無脊椎動物の1動物門。ヤムシarrow wormと呼ばれる動物群で海産のプランクトンとして出現する。体長は,1~4cmくらいで細長く,頭,胴,尾の3部に分かれる。胴部から尾部にかけて1~2対の側びれがあり,尾の後端にも三角形の尾びれが水平についている。頭部の背面に1対の眼点があり,腹面に口が開く。またキチン質の顎毛が左右に7~13本あって先端が内側に曲がり,これで動物性のプランクトンをはさんで口へ運ぶ。顎毛はこの類に特有なものであって,このために毛顎動物と呼ばれている。頸部(けいぶ)やその他の場所が厚くなって泡状組織になっている。消化管は食道から長い腸があり,胴部の後端腹面に肛門が開いている。神経系はよく発達するが,血管系,呼吸器官,排出器官はない。雌雄同体で,卵巣は胴部の後方に,精巣は尾部の中に存在し,雄性先熟である。産みだされた卵は,しばらくのあいだ親虫に付着したあと孵化(ふか)する。
出現量や頻度からプランクトンとして重要な群で,また魚類の天然餌料として大きな価値をもっている。一定の水温や塩分濃度の海域にすむ種類は,水塊の指標種にされている。世界で約110種,うち日本からは33種が知られている。キタヤムシ,フクラヤムシ,ヤムシ,マントヤムシ,フトエリヤムシ,ヘラガタヤムシなどが日本近海に広く分布する。
執筆者:今島 実
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動物分類学上、一門Chaetognathaを構成する動物群。ヤムシ類で代表される海洋プランクトンである。毛顎動物という分類群の名称は、摂餌(せつじ)器官である顎毛に由来するもので、ドイツの動物学者ロイカルトが名づけたものである。全世界の海から約70種、日本近海からは約30種が記録されており、種数の少ない動物門の一つである。この動物群が学問的に知られるようになったのは1769年で、それ以来、現在に至るまでこの動物群(門)の系統的位置には多くの研究者が関心をもち、解剖、発生、組織学的な研究を通して近縁と考えられる分類群との比較を行ってきたが、その系統的位置について結論はまだ得られていない。
[永澤祥子]
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…骨格ができる場合は,生きている硬い組織で形成された内骨格で,外骨格はない。(A)血管系がないもの ヤムシ類約110種よりなる〈毛顎動物門〉は,体が左右相称で頭部,胴部,尾部の3部からなり,神経系は腹側にあり,呼吸器,排出器がない。胚の原口の位置に成体の肛門があるが,発生は触手動物に似ている。…
…毛顎動物門に属する無脊椎動物の総称(イラスト),またはそのうちの1種を指す。ヤムシ類はすべて海中で浮遊生活する。…
※「毛顎動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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