益信(読み)ヤクシン

デジタル大辞泉 「益信」の意味・読み・例文・類語

やくしん【益信】

[827~906]平安前期の真言宗の僧。備後びんごの人。奈良大安寺で出家して密教法相ほっそうを学び、東寺長者東大寺別当となった。宇多天皇出家の際の戒師で、円城寺開山。その法流寛朝に至って広沢流とよばれる。勅諡号ちょくしごう本覚大師通称、円城寺僧正

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精選版 日本国語大辞典 「益信」の意味・読み・例文・類語

やくしん【益信】

  1. 平安前期の真言宗の僧。広沢流の祖。通称は円成寺僧正、勅諡(ちょくし)は本覚大師。大安寺で出家し、元興寺の明詮法相を学び、宗叡・源仁から密教を受けた。寛平三年(八九一東寺長者となり、宇多天皇の尊信を得て戒を授け、さらに伝法灌頂を授けた。のち、円成寺を開く。著書に「金剛頂経蓮華部心念誦次第尊法」「寛平法皇御灌頂記」など。天長四~延喜六年(八二七‐九〇六

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「益信」の意味・わかりやすい解説

益信
やくしん
(827―906)

平安前期の真言(しんごん)宗の僧。備後(びんご)国(広島県)の人。若年で南都大安寺(だいあんじ)に住し、元興寺(がんごうじ)明詮(みょうせん)(789―868)に法相(ほっそう)を学び、宗叡(しゅうえい)に密教を学ぶ。887年(仁和3)源仁(げんにん)(818―887)から伝法灌頂(でんぽうかんじょう)を受け阿闍梨(あじゃり)となる。891年(寛平3)東寺(とうじ)第7代長者、894年東大寺別当、899年(昌泰2)宇多(うだ)天皇出家の戒師となり、901年(延喜1)に伝法灌頂を授ける。また、尚侍(しょうじ)藤原淑子(ふじわらのよしこ)の病気平癒に霊験あって、深く帰依(きえ)を受け、東山の山荘を賜って寺とした。これを円城寺といい、ここに寂したので円城寺僧正といわれる。彼の法流を継ぐ寛朝(かんちょう)がのちに嵯峨(さが)広沢(ひろさわ)の遍照寺(へんじょうじ)に住して法流を大いに広めたところから、広沢流の名がおこったが、広沢流の祖師は益信に帰せられる。1308年(延慶1)本覚(ほんがく)大師の号を賜る。著作は多数ある。

[平井宥慶 2017年10月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「益信」の意味・わかりやすい解説

益信 (やくしん)
生没年:827-906(天長4-延喜6)

平安前期の真言宗の僧。備前の人,品治氏の出で,本姓紀氏。石清水八幡宮を勧請した行教の兄と伝える。幼時大安寺に入り,出家受戒後,元興寺の明詮に法相を学び,ついで東寺の宗叡,源仁に密教を学んで,887年(仁和3)に源仁から密教の奥義を授けられ,翌年,権律師,東寺二長者に補せられた。さらに,891年(寛平3)第7代の東寺一長者に,894年,東大寺別当・法務に任ぜられるというように,仏教界の要職に就いた。当時,仏教に心を傾けていた宇多上皇は,899年(昌泰2),仁和寺で益信を戒師として出家した。益信は900年に僧正に補され,翌年には東寺で法皇に伝法灌頂を授けた。それより先,尚侍藤原淑子の病気平癒を祈って験あり,尚侍が建てた東山の円成(えんじよう)寺の別当に迎えられた。空海とその弟子たちが活動したあとを受けて,密教の興隆につくし,数々の密教の作法書などを著して,真言宗東密広沢流の開祖となった。1308年(延慶1),本覚大師の号を贈られた。
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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「益信」の解説

益信 やくしん

827-906 平安時代前期の僧。
天長4年生まれ。真言宗広沢流の祖。法相(ほっそう)をおさめたのち東寺の宗叡(しゅえい)にまなび,源仁に灌頂(かんじょう)をうける。東寺長者,東大寺別当となり,昌泰(しょうたい)2年宇多上皇出家の戒師をつとめ,3年僧正。のち円成(城)寺をひらき,円成寺僧正ともよばれた。延喜(えんぎ)6年3月7日死去。80歳。備後(びんご)(広島県)出身。俗姓は品治(ほんじ)。諡号(しごう)は本覚大師。

益信 えきしん

やくしん

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「益信」の意味・わかりやすい解説

益信
やくしん

[生]天長3(826)
[没]延喜6(906).3.
平安時代の真言宗僧。幼年時代に奈良の大安寺で出家し,法相,密教の学を修めた。寛平2 (890) 年東寺の長者となり,宇多天皇の帰信を受け,昌泰2 (899) 年に授戒し,延喜1 (901) 年伝法灌頂を授けた。円城寺を開山し,諡は本覚大師,円城寺僧正と称された。主著『金剛頂蓮華部心念誦次第』 (1巻) 。

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