(読み)カジ

デジタル大辞泉 「梶」の意味・読み・例文・類語

かじ〔かぢ〕【×梶/×楮/構/×榖】

カジノキの古名。〈和名抄
かさねの色目の名。表裏ともに萌葱もえぎで、初秋のころに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「梶」の意味・読み・例文・類語

かじかぢ【梶・楫・&JISEBB3;・舵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 楫・檝 ) 船をこぐのに用いる道具。櫓(ろ)や櫂(かい)の総称。
    1. [初出の実例]「われのみや 夜船は漕ぐと 思へれば 沖への方に 可治(カヂ)の音すなり」(出典:万葉集(8C後)一五・三六二四)
    2. 「かぢにあたる浪のしづくを春なればいかがさきちる花とみざらむ〈兼覧王〉」(出典:古今和歌集(905‐914)物名・四五七)
  3. ( 舵 ) 船の進行方向を操作するため船尾に設ける操船上最も重要な装置。上代は船尾側面に長い櫂状の練櫂(ねりがい)を用いたが、中古以降は今日のように船体中心線上に設けた。近世和船の舵は、軸を身木(みき)、舵面(だめん)を羽板(はいた)または若羽(わかば)といい、身木上部に舵柄(かじづか)をつけて操作する。身木は床船梁(ゆかふなばり)の凹所にはめ、各種の綱道具で保持されるが、入港した際や浅い所では引き上げられる構造とする。
    1. [初出の実例]「帆を引、梶(カヂ)を直せば、此船は軈て隔(へだたり)ぬ」(出典:太平記(14C後)七)
    2. 「Cagiga(カヂガ) キカヌ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  4. 飛行機の速度や安定性を調節する装置。方向舵(ほうこうだ)
  5. かじぼう(舵棒)
    1. [初出の実例]「戻り路は角の歌川へ軾(カヂ)を着けさせ」(出典:かくれんぼ(1891)〈斎藤緑雨〉)
  6. 紋所の名。船のかじにかたどったもの。丸に舵、三つ舵などの種類がある。
    1. 丸に舵@三つ舵
      丸に舵@三つ舵

梶の語誌

( 1 )初めは、推進具と方向決定とは機能分化しておらず、カヂに方向決定の意味内容も含まれていたと考えられる。方向決定専門の正舵は、中国の後漢には成立しており、奈良時代の遣唐使船にも備えられてタイシと呼ばれたが、カヂでも方向舵を意味したことは、カヂトリが漕ぎ手であるカコと別の職掌を表わすこと等から明らかである。
( 2 )中世以降、方向舵を表わす語としてはカヂが優勢となり、「カヂ=方向舵」「カイ=推進具」という使い分けが行なわれるようになったと思われる。しかし、「カイ・カヂ=推進具」という用法も根強く、現在は紛らわしさを避けるため、推進具を「オール」等の外来語で表わすようになってきている。


か【梶・楫】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かじ」の古形 ) かじ。舟を動かす艪(ろ)や櫂(かい)の類。「かとり(梶取)」「かこ(梶子)」「やそか(八十梶)」など複合した場合にだけ現われる。
    1. [初出の実例]「此の神は今東国(あづま)の檝取(カとり)の地(くに)に在(ま)す」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))

かじかぢ【梶】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物かじのき(梶木)」の古名。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  3. (かさね)の色目の一種。表、裏ともに萌葱色で、七月に用いる(桃花蘂葉(1480))。

かじかぢ【梶・鍛冶】

  1. 姓氏一つ

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普及版 字通 「梶」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 11画

[字音]
[字訓] かじ・こずえ

[字形] 形声
声符は尾(び)。〔類〕に「木杪(もくべう)なり」とあって、梢(こずえ)の義。わが国では舟のかじ、船尾の方向舵、また「かじの木」の意に用いる。字をその本義において用いることはほとんどない。

[訓義]
1. かじ。
2. こずえ。

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朝日日本歴史人物事典 「梶」の解説

生年:生没年不詳
江戸時代の歌人。家集『梶の葉』が刊行された宝永4(1707)年には在世している。京の祇園社のほとりにある茶店の女主人。父母に孝行を尽くす一方で草子や歌物語を好み,いつしか和歌に通じるようになった。戯れの歌を詠みかけて返歌を求めたり,田舎への土産に和歌を所望する人が絶えず,茶店は繁盛したという。伴蒿蹊著『近世畸人伝』にも採り上げられるなど,当時の京ではアイドル的存在であったらしい。茶店を継いだ百合,その娘の町子(池大雅妻玉瀾)を総称して「祇園三女」という。『梶の葉』の序文と『近世畸人伝』以外にはその実像を物語る資料が乏しい。

(久保田啓一)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「梶」の解説

梶(2) かじ

五味川純平の小説「人間の条件」の主人公。
正義感にもえる知識人。満州(中国東北部)の鉱山会社で労務管理に従事し,タイピストの美千子と結婚。憲兵と衝突して召集され,ソ連軍の捕虜となる。収容所を脱出したが,雪原にたおれる。昭和31-33年三一書房から書き下ろしで刊行,のち映画化され仲代達矢が演じた。

梶(1) かじ

?-? 江戸時代前期-中期の歌人。
京都祇園で茶店松屋をいとなみ,元禄(げんろく)-宝永(1688-1711)のころに活躍。松屋をついだ養女の百合,その娘の町(池大雅の妻玉瀾(ぎょくらん))とともに「祇園三女」とよばれた。通称は祇園梶子。家集に「梶の葉」。

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