出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
(1)植物のとげprickle 植物体の表面に突出した硬い突起物の総称。形態上の単位ではなく,外見上の類似でまとめた呼名だからいろいろのものが含まれる。植物体の表面に突出する付属物のうち,表皮起源で軟らかいものを毛状体emergenceと呼ぶが,毛状体と総称される毛や鱗片のうちでも,ヘゴの葉柄基部につく鱗片の基部のように,細胞が数列並び,壁が肥厚して硬くなったものはとげと呼ばれる。毛状体以外の突出物で硬い組織をもつものを一般にとげというが,このうちには形態上の単位としてはさまざまのものが含まれている。バラやキイチゴのとげは表皮起源で,もともと樹皮になるべき部分が変形したものである。メギのとげは葉が変形したものであり,サボテンの場合も茎が多肉で扁平化して葉の機能をもつようになった結果,元来の葉がとげ状に退化している。サンショウやニセアカシアのとげは托葉が変形したものである。その他で顕著な例は,枝がとげ状になったもので,クコ,グミなどのほか,カラタチのとげも枝の変形と考えられている。
とげと呼ばれるものは一般に触れば痛いので,草食動物に食べられることから身を守ることになっている。毛状体には刺激物質を分泌するものがあるが,とげは物理的な硬さで機能することで,刺激物を分泌するような例はない。とげは茎につくことが多く,葉につく例もあるが,根にできる例は少ない。
執筆者:岩槻 邦男(2)動物のとげspine 動物の体表などにはキチン質,角質,石灰質などでできた硬い付属突起がつくられることがあり,また殻,骨片,骨などにも付属突起が形成されることがあり,このような付属突起で先が鋭くとがっているものは一般にとげといわれる。同じような付属突起でも,形,役目,部位によっては,とくに鉤(かぎ)hook,かぎづめclawなどと呼ばれるものもある。キョクヒチュウ類,ウニ類などでは,表皮からつくられたとげが体表をおおっており,移動や防御に用いられる。ウニ類のとげは,内骨格の殻板のいぼ状突起と関連している。ワムシ類,ハリガネムシ類,多毛類,ヤムシ類などには口の周辺に強大なとげがあり,餌を捕らえるあごの働きをする。ワムシ類の咽頭や甲殻類の胃にはキチン質のとげがあって,食物を砕くのに役だっている。ヒモムシ類には吻(ふん)端にとげをもつものがあり,これは吻針stylelと呼ばれ,餌生物に毒液を注入して傷つける役割をする。貝類や節足動物の外殻には,いろいろな部域で大小さまざまな形をしたとげが発達しているのが見られる。捕食や防御などに役だっているものも多いが,それぞれの機能的意味を推測しにくいものも少なくない。哺乳類のヤマアラシなどの体表をおおうとげは,表皮の外につくられる毛が変質したものであり,魚類のハリセンボンなどのとげは,真皮の中でつくられる皮骨であるうろこが変形して体外へ突出したもの,ひれのとげはひれを支える骨から伸びた鰭条(きじよう)が硬く変質したものである。魚類などの一部の脊椎骨には背腹に伸びたとげ状の突起があって神経棘(きよく),血管棘といわれ,後体部でよく発達し,体の支持に役だっている。八放サンゴ類,海綿類や放散虫類などの骨片にも発達したとげをもつものがある。イソギンチャク類,クラゲ類の刺胞は細胞内の構造として小棘(しようきよく)をもっており,毒液を発射する小管を敵や餌生物の体内に切り入れる働きをする。
執筆者:原田 英司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…硬骨魚類ではひれは細長い鰭条とこれらをつなぐ鰭膜とからなり,基部は担鰭骨によって支えられる。鰭条は強固な棘(きよく)になっている場合と,節目のある軟条になっている場合とがある。ニシンやサケなどのひれは棘を欠き,軟条のみを備え,マダイやカツオなどのひれは棘と軟条とを備える。…
※「棘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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