中生動物(読み)チュウセイドウブツ

デジタル大辞泉 「中生動物」の意味・読み・例文・類語

ちゅうせい‐どうぶつ【中生動物】

動物界の一門。体はきわめて単純な形で、原生動物後生動物との中間形、または多細胞動物寄生により退化したものとする説がある。タコの腎嚢じんのうに寄生する二胚虫にはいちゅうなどが含まれる。
[類語]無脊椎動物原生動物原虫海綿動物腔腸動物刺胞動物有櫛ゆうしつ動物扁形動物紐形動物曲形動物袋形動物軟体動物環形動物有爪ゆうそう動物舌形動物節足動物星口動物触手動物毛顎動物有鬚ゆうしゅ動物半索動物棘皮動物

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精選版 日本国語大辞典 「中生動物」の意味・読み・例文・類語

ちゅうせい‐どうぶつ【中生動物】

〘名〙 動物分類上の一門。多細胞動物中、体制が最も簡単で原生動物と後生動物の中間形とされていたが、現在では形態や生活史から吸虫類のような動物が寄生生活によって生じた退化形ではないかとされる。頭足類の腎臓中に寄生する二胚虫などが含まれる。菱形目と直遊目にわけられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「中生動物」の意味・わかりやすい解説

中生動物 (ちゅうせいどうぶつ)
Mesozoa

動物界の一動物門。体が少数の細胞からできている寄生性の微小動物。原生動物から後生動物へ進化する中間に位置する一群としてファン・ベネデンvan Benedenにより名づけられた(1876)。しかし,現在では扁形動物の吸虫類が寄生生活によって退化したもの,また体をおおう繊毛や生殖孔の位置から環形動物のユムシ類が退化したもの,また腔腸動物の幼生に似ているところから腔腸動物と近縁な動物と考える学者などがおり,まだ系統上の真の解明はなされていない。

 中生動物は,菱形(りようけい)類Rhombozoaと直游(ちよくゆう)類Orthonectidaとに分けられる。菱形類はミサキニハイチュウ(二胚虫)Dicyema misakienseで代表されるが,これは体長0.5~0.6mmで細長く,25個ほどの細胞からできており,全身が繊毛でおおわれている。体の前端には小さな極細胞が区別される。イカやタコの腎囊の中に寄生する。直游類は,1868年に初めて発見されて以来,地中海北大西洋,アメリカ西海岸などから18種が知られていたが,日本では1976年に初めて北海道の厚岸でウズムシの体内に寄生しているものが発見され,79年にCiliocincta akkeshiensis(キリオキンクタ・アッケシエンシス)として報告された。体は細長い円柱状で,雄虫は約0.1mm,雌虫は0.2~0.3mm。外側は繊毛のはえた1層の細胞でおおわれ,内部には生殖細胞がつまっている。多毛類,貝類クモヒトデ類,紐虫類などの体内に寄生する。最近の研究では菱形類と直游類とを一つの動物群にまとめることに疑問があるともいわれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中生動物」の意味・わかりやすい解説

中生動物
ちゅうせいどうぶつ

原生動物と後生動物との中間動物としてかつて二胚虫(にはいちゅう)類に与えられた名称。現在では扁形動物門(へんけいどうぶつもん)の1綱として扱われ、二胚虫類と直遊虫類との2目からなる。この動物群は一般に顕微鏡視的な大きさで、外形帯状(前者)か円錐(えんすい)状(後者)。海産動物の体内に寄生するため内部構造はきわめて単純化しているが、生活史の一時期には例外なく体表に繊毛域を有する。体内には数個から数十個の細胞があり、これらから新個体が形成される。

 中生動物という語はかつては体系だった分類学上の一群ではなく、体制が簡単で個体の発生過程における桑実(そうじつ)期または中実胞胚(ちゅうじつほうはい)期に相当するような動物群のことであった。ところが、その後の研究によりその大部分はほかの動物群中に編入されるようになってしまった。たとえば、AmoebophryaNeresheimeriaHaplozoon渦鞭毛虫類(うずべんもうちゅうるい)に、Physemaria有孔虫類に、TreptoplaxXenoturbellaはクラゲ類に、Buddenbrockiaは退化した線虫類として扱われ、原生動物と後生動物とを結ぶという厳密な意味での中生動物は、板生動物のTrichoplax(センモウアメーバヒラムシ)だけといわれている。

[鈴木 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中生動物」の意味・わかりやすい解説

中生動物
ちゅうせいどうぶつ
Mesozoa

原生動物後生動物の中間の体制をもった一動物群で,P.ベネデン (ベルギーの動物学者) が 1876年に動物界の1門として設けた。体は体表と体内部との2種の細胞群に分化するのみで,細胞が結合して組織を構成することはなく,後生動物の卵発生中にみられる桑実胚またはプラヌラに似ている。菱形目と直遊目とに分けられ,世界で約 30種ほどが知られているが,日本では直遊目の種類は発見されていない。形態や生活史からみて吸虫類のような動物が寄生生活のために退化した動物であろうと考えられており,他日この動物門は消滅するかもしれない。

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百科事典マイペディア 「中生動物」の意味・わかりやすい解説

中生動物【ちゅうせいどうぶつ】

無脊椎動物の一門。原生動物と後生動物とをつなぐ動物群と考えられたのでこの名があるが,現在では後生動物が寄生生活へ転じることによって退化したものとされる。系統関係は不明で,生活史や形態から吸虫類,ユムシ類あるいは腔腸動物に由来するなどの説がある。体表は繊毛でおおわれた1層の体皮細胞で包まれ,内部には遊離細胞がある。タコやイカの腎臓,ゴカイや二枚貝等に寄生する。菱形(りょうけい)類と直泳(ちょくえい)類に大別され,最近では,両者を独立の門とする考え方もある。前者にはニハイチュウ類とコノキエマ類が含まれる。

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