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水葬 すいそうwater burial

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

水葬
すいそう
water burial

人の後,死体を海や川に流す葬法。水を不死に結びつける考え方は多くの神話において,死者が復活を約して出帆する物語に見出すことができる。7~8世紀のアイスランドからイギリスにかけては舟とともに埋する習慣がみられ,イギリス,サフォークのサットンフーの墳墓がよく知られている。ポリネシアでは死体を丸木舟に載せて沖に沈めた。棺を舟形にし,あるいは舟に載せて海に流す舟葬の習俗は,ミクロネシアからフィリピン,ボルネオなど広くインドネシア諸地域に見出せる。この葬法は,海上のはてに死者の国があるとする海上他界観念と結合している。この信仰と死者の霊魂を運ぶ鳥の信仰が結合したものが鳥舟信仰である。舟を用いない水葬もあり,ソロモン諸島では死体は礁に放置される。チベットでは,疫病による死者や子を産めなかった女は死後邪悪な亡霊として人間界に戻ると考えられ,厄災を防ぐため,死体を皮袋に包んで水葬にする。遺骨を水にまく行為も,アジアを中心にみられる。インドでは,死体を火葬にしたうえ骨灰を聖なるガンジス川に流すことも行なわれる。そのほか,航海中の死者を海中に葬る水葬礼がある。(→葬制

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デジタル大辞泉の解説

すい‐そう〔‐サウ〕【水葬】

[名](スル)遺体を川や海などに投じてほうむること。「母なる川に水葬する」「水葬礼」

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世界大百科事典 第2版の解説

すいそう【水葬】

死体を海または陸水中に流し,あるいは沈める葬法。メラネシアの諸民族やアメリカ・インディアンのあいだで散発的に見られる。例えばビズマーク諸島では,生前とりわけ人々に愛されていた人の遺体は舟に乗せられて沖合に運ばれ,そこで舟もろとも海中に沈められた。チェロキー・インディアンは死体を近くの川に流していた。このほか特殊な場合として,チベット人のあいだでは罪人を患っていた人あるいは