無脊椎動物の中の一動物門。〈したがた動物〉ともいう。この仲間は一般にシタムシとも呼ばれる。爬虫類,哺乳類,その他の脊椎動物の体内に寄生生活する。体の前端近くに口と4個の穴(くぼみ)があるところから五口類Pentastomidaと呼ばれることがある。体は細長い虫状で,長さは1~45cm。体表面には多数の環節が見られるが,真の体節構造ではない。体表はキチン質のクチクラで覆われている。頭胸部は3節からなり,前端近くの腹面に口が開き,その両側に2対のいぼ状の肢が見られるが,これが退化してかぎづめになっていることもある。寄生性ではあるが,単純な直走する消化管をもっている。しかし,呼吸器官や循環系はない。
脱皮によって体が成長する。雌雄異体で宿主の体内で交尾,産卵が行われる。魚類がおもな中間宿主で,幼虫には2対のいぼ状の肢があり,それぞれにかぎづめをもっている。中間宿主が終宿主に食べられると,体内をめぐって,鼻腔,肺,気管などに移る。人間にも寄生することがある。
体表を覆っているキチン質のクチクラを脱皮し,表皮に繊毛がないなど,節足動物の特徴も見られるが,口器や付属肢がないなどから,真の節足動物門とは別に有爪(ゆうそう)動物門,緩歩動物門とともに側節足動物Pararthropodaとして扱われている。
舌形動物には約60種が知られている。イヌシタムシLinguatula taenioidesは,世界各地のイヌや草食動物の鼻腔粘膜中に寄生し,鼻粘膜にカタル性の刺激をひき起こす。カエルシタムシCayerina mirabilisは全長2.5cmで体輪は40内外。ヌマガエルの皮下にうもれて寄生している。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物分類学上、環形動物門と節足動物門の中間と考えられる1門を構成する動物群。かつては節足動物門の1綱とされたが、現在では門として扱われ、「ぜっけいどうぶつ」ともよばれる。寄生生活のシタムシ類約60種からなる小群で、一般に扁平(へんぺい)で舌に似た形をしているのでこの名があるが、頭部に口のほか、4本のいぼ足を収めるくぼみがあり、口が五つあるようにみえるところから五口動物(ごこうどうぶつ)Pentastomataともよばれる。緩歩(かんぽ)動物門(クマムシ類)および有爪(ゆうそう)動物門(カギムシ類)とともに側節足動物門Pararthropodaとしてまとめられることがあるが、互いに強い類縁関係があるということではなく、いずれも環形動物と節足動物の中間的な位置にある動物という意味にすぎない。舌形動物の起源は明らかでないが、寄生生活によって退化した動物群の可能性がある。
[武田正倫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…呼吸器官や循環器官はない。陸生の肉食脊椎動物に寄生する〈舌形動物門〉(シタムシ類,約60種)も4対の足をもつが,そのうちの2対はふつう退化する。これらは環形動物と節足動物の中間のものであろう。…
※「舌形動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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