来迎(読み)ライゴウ

デジタル大辞泉 「来迎」の意味・読み・例文・類語

らい‐ごう〔‐ガウ〕【来迎】

《近世中ごろまで「らいこう」とも》
浄土教で、念仏行者の死に臨んで、極楽浄土へ導くため阿弥陀仏や諸菩薩ぼさつが紫雲に乗って迎えに来ること。迎接ごうしょう
御来迎ごらいごう

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精選版 日本国語大辞典 「来迎」の意味・読み・例文・類語

らい‐ごう‥ガウ【来迎】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「らいこう」 )
  2. ( ━する ) 仏語。念仏行者の臨終に、阿彌陀仏や諸菩薩が迎えに来て浄土に連れて行くこと。真宗では、阿彌陀仏の本願によって、念仏者が浄土に帰って来るのを仏が待ち迎えることをいう。御来迎。→来迎引接(らいごういんじょう)
    1. [初出の実例]「千秋尽而露命墜剋待観音之来迎」(出典:江都督納言願文集(平安後)二・道女御道子逆修願文)
  3. 高山の頂上で見る日の出。来光。御来迎。
    1. [初出の実例]「来迎や見まれ見ずまれふじまうで〈万年子〉」(出典:俳諧・桜川(1674)夏二)
  4. 高山の頂上などで、日の出・日没時に、陽光を背にして立つと自分の影が前面の霧や雲に投影され、その周囲に色のついた光の輪ができる現象。仏・菩薩が光背(こうはい)を負って来迎する姿に見立てていう。ブロッケン現象。来光。御来迎。
  5. 二十六夜待(にじゅうろくやまち)の月の出を迎えること。御来迎。
  6. 玩具の一つ。筒の中に紙などで作った小さな仏像を入れ、筒をさげると紙を畳んだ光背が開いて仏像がせり出してくるもの。御来迎。

来迎の語誌

( 1 )節用集や「日葡辞書」等ではライカウであり、ライガウと濁音化したのは近世以降と考えられている。
( 2 )臨終の際に阿彌陀仏来迎を願う場合の作法については、「往生要集‐大文六」の「臨終行儀」に記され、そのさまは中古以来の諸往生伝や「今昔物語集」などに描かれている。
( 3 )来迎の際の様子は、「西に紫雲たなびき、異香(いきゃう)室にみち、音楽そらにきこゆ」〔平家灌頂〕のようなかたちで、ほぼ定型化して表現される。

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改訂新版 世界大百科事典 「来迎」の意味・わかりやすい解説

来迎 (らいごう)

仏・菩薩が衆生(しゆじよう)を迎えに来ること。とくに念仏行者が臨終のときに,阿弥陀仏が諸菩薩とともに雲に乗り,死者のところへ迎えに来て,極楽浄土へ導き引きとることをいう。来迎引接(いんじよう)と熟し,迎接(ごうしよう)とも略する。阿弥陀仏の来迎は阿弥陀仏四十八願のうちの第十九願に示されている。第十九願は〈来迎引接の願〉とも〈聖衆来迎の願〉ともいわれ,〈たとい,われ仏となるをえんとき,十方の衆生,菩提心を発(おこ)し,もろもろの功徳を修め,至心に願を発して,わが国に生れんと欲せば,寿(いのち)の終るときに臨みて,(われ)もし,大衆とともに囲繞(いによう)して,その人の前に現ぜずば,正覚を取らじ〉(《無量寿経》)というものである。また《無量寿経》に三輩(さんぱい)往生,《観無量寿経》に九品(くぼん)往生が説かれ,仏菩薩来迎の種々相が示されている。日本では平安時代に,阿弥陀仏の来迎に対する信仰が興起した。源信は浄土をたたえるに十楽をもってしたが,その第1に〈聖衆来迎の楽〉をあげている(《往生要集》)。阿弥陀仏が来迎引接するさまを儀礼化した日本独特の迎講(むかえこう)(来迎会)が広く行われ,来迎図なるジャンルの浄土教美術が形成された。阿弥陀仏像には来迎印が用いられ,乗雲の来迎三尊の形像が製作されたり,さらに行者を護念する菩薩であった二十五菩薩が臨終のときに来迎引接する菩薩に性格が変わったのも,すべて来迎思想の高まりの結果である。〈弥陀の誓ひぞ頼もしき 十悪五逆の人なれど 一度(ひとたび)御名を称ふれば 来迎引接疑はず〉(《梁塵秘抄》),〈契り置く弥陀の浄土の西よりは迎えて見せよ極楽の道〉(西念《極楽願生歌》)などと,来迎を願望する歌も多くみられる。また阿弥陀仏像の手に五色の糸をかけ,これをみずからの手にもち,心正念(しようねん)に弥陀の来迎をまつ臨終行儀が重視されたが,法然は臨終の行儀に決定的な意義を認めなかった。法然によれば,阿弥陀仏はその本願のとおり必ず来迎するのだから,糸を引く必要もなく,また正念だから来迎があるのではなく,来迎があるからこそ臨終も正念でいられることになる,という(《逆修説法》)。法然は阿弥陀仏の来迎の真実性を説くが,来迎が実現するには生前の念仏こそが条件となることを強調した。真宗の教義では臨終来迎を必要とせず,浄土宗西山派では阿弥陀仏の救済のはたらきを来迎という。なお来迎図は阿弥陀仏に限らず,鎌倉時代以後に十一面観音菩薩,弥勒菩薩,薬師如来などの来迎図もつくられている。
来迎図
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「来迎」の意味・わかりやすい解説

来迎
らいごう

仏教用語。臨終のとき,仏陀や菩薩が浄土の世界から迎えに来ること。日本では多くの来迎図が描かれている。来迎のときの音楽,香,紫雲は平安時代の宮廷貴族の理想を反映している。

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普及版 字通 「来迎」の読み・字形・画数・意味

【来迎】らいげい

迎える。

字通「来」の項目を見る

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