動物分類学上、一門Ctenophoraを構成する海産の一動物群。いわゆるクシクラゲ類comb-jerriesのことである。かつては腔腸(こうちょう)動物門のなかに一括され、その一亜門とされたことが多く、また現在でも便宜上そのように取り扱われることがある。
有櫛動物という名称は、繊毛の短い横列が小板の上に並んだ櫛板(しつばん)というものをこの動物がもっていることによる。8列の櫛板が縦に体のほぼ全長にわたって伸び、その繊毛の運動によって海中を進む。体は放射相称ではなく二放射相称である。体が外皮・内皮の2層とその中間の中膠(ちゅうこう)とからなり、真の中胚葉(ちゅうはいよう)が形成されないこと、また神経中枢がみられず神経系は網目状であることなどは一般の腔腸動物と共通であるが、一方で腔腸動物にかならずみられる刺胞を欠いており、そのかわりに膠胞(こうほう)とよばれる特別な粘着性に富む細胞が存在し、また発生中にプラヌラ幼生が形成されないことなど、いろいろと腔腸動物とは異なった特徴がみられる。有櫛動物は世界に約80種余りが知られている。それらの大部分は大洋性で、おもに海流によって運ばれる。数センチメートルから十数センチメートル、あるいはそれ以上の体長をもつ比較的大形の動物のなかで、生涯を通じて繊毛をその運動器官としているのはこの有櫛動物のほかにはみられない。ただ、クシヒラムシやクラゲムシなど少数の種類では、このような繊毛をもった櫛板を成体では二次的に失ってしまっており、そのためこれらでは特有の匍匐(ほふく)運動がみられる。また、数千メートルの深海にすむもの、また浮遊性のサルパ類の外套腔(がいとうこう)の中に寄生するヤドリクシクラゲなども知られている。有櫛動物はつねに雌雄同体で、一般に有性生殖のみがみられる。発生の途中でフウセンクラゲ状をしたキデイッペ幼生となり、その後変態する。
有櫛動物が系統上どのようなものから、どのようにして生じたかについてはさまざまな意見があり、学者の見解は一致していない。しかし、刺胞をもった腔腸動物との、また扁形(へんけい)動物の下等渦虫(うずむし)類との類縁関係を、程度の差はあるにしても認めることでは一般に一致している。
[山田真弓]
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…有櫛(ゆうしつ)動物門Ctenophoraに属する種類の総称。体の表面に繊毛が櫛(くし)の歯のように並んだ櫛板(しつばん)をもっているところからこの名がある。…
※「有櫛動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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