大正・昭和期の精神科医。精神療法である森田療法を創始した。高知県生れ。幼時より虚弱であった。熊本の第五高等学校から東京帝国大学医科大学へ進み,卒業後の1903年,同大学の副手となった。巣鴨病院医員ともなり,着任早々,病院看護人講習会をつくり,オルガンを購入して遊戯を奨励したり,看護婦に軍隊式訓練を行ったりした。同年9月,東京慈恵会医院医学専門学校(東京慈恵会医科大学の前身)教授となり,死去する1年前まで精神病学の講義を担当した。森田療法を創始したのは1920年ころといわれる。森田療法創始の背景としては,第1に,本人がなにごとにも興味を抱き,それを科学的に実証しようとする姿勢をもっていたことがある。神経症治療に際しても,当時有効とされたあらゆる療法を実施し,真に効果的と思われる方法を組み合わせて森田療法をつくりあげたといわれる。第2は,本人自身が学生時代に神経症に悩まされ,それを克服した体験をもっていたことがあった。森田療法や神経質理論のほか,祈禱性精神病,嫉妬妄想,催眠術,精神衛生,ヒステリー,進行麻痺など,研究は広い領域にわたっている。
執筆者:大原 健士郎
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明治〜昭和期の精神医学者 東京慈恵医科大学名誉教授。
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…加持祈禱または類似の状況から起こり,人格変換,宗教妄想,憑依妄想などを発する特異な病態で,森田正馬(まさたけ)により名づけられた(1915)。感動をもとにして起こる一種の自己暗示性の精神異常とされ,狐憑きや犬神憑き(つきもの)などもこれに含められたが,今日では,一家の不幸をはらうべく祈禱をつづけているうち,自分が祈禱の対象である神仏そのもののような言動を示しはじめるケースが代表例と見なされる。…
…彼以前には,パラノイアと強迫状態との類似がもっぱら考えられており,フロイトがはじめて強迫とヒステリーとの共通点をあげて,これを神経症とみなしたのである。森田正馬は,強迫神経症をも彼のいう神経質の中に含め,その成立機制は,狭義の神経質の場合と同じく,ヒポコンドリー性基調と精神交互作用とからなるとする。フロイトは強迫神経症を肛門サディズム期への病者の退行ならびにこれに対する防衛として理解し,かつ過酷な超自我の役割を重視している。…
…神経質は,取越苦労,小心,繊細,物事によく気がつくなどの性格特徴を示す一般用語としてよく使われるが,森田正馬はこの言葉を神経症の一類型として使用した。すなわち森田は,今日われわれがいう神経症を神経質とヒステリーに二大別し,神経質をさらに普通神経質(不眠症,頭重・頭痛,頭内朦朧(もうろう),感覚異常,疲労亢進,能率減退,脱力感,胃腸神経症,劣等感,小心,取越し苦労,性的障害,めまい,書痙,耳鳴り,振戦,記憶不良,注意散漫など),強迫観念(対人恐怖,不潔恐怖,疾病恐怖,不完全恐怖,読書恐怖,卒倒恐怖,外出恐怖,吃音恐怖,罪悪恐怖,縁起恐怖,尖鋭恐怖,雑念恐怖,高所恐怖,せんさく癖など),発作性神経症(心悸亢進発作,不安発作,呼吸困難発作など)に分けて説明した。…
…1920年ころ森田正馬(まさたけ)が創始した,神経症者に対する独自の精神療法。森田の精神療法における基本姿勢の一つは,人間に備わる自然治癒力(常態心理)の発動化を促すことであり,その二は,神経症形成の根底にある感情執着の悪循環を断ち切ることであった。…
※「森田正馬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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