桜会(読み)サクラカイ

デジタル大辞泉 「桜会」の意味・読み・例文・類語

さくら‐かい〔‐クワイ〕【桜会】

昭和5年(1930)橋本欣五郎・根本博らの陸軍中堅将校によって結成された、満州問題解決とそのための国家改造を行動目的とする団体。満州事変の前後、三月事件十月事件を企てた。

さくら‐え〔‐ヱ〕【桜会】

平安・鎌倉時代に、桜の花の咲くころに営まれた法会。その後に観桜の宴が開かれた。京都の醍醐寺だいごじ賀茂神社で行われたものが有名。

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精選版 日本国語大辞典 「桜会」の意味・読み・例文・類語

さくら‐え‥ヱ【桜会】

  1. 〘 名詞 〙 平安時代から鎌倉末期にかけて、桜の花の咲くころに行なわれた法会。法会の後で、観桜の宴を開いた。特に、京都の賀茂神社や醍醐寺などで行なわれたものが有名。
    1. [初出の実例]「仁和寺桜会云云」(出典:九暦‐九暦抄・天徳元年(957)三月一五日)

桜会の補助注記

醍醐寺清滝前で催された清滝会は特に名高く、後世、桜会といえばこれを指すようになった。


さくら‐かい‥クヮイ【桜会】

  1. 陸軍将校秘密結社。昭和五年(一九三〇)橋本欣五郎、長勇ら昭和の軍閥を構成する参謀本部陸軍省の佐官級中堅将校が結成。満州侵略とそのための国家改造を目的に、北一輝、大川周明らと結んで、翌六年の三月事件、十月事件(錦旗革命事件)などをくわだて、満州事変の発生にも暗躍した。十月事件後に自然消滅。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「桜会」の意味・わかりやすい解説

桜会
さくらかい

陸軍省、参謀本部の中堅将校を中心に、国家改造を目的として結成された団体。1930年(昭和5)夏、橋本欣五郎(きんごろう)中佐(参謀本部ロシア班長)を中心に、坂田義朗(よしろう)中佐(陸軍省調査班長)、樋口季一郎(ひぐちきいちろう)中佐(東京警備司令部参謀)ら二十数名の発起人により結成された。ロンドン軍縮条約に対する不満と政党政治への反感をもとに、「本会は国家改造を以(もっ)て終局の目的とし之(これ)が為(た)め要すれば武力を行使するも辞せず」との目的を掲げ、また満州侵略を不可欠と考えていた。31年5月ごろには会員150名に達し、同年7月には尉官級を中心とした小桜会も結成され、国家改造をめぐる将校の横断的組織となった。桜会内部には国家改造と対外侵略の方式に関する意見対立が存在したが、橋本らは満州侵略のためにも、まず国家改造が必要であると主張していた。橋本らは31年の三月事件および十月事件というクーデター計画で国家改造を実行しようとしたが、いずれも未遂に終わり、その後桜会は自然消滅した。

 天皇制国家機構の中枢機関である陸軍内部に、初めて国家改造を指向する組織が結成されたことは、日本ファシズム形成過程に重要な意味をもった。

[榎本勝巳]

『中野雅夫著『橋本大佐の手記』(1963・みすず書房)』『高橋正衛著『昭和の軍閥』(中公新書)』『今井清一他編『現代史資料4 国家主義運動1』(1963・みすず書房)』

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百科事典マイペディア 「桜会」の意味・わかりやすい解説

桜会【さくらかい】

1930年結成された国家改造をめざす陸軍将校の結社。ロンドン条約調印による統帥権干犯,浜口内閣緊縮財政等に不満の参謀本部の橋本欣五郎,長勇ら中堅将校が中心になり,北一輝大川周明ら右翼,国家社会主義者とも結んで国家改造を構想。三月事件十月事件を計画,満州事変発生にも暗躍。十月事件後解体したが一部は統制派を形成した。
→関連項目建川美次

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改訂新版 世界大百科事典 「桜会」の意味・わかりやすい解説

桜会 (さくらかい)

