(読み)キョク

デジタル大辞泉 「棘」の意味・読み・例文・類語

きょく【棘】[漢字項目]

[音]キョク(漢) [訓]いばら とげ
とげのある木の総称。いばら。「枳棘ききょく荊棘けいきょく
とげ。「鰭棘ききょく
[難読]荊棘いばら

おどろ【×棘/荊棘】

[名・形動]
髪などの乱れているさま。
「髪は―と乱れて」〈鴎外舞姫
草木・いばらなどの乱れ茂っていること。また、その場所やそのさま。やぶ。
「奥山の―が下もふみ分けて道ある世ぞと人に知らせむ」〈新古今・雑中〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「棘」の意味・読み・例文・類語

おどろ【棘・荊棘】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 草木、いばらなどの乱れ茂っていること。また、その所。あるいは、そのようなさま。やぶ。おとろ
    1. [初出の実例]「若し石・樹の根・棘(オドロ)・刺(むばら)有らば、却くべし」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. 「おとろなる垣ねなどに、いと白う咲たるこそをかしけれ」(出典:能因本枕(10C終)四四)
  3. 冬季、柴を束ねて水中に沈めておき、魚を集めてとる仕掛け。
    1. [初出の実例]「ふしつけしをとろの下にすむはえの心おさなき身をいかにせん」(出典:散木奇歌集(1128頃)雑上)
  4. ( 形動 )( から ) 髪、ひげなどが乱れているさまのたとえ。→おどろの髪
    1. [初出の実例]「白銀の針をあざむく長き髪おどろにふり乱し」(出典:あやしやな(1889)〈幸田露伴〉七)
  5. 枯れた小枝。枝つきのたきぎ。雑木の小枝。
    1. [初出の実例]「薪(ヲドロ)に薄(すすき)(ゆい)まぜし築垣したる家あり」(出典:浮世草子・近代艷隠者(1686)二)

きょく【棘】

  1. 〘 名詞 〙
  2. とげのある草木の総称。いばら。〔伊京集(室町)〕
  3. とがっているものの総称。はり。とげ。ほこ
  4. 魚の鰭(ひれ)にある堅い針状の骨。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「棘」の読み・字形・画数・意味


12画

[字音] キョク
[字訓] いばら・すみやか

[説文解字]

[字形] 会意
二朿(し)を並べた形。朿はとげのある木。〔説文〕七上に「小棘、叢生するなり」という。古く公はその庭に九棘を植えたので、大理(司法)のところを棘寺・棘署といった。宮門には矛戟(ぼうげき)の類を立てて、棘門という。棘疾の意は亟・革の音と通用の義である。

[訓義]
1. いばら、はり、とげ、とげのある草木の称。
2. 棘を植えこむところ、公、公の寺署。
3. 棘をめぐらしたところ、獄、獄屋。
4. 枝のあるほこ、戟。
5. 棘の形より、やせる、せまい。
6. 亟・革と通じ、すみやか、せまる、きびしい。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕棘 ヤツ・タケノナ・ソバ・オソル・トシ・カラタチ・オドロ・スミヤカ・ウバラ

[声系]
〔説文〕に棘声として(ぼく)など二字を収める。は西方の異族の名。〔礼記、王制〕には棘に作る。

[語系]
棘・亟kikは同声。革kk、(急)kipも声近く、みな急疾の意がある。

[熟語]
棘囲・棘院・棘下棘枳棘矜棘句・棘・棘矢棘刺・棘子棘茨・棘寺・棘軸・棘実・棘者・棘手・棘樹・棘署棘牆棘丞・棘心・棘針棘榛・棘人・棘棘楚棘棗・棘庭・棘田棘藩棘匕・棘木・棘・棘門・棘棘籬・棘林
[下接語]
棘・槐棘・艱棘・危棘・杞棘・九棘・棘・啓棘・険棘・厳棘・寺棘・茨棘・針棘・榛棘・薪棘・垂棘・剪棘・楚棘・草棘・棘・叢棘・大棘・長棘・披棘・棘・棘・履棘・列棘

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「棘」の意味・わかりやすい解説

棘 (とげ)

