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歴史物語 れきしものがたり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

歴史物語
れきしものがたり

日本文学において,宮中を中心とする歴史を和文で書いたもの。作品としては『栄花物語』『大鏡』『今鏡』『水鏡』『増鏡』『秋津島物語』『月の行方』『池の藻屑』などがある。『栄花物語』は『源氏物語』に刺激されて,藤原道長栄華を中心に,六国史を書き継ぐ意味から,宇多天皇から堀河天皇にいたる宮廷史を編年体で記し,『大鏡』は同じく藤原道長の栄華,人物を中心にするが,文徳天皇から後一条天皇にいたる歴史を列伝体で記す。『今鏡』以下の作品はいずれも形態は『大鏡』を踏襲し,内容も順次書き継ぐ形になっているが,歴史的事象に対する書き手の態度はむしろ『栄花物語』に近く,『大鏡』の批判的精神よりは,過ぎ去った王朝の栄華に対する主情的詠嘆を基調にしている。文学的には中世にいたって意味を失い,同じく歴史的事件を素材とする軍記物語にあとを譲り,南北朝の『増鏡』がわずかに評価されるにすぎない。

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デジタル大辞泉の解説

れきし‐ものがたり【歴史物語】

歴史的事実を題材にした小説的作品。
平安中期以後、歴史的事実に取材し、仮名文で物語ふうに書かれた歴史書の総称。「栄花物語」「大鏡」「今鏡」「水鏡」「増鏡」など。

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百科事典マイペディアの解説

歴史物語【れきしものがたり】

仮名文で書かれた物語風の歴史叙述また歴史を素材とした物語の総称。平安後期の《栄花物語》を初めとして南北朝時代までに多く現れた。鏡ものと呼ばれる《大鏡》《今鏡》《水鏡》《増鏡》などに代表される。
→関連項目軍記物語文学

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大辞林 第三版の解説

れきしものがたり【歴史物語】

歴史的事実に取材した物語。
平安後期以後、歴史的事実を素材として仮名文で書かれた物語の総称。「栄花物語」「大鏡」「今鏡」「水鏡」「増鏡」「月の行方」「池の藻屑」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

歴史物語
れきしものがたり

日本文学史上の一ジャンル。歴史に取材した物語の総称。作品としては、『栄花(えいが)物語』『大鏡(おおかがみ)』『今鏡』『水鏡』『増(ます)鏡』などがあり、これに『秋津島(あきつしま)物語』(作者不詳)、『月の行方(ゆくえ)』(荒木田麗女)、『池の藻屑(もくず)』(同上)を加える説もあり、これらをあわせると、神代から1603年(慶長8)まで一貫した物語となるが、『秋津島物語』以下の三作品は、鏡物の体裁を模倣して書かれているものの、厳密な意味では、歴史物語とはいえない。
 歴史物語は、摂関政治から院政へ移行していく時代を背景に発生した。当時の作り物語は、『狭衣(さごろも)物語』や『夜(よる)の寝覚(ねざめ)』などのように、『源氏物語』を模倣しながらも、それぞれに新生面を開いたものもあるが、総じて『源氏物語』を皮相的に模倣した作品が多く、非現実的、退廃的傾向を強め、衰退の一途をたどりつつあった。このような時代に、新しい物語の世界を開拓したものとして、歴史物語が登場してきたが、その発生を促した要因の一つに、『源氏物語』の物語論がある。それは、事実そのものよりも虚構世界にこそ人間の真実があるとする主張で、これを受けて、『栄花物語』の作者は、虚事(そらごと)でない事実=歴史を物語の世界に全面的に持ち込んで、人間の真実を描こうとしたが、歴史と物語とを性急に統一融合しようとしたため、作者の考えたようにはいかなかった。しかし、『栄花物語』の出現は、人間を描いて歴史の真実に迫ろうとする『大鏡』成立の契機となり、さらに『今鏡』以下の作品を簇出(そうしゅつ)させた。
 歴史に取材したとはいえ、歴史物語はかならずしも史実を忠実に客観的に叙述したものではなく、作者の意図によって、事実を歪曲(わいきょく)したり、虚構を用いたりしていて、これを歴史書と同等に扱うことはできない。概していえば、慈円(じえん)が史論書『愚管抄(ぐかんしょう)』のなかでいっているように、歴史物語は「ヨキ事ヲノミ」書き記したものであり、王朝貴族社会とその文化に対する賛美と憧憬(しょうけい)の精神を基調として書かれている。[竹鼻 績]

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