやさん),花櫚(かりん),黄楊(つげ)木,黒柿,象牙,青角(あおづの)(鹿角を染めたもの)など色の異なった素材(唐木を主体とする)を組み合わせて各種文様をあらわしたもので,これには,花鳥などの自由な絵画文と,市松(いちまつ)文,矢筈(やはず)文などの幾何文とがある。他の一つは木地の素朴な木理を利用して,これを菱形などに交互に組み合わせた木地木画である。絵画文木画と幾何文木画の両者を用いた法隆寺献納宝物の木画箱(宮内庁)は,正倉院木画の先蹤(せんしよう)をなす作例であり,その図様には西域的要素が濃厚にみられる。正倉院には絵画文木画として木画紫檀双六局,幾何文木画に紫檀小架など,木地木画には檳榔(びんろう)木画箱などがある。木画は中国の文献《西京雑記》《大唐六典》などにもみられ,中唐のころ盛行した技法である。奈良時代に日本に伝えられて数多く作られたが,平安時代以降急速に行われなくなり,かろうじて一部の幾何文木画のみが雅楽の楽箏など楽器の装飾として伝えられた。江戸時代の箏のうちに,その伝統の徴証をみることができる。幕末・明治期に木内喜八は琴の製法,装飾法を学び,さらに紫檀木画香棚,紫檀木画双六局を製作し,家芸を継いだ木内半古,省古によって正倉院の木画・撥鏤(ばちる)の法が復元された。箱根細工など各地で行われるいわゆる寄木細工と木画との技法上の直接の関連は認められない。
執筆者:木内 武男
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