水島三一郎(読み)ミズシマサンイチロウ

デジタル大辞泉 「水島三一郎」の意味・読み・例文・類語

みずしま‐さんいちろう〔みづしまサンイチラウ〕【水島三一郎】

[1899~1983]化学者。東京の生まれ。東大教授デバイ双極子理論実験によって立証。さらに双極子モーメントなどを研究し、分子内回転を中心とする構造化学確立文化勲章受章。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水島三一郎」の意味・わかりやすい解説

水島三一郎
みずしまさんいちろう
(1899―1983)

物理化学者。明治32年3月21日東京に生まれる。東京帝国大学理学部化学科卒業(1923)。同大学助教授を経て1938年(昭和13)教授となり、1959年(昭和34)退官後名誉教授。その間、ライプツィヒ大学留学(1929~1930)、コーネル大学、ノートルダム大学講師(1951)、八幡(やはた)製鉄(現、日本製鉄)基礎研究所初代所長(1959~1969)、同名誉所長(1969~1973)、アメリカ学士院名誉会員、日本学士院会員。構造化学研究の草分けとして、手作りの発振回路装置で物質誘電率を測定し、電波の吸収をみいだし、デバイの双極子理論の実験的立証(1926)となる研究を行い、さらに双極子能率、赤外線吸収、電子線回折の手法を駆使して「回転異性体」の発見およびその理論を明示(1934~1941)し、タンパク質の構造研究(1947~1959)に貢献した。学士院賞受賞(1938)、文化勲章受章(1961)、勲一等受章(1970)。おもな著書は『Structure of Molecules and Internal Rotation』(1954, Academic Press, New York)など。

[岩田敦子]

『水島三一郎他著『化学者の日誌』(学生社・科学随筆文庫)』『水島三一郎著『物質とはなにか』(講談社・ブルーバックス)』

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20世紀日本人名事典 「水島三一郎」の解説

水島 三一郎
ミズシマ サンイチロウ

昭和期の物理化学者 東京大学名誉教授。



生年
明治32(1899)年3月21日

没年
昭和58(1983)年8月3日

出生地
東京市日本橋区(現・東京都中央区)

学歴〔年〕
東京帝大理学部化学科〔大正12年〕卒

主な受賞名〔年〕
桜井賞(日本化学会)〔昭和4年〕,帝国学士院賞〔昭和13年〕,文化勲章〔昭和36年〕,勲一等瑞宝章〔昭和45年〕

経歴
金襖問屋増見屋の9代目水島三右衛門良房の長男に生まれる。昭和2年東京帝大助教授を経て13年教授に就任。20年同幅射線化学研究所長。34年定年退官後、八幡製鉄東京研究所長。分子構造論の先駆者として世界的に知られる物理化学者で、分子構造や構造化学の研究で13年に学士院賞、36年には文化勲章を受けた。同年、湯川秀樹博士に次ぐローマ法王庁科学アカデミー会員、38年学士院会員になった。著書に「量子化学」「電波と物質」「分子構造と内部廻転」(英文)「物質とは何か」、随筆東海道中膝栗毛・科学閑想曲」など。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水島三一郎」の意味・わかりやすい解説

水島三一郎
みずしまさんいちろう

[生]1899.3.21. 東京
[没]1983.8.3. 東京
化学者。回転異性体ゴーシュ形の発見者。東京帝国大学卒業 (1923) 。同大学助教授 (27) ,同教授 (38) ,欧米諸大学客員教授,国際純正・応用化学連合理事,およびバチカン市国学士院会員 (61) 。電波,赤外線,ラマン効果,量子化学,統計力学の理論による分子構造,特に内部回転に関する研究などがある。「有機化合物の双極子説の実験的証明及び之と分子構造との関係に就ての研究」によって,1938年帝国学士院賞,61年文化勲章を受けた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「水島三一郎」の解説

水島三一郎 みずしま-さんいちろう

1899-1983 昭和時代の物理化学者。
明治32年3月21日生まれ。昭和13年母校東京帝大の教授,20年同大輻射(ふくしゃ)線化学研究所長。構造化学の研究で知られ,双極子説の実験的証明と分子構造の研究で,13年学士院賞。36年文化勲章。昭和58年8月3日死去。84歳。東京出身。著作に「物質とはなにか」など。

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367日誕生日大事典 「水島三一郎」の解説

水島 三一郎 (みずしま さんいちろう)

生年月日:1899年3月21日
昭和時代の物理化学者。東京大学教授
1983年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の水島三一郎の言及

【化学】より

…ファント・ホフが予想できなかった単結合のまわりの束縛回転の結果生じる立体異性(アトロプ異性)は,1920年代の初めにケナーらによって見いだされた。単結合のまわりの自由回転の問題は,その後水島三一郎(1899‐1983),ピッツァーKenneth Sanborn Pitzer(1919‐ )らによって物理化学的な側面からも追求され,エタン誘導体だけではなくシクロヘキサン環の立体化学に深いかかわりがあることがわかってきた。J.F.W.A.vonバイヤーは張力説(1885)をたて,シクロヘキサンを平面分子と考えていた。…

※「水島三一郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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