(1)植物のとげprickle 植物体の表面に突出した硬い突起物の総称。形態上の単位ではなく,外見上の類似でまとめた呼名だからいろいろのものが含まれる。植物体の表面に突出する付属物のうち,表皮起源で軟らかいものを毛状体emergenceと呼ぶが,毛状体と総称される毛や鱗片のうちでも,ヘゴの葉柄基部につく鱗片の基部のように,細胞が数列並び,壁が肥厚して硬くなったものはとげと呼ばれる。毛状体以外の突出物で硬い組織をもつものを一般にとげというが,このうちには形態上の単位としてはさまざまのものが含まれている。バラやキイチゴのとげは表皮起源で,もともと樹皮になるべき部分が変形したものである。メギのとげは葉が変形したものであり,サボテンの場合も茎が多肉で扁平化して葉の機能をもつようになった結果,元来の葉がとげ状に退化している。サンショウやニセアカシアのとげは托葉が変形したものである。その他で顕著な例は,枝がとげ状になったもので,クコ,グミなどのほか,カラタチのとげも枝の変形と考えられている。

 とげと呼ばれるものは一般に触れば痛いので,草食動物に食べられることから身を守ることになっている。毛状体には刺激物質を分泌するものがあるが,とげは物理的な硬さで機能することで,刺激物を分泌するような例はない。とげは茎につくことが多く,葉につく例もあるが,根にできる例は少ない。
執筆者:(2)動物のとげspine 動物の体表などにはキチン質,角質,石灰質などでできた硬い付属突起がつくられることがあり,また殻,骨片,骨などにも付属突起が形成されることがあり,このような付属突起で先が鋭くとがっているものは一般にとげといわれる。同じような付属突起でも,形,役目,部位によっては,とくに鉤(かぎ)hook,かぎづめclawなどと呼ばれるものもある。キョクヒチュウ類,ウニ類などでは,表皮からつくられたとげが体表をおおっており,移動や防御に用いられる。ウニ類のとげは,内骨格の殻板のいぼ状突起と関連している。ワムシ類,ハリガネムシ類,多毛類,ヤムシ類などには口の周辺に強大なとげがあり,餌を捕らえるあごの働きをする。ワムシ類の咽頭や甲殻類の胃にはキチン質のとげがあって,食物を砕くのに役だっている。ヒモムシ類には吻(ふん)端にとげをもつものがあり,これは吻針stylelと呼ばれ,餌生物に毒液を注入して傷つける役割をする。貝類や節足動物の外殻には,いろいろな部域で大小さまざまな形をしたとげが発達しているのが見られる。捕食や防御などに役だっているものも多いが,それぞれの機能的意味を推測しにくいものも少なくない。哺乳類のヤマアラシなどの体表をおおうとげは,表皮の外につくられる毛が変質したものであり,魚類のハリセンボンなどのとげは,真皮の中でつくられる皮骨であるうろこが変形して体外へ突出したもの,ひれのとげはひれを支える骨から伸びた鰭条(きじよう)が硬く変質したものである。魚類などの一部の脊椎骨には背腹に伸びたとげ状の突起があって神経棘(きよく),血管棘といわれ,後体部でよく発達し,体の支持に役だっている。八放サンゴ類,海綿類や放散虫類などの骨片にも発達したとげをもつものがある。イソギンチャク類,クラゲ類の刺胞は細胞内の構造として小棘(しようきよく)をもっており,毒液を発射する小管を敵や餌生物の体内に切り入れる働きをする。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「棘」の解説

日本のポピュラー音楽。歌はJ-POP男性ユニット、タオルズ。2013年発売のアルバム「water」収録曲。作詞・作曲:西田遼二。フジテレビ系で放送のドラマ「潔子爛漫」のエンディングテーマ。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「棘」の解説

棘 (イバラ)

植物。刺のある小木の総称,またはバラ科バラ属の小低木の総称

棘 (ウバラ)

植物。イバラの古名

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ひれ(鰭)】より

…硬骨魚類ではひれは細長い鰭条とこれらをつなぐ鰭膜とからなり,基部は担鰭骨によって支えられる。鰭条は強固な棘(きよく)になっている場合と,節目のある軟条になっている場合とがある。ニシンやサケなどのひれは棘を欠き,軟条のみを備え,マダイやカツオなどのひれは棘と軟条とを備える。…

※「棘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android