舌形動物(読み)シタガタドウブツ

デジタル大辞泉 「舌形動物」の意味・読み・例文・類語

したがた‐どうぶつ【舌形動物】

動物界の一門。分類上、環形動物節足動物の中間に位置。脊椎動物に寄生し、体はふつう扁平で細長い。イヌシタムシなど。舌虫したむし。ぜっけい動物。
[類語]無脊椎動物原生動物原虫中生動物海綿動物腔腸動物刺胞動物有櫛ゆうしつ動物扁形動物紐形動物曲形動物袋形動物軟体動物環形動物有爪ゆうそう動物節足動物星口動物触手動物毛顎動物有鬚ゆうしゅ動物半索動物棘皮動物

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改訂新版 世界大百科事典 「舌形動物」の意味・わかりやすい解説

舌形動物 (ぜっけいどうぶつ)
Linguatulida

無脊椎動物の中の一動物門。〈したがた動物〉ともいう。この仲間は一般にシタムシとも呼ばれる。爬虫類,哺乳類,その他の脊椎動物の体内に寄生生活する。体の前端近くに口と4個の穴(くぼみ)があるところから五口類Pentastomidaと呼ばれることがある。体は細長い虫状で,長さは1~45cm。体表面には多数の環節が見られるが,真の体節構造ではない。体表はキチン質クチクラで覆われている。頭胸部は3節からなり,前端近くの腹面に口が開き,その両側に2対のいぼ状の肢が見られるが,これが退化してかぎづめになっていることもある。寄生性ではあるが,単純な直走する消化管をもっている。しかし,呼吸器官や循環系はない。

 脱皮によって体が成長する。雌雄異体で宿主の体内で交尾,産卵が行われる。魚類がおもな中間宿主で,幼虫には2対のいぼ状の肢があり,それぞれにかぎづめをもっている。中間宿主が終宿主に食べられると,体内をめぐって,鼻腔,肺,気管などに移る。人間にも寄生することがある。

 体表を覆っているキチン質のクチクラを脱皮し,表皮に繊毛がないなど,節足動物の特徴も見られるが,口器や付属肢がないなどから,真の節足動物門とは別に有爪(ゆうそう)動物門,緩歩動物門とともに側節足動物Pararthropodaとして扱われている。

 舌形動物には約60種が知られている。イヌシタムシLinguatula taenioidesは,世界各地のイヌや草食動物の鼻腔粘膜中に寄生し,鼻粘膜にカタル性の刺激をひき起こす。カエルシタムシCayerina mirabilisは全長2.5cmで体輪は40内外。ヌマガエルの皮下にうもれて寄生している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「舌形動物」の意味・わかりやすい解説

舌形動物(したがたどうぶつ)
したがたどうぶつ

動物分類学上、環形動物門と節足動物門の中間と考えられる1門を構成する動物群。かつては節足動物門の1綱とされたが、現在では門として扱われ、「ぜっけいどうぶつ」ともよばれる。寄生生活のシタムシ類約60種からなる小群で、一般に扁平(へんぺい)で舌に似た形をしているのでこの名があるが、頭部に口のほか、4本のいぼ足を収めるくぼみがあり、口が五つあるようにみえるところから五口動物(ごこうどうぶつ)Pentastomataともよばれる。緩歩(かんぽ)動物門(クマムシ類)および有爪(ゆうそう)動物門(カギムシ類)とともに側節足動物門Pararthropodaとしてまとめられることがあるが、互いに強い類縁関係があるということではなく、いずれも環形動物と節足動物の中間的な位置にある動物という意味にすぎない。舌形動物の起源は明らかでないが、寄生生活によって退化した動物群の可能性がある。

[武田正倫]


舌形動物(ぜっけいどうぶつ)
ぜっけいどうぶつ

舌形動物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「舌形動物」の意味・わかりやすい解説

舌形動物
ぜっけいどうぶつ
Pentastomida

舌形動物門を形成する種類の総称で,和名はシタムシ類。体長は一般に 1cm内外で,大型種は 30~45cmに達する。 16~130体節から成る細長い体形で,イヌ,ヤギ,ウサギ,ワニヘビ,カエル,カモメなどに内部寄生するが,肺に寄生するものは円筒形,鼻腔に寄生するものは背腹に扁平である。頭胸部は不明瞭な3節から成り,鉤爪をもつ2対の疣足 (いぼあし) がある。胴部には表面的な環節が多数みられる。循環器系,呼吸器系はない。宿主の体内で交尾,産卵するが,卵は中間宿主である小型哺乳類,両生類,魚類の体内に入り,卵殻を出て第1次幼虫になり,宿主の体内を回って脱皮しながら成長する。中間宿主が大型の動物に食べられると胃から鼻腔,肺,気管,腸などに移る。約 70種が知られている。体制はヤスデ類節足動物への類縁関係を示しているが,近年の分子分析の結果から節足動物の1群とする考えも提唱されている。

舌形動物
したがたどうぶつ

舌形動物」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「舌形動物」の意味・わかりやすい解説

舌形動物【ぜっけいどうぶつ】

無脊椎動物の一門。シタムシとも。節足動物に近縁と思われる。体は細長く,体長1〜4.5cm。体表には多数の環節があり,前端に2対の鉤(かぎ)をもつ。体表はキチン質でおおわれ,脱皮して成長。幼生は2対の付属肢をもつが,成体では退化する。魚類を除く脊椎動物の鼻腔,気管,肺に寄生する。現生約100種。

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世界大百科事典(旧版)内の舌形動物の言及

【動物】より

…呼吸器官や循環器官はない。陸生の肉食脊椎動物に寄生する〈舌形動物門〉(シタムシ類,約60種)も4対の足をもつが,そのうちの2対はふつう退化する。これらは環形動物と節足動物の中間のものであろう。…

※「舌形動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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