国家改造をめざす陸軍将校の結社。参謀本部第2部ロシア班長橋本欣五郎中佐は,トルコ公使館付武官時代にケマル・アタチュルクの影響をうけ,クーデタによる政権奪取に心酔するようになり,1930年10月国家改造に関心をもつ中佐以下の現役将校約20名で桜会を結成した。趣意書では〈内治外交上の行詰りは政党者流が私利私欲の外一片の奉公の大計なきに由来する〉とし,〈天皇を中心とする活気あり明らかなるべき国政の現出〉をうたった。会合は公開で,会員数は31年3月には約100名に増加し,とくに参謀本部では所属将校の約30%にあたる40名が会員となった。橋本らの急進分子は,ロンドン条約問題などで危機感をつのらせ,三月事件を画策,満州事変遂行について関東軍幕僚と連携し,さらに十月事件に関与した。桜会は十月事件後31年11月ごろに消滅したが,軍部クーデタという威嚇のもとで協調外交,政党勢力に大きな脅威をあたえた。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「桜会」の解説

桜会
さくらかい

昭和初期の陸軍革新派将校の結社。1930年(昭和5)9月に参謀本部ロシア班長橋本欣五郎中佐が設立。橋本はトルコ駐在武官のときに,ケマル・アタテュルクの軍事的独裁によるイスラム国教の廃止などの国内改革をみて帰国。当時の日本は大不況下で,農村の窮乏,多数の失業者,政党政治の無為腐敗に国民の不満は高まり,ロンドン海軍軍縮会議調印における文官優位,統帥権の危機を感じた橋本は,現状を打開する国家改造を目的として会を設立。会員は中佐以下の陸軍省・参謀本部に勤務する将校を主とした。会員数は100人前後。綱領で国家改造のためには武力の行使も辞せずと,「軍人勅諭」で禁じられた軍人の政治関与を公然と主張。国内改造運動と満蒙問題解決を同時進行させ,3月事件・満州事変・10月事件に関与した。10月事件で橋本ら13人が形式的処罰をうけて自然消滅した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桜会」の意味・わかりやすい解説

桜会
さくらかい

1930年9月下旬,陸軍革新派の中佐橋本欣五郎,大尉長勇を中心に,おもに参謀本部の若手の佐官,尉官約 10余名が結成した秘密の政治結社。この結社は,クーデターに訴えて軍部政権を樹立,国家改造を行うことを目的にした。翌 31年,三月事件,十月事件 (→錦旗革命 ) を企謀,同年9月より始る満州事変の策謀に重要な役割を果した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「桜会」の解説

桜会
さくらかい

1930(昭和5)年9月につくられた陸軍革新派将校の秘密結社
統帥権干犯問題や浜口雄幸内閣の政策に不満をもつ陸軍少壮将校の橋本欣五郎・根本博らが結成。満蒙問題の解決とそのための国家改造を唱え,北一輝・大川周明らと結び,三月事件・十月事件を企てた。十月事件ののち解体したが,一部は統制派となっていった。

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デジタル大辞泉プラス 「桜会」の解説

桜会

1930年、陸軍省参謀本部の中堅将校らを中心に組織された国家改造を目的とする秘密結社。3月事件、10月事件の名で知られるクーデター計画を立案したが、いずれも未遂に終わった。

桜会(さくらえ)

日本のポピュラー音楽。歌は男性J-POPデュオ、ゆず。2010年発売。作詞・作曲:北川悠仁。

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世界大百科事典(旧版)内の桜会の言及

【十月事件】より

…陸軍を中心とするクーデタ未遂事件。1931年三月事件が未遂に終わったのち桜会の橋本欣五郎中佐らは,関東軍幕僚に呼応して満州事変を遂行するため,事変不拡大方針の第2次若槻礼次郎内閣を倒すクーデタを計画した。桜会員の隊付青年将校ら,大川周明・北一輝・井上日召らの民間右翼もこれに参加し,建川美次参謀本部第一部長をはじめ陸軍首脳部も橋本らをそそのかす態度をとった。…

※「桜会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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