木魚(読み)モクギョ

デジタル大辞泉 「木魚」の意味・読み・例文・類語

もく‐ぎょ【木魚】

読経のときにたたいて鳴らす木製仏具。丸くて中空で、表に魚鱗ぎょりんを彫刻してある。布などで先端を包んだ棒で打つ。
禅寺庫裏くりにつるし、食事時に打ち鳴らした魚形の木の板。

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精選版 日本国語大辞典 「木魚」の意味・読み・例文・類語

もく‐ぎょ【木魚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 木で龍頭魚身の形に作ったもの。禅家で庫裡(くり)につるし、食事時に打ち鳴らす。
    1. [初出の実例]「次打木魚。衆僧集定」(出典:永平道元禅師清規(13C中)赴粥飯法)
    2. [その他の文献]〔蘇軾‐宿海会寺詩〕
  3. 僧侶が経を読む時にたたき鳴らす仏具。木造円形で、中空にしたもの。表に魚鱗を刻んである。布や革で先端を包んだ棒で打つ。近世、歌舞伎の鳴物としても用いた。〔和漢三才図会(1712)〕 〔北史‐隋紀・上〕
    1. 木魚<b>②</b>
      木魚
  4. 鰹節。
    1. [初出の実例]「清商これを戛魚(かつぎょ)或は木魚(モクギョ)といふなり。煮取は鰹節を造る時、其液滞する者を取て之を収る」(出典:風俗画報‐九九号(1895)人事門)
  5. ( 大きな腹をに見立てるところから ) 妊娠した婦人をいう俗語。〔隠語構成様式并其語集(1935)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「木魚」の意味・わかりやすい解説

木魚 (もくぎょ)

東アジアの仏教法具あるいは打楽器。古くは木製の魚状の板である魚板(ぎよばん)をいう。ふつう読経用に用いられるいわゆる木魚は,魚板が変形して,中空で口が開いた木製の鈴のような形になったもので,頭部に扁平な柄がある。クスノキまたはクワなどの木材を響孔から刀を入れて空洞に彫る。木地のままのものと,表面を朱漆塗して魚鱗などを彫って金箔をおしたものとがある。双魚が珠を争う形や,1尾の魚が屈曲して頭尾を接した形のものや,竜を図案化したものがある。直径6cmくらいの小型のものから,1mに及ぶ大きなものまで種々ある。桴(ばち)(棓)は,大型の木魚には棒の頭部を革または布で包んで球状にしたものを用い,小型のものは短い棒で直接たたく。ふつう座布団状の台に置き,読経のリズムをとるために用いる。日本には中世以降中国から伝来し,長い読経に活を入れるために,禅宗をはじめ天台宗浄土宗などで用いられてきた。魚は昼夜目を閉じないので,修行者に精進の意を教えたものといわれる。禅宗では本山寺院の法会にも大鏧(だいきん)/(たいけい)と対になるような大型のものが用いられる。明治時代まで阿呆陀羅経(あほだらきよう)の大道芸人が,2~3個の調子の異なる小型の木魚を左手にもって,右手の桴で打ちながら経文風の軽口を唱えた。歌舞伎の下座音楽でも用いられる。仏教圏の東アジア各地にもみられるが,ベトナムのモーも小型の木魚で打拍用に用いられている。近年はテンプル・ブロック,チャイニーズ・ブロックなどと呼ばれて,ウッド・ブロック(木鐘)の一種としてジャズなどに取り入れられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木魚」の意味・わかりやすい解説

木魚
もくぎょ

読経(どきょう)や唱題(しょうだい)などの調子をとるために用いる仏具。一般にクスノキなどの木を材料とし、球形の内を空洞にして表面の一部に魚鱗(ぎょりん)の彫刻をしてある。小蒲団(ふとん)の上に置き、先端に布を巻いた棒で打ち鳴らす。もともと禅院で大衆を集める合図として打ち鳴らした魚鼓(ぎょく)(魚板(ぎょばん))から発展し、団扇(うちわ)形に変化し、さらに二頭一身の竜が向き合って一つの珠(たま)を含む形となり、木魚とよばれるようになった。中国では明(みん)代ころに現在みられるような形となり、日本では室町時代の遺品もあり、当時から使われていたようであるが、江戸時代の初めに渡来した隠元隆琦(いんげんりゅうき)が請来したともいわれている。おもに禅宗、天台宗、浄土宗などで使用する。浄土宗では一時、宗義に反するとして使用が禁じられたが、現在は念仏を唱えるときに重用されている。

 木魚は楽器としても多く用いられた。中国では清(しん)代乾隆(けんりゅう)帝(在位1735~95)のころ民俗楽器として用いられ、日本では江戸時代、「木魚入合方(いりあいかた)」として歌舞伎下座(かぶきげざ)音楽に取り入れられた。第二次世界大戦後にはアメリカのジャズ・ドラマーによって、小形の木魚がそのままドラム・セットに加えられ、近年は形を変えてウッド・ブロックとしてドラム・セットに編入されている。

[中尾良信]


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百科事典マイペディア 「木魚」の意味・わかりやすい解説

木魚【もくぎょ】

仏教の読経のさいに用いられる法具,あるいは打楽器。一種のスリット・ドラム。クスノキ,クワなどの木を鈴の形に削り,響孔と呼ばれる割れ目から刀を入れ空洞にしたもので,ふつう先を革や布で包んだ桴(ばち)で叩く。大きさ,形状,装飾など多様。〈木魚〉の名称は,修行者の精進を目を閉じない魚にたとえたことによるといわれる。仏教圏の東アジアで広く見られ,歌舞伎の下座音楽に用いられるほか,近年では欧米の音楽にも取り入れられている。
→関連項目江南糸竹

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木魚」の意味・わかりやすい解説

木魚
もくぎょ

仏前で読経する際にたたいて鳴らす道具。木製体鳴楽器。もとは細長い木材を魚形に刻み,魚板と称して,これを打って集合の合図として用いた。のちに円形,中空,細長い穴をうがって表面に魚の鱗を彫刻したもの (魚鼓) が現れ,読経の調子をとる道具として使用されるようになった。大きさは 1mに及ぶものから 6cmくらいのものまであり,桴 (ばち) も使い分けられる。現代音楽の楽器としても用いられている。

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普及版 字通 「木魚」の読み・字形・画数・意味

【木魚】もくぎよ

仏具。

字通「木」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の木魚の言及

【魚板】より

…一種の割れ目太鼓で,長い柄のついた木槌で打ち鳴らす。古くは木魚(もくぎよ)と同一異名であり,木魚は魚板から変形してできたと考えられている。魚板は昼夜不眠とされた魚にたとえ,修行僧の怠惰をいましめるために作られたものである。…

※「木魚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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