水亜鉛銅鉱(読み)すいあえんどうこう(英語表記)aurichalcite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水亜鉛銅鉱」の意味・わかりやすい解説

水亜鉛銅鉱
すいあえんどうこう
aurichalcite

亜鉛および銅の含水炭酸塩。両方とも必須成分。ちなみに銅を欠き亜鉛のみのものは、水亜鉛土という別鉱物で、異なった対称(単斜)をもつ。亜鉛:銅は75:25から60:40程度の幅がある。自形b軸方向に扁平(へんぺい)、a軸方向に伸びた葉片状をなし、これがほぼ平行に集合して皮膜状をなす。

 顕微鏡的な黄銅鉱の微粒を含む閃(せん)亜鉛鉱の分解物として生成される場合は、初生鉱物と直接共存するが、多くの産地では、くじゃく石と菱(りょう)亜鉛鉱の生成共存という条件下で、二次鉱物を母鉱物として生成されている。日本では山口県美祢(みね)郡美東(みとう)町(現、美祢市)喜多平(きたひら)鉱山閉山)、岐阜県飛騨(ひだ)市神岡鉱山(閉山)など接触交代型(スカルン型)銅・亜鉛・鉛鉱床の酸化帯から産した。

 共存鉱物は亜鉛くじゃく石、菱亜鉛鉱、異極鉱、水亜鉛土、くじゃく石、赤銅鉱方解石、閃亜鉛鉱、黄銅鉱、石英など。同定は淡青緑色の色調、非常に低い硬度、絹糸~真珠光沢、二方向の劈開(へきかい)、酸での発泡、亜鉛あるいは銅の二次鉱物との共存などによる。英名黄金色の銅を意味するラテン語に由来し、これをそのまま精錬すると、銅と亜鉛の合金で黄金色の真鍮(しんちゅう)が得られることにより命名された。

加藤 昭 2017年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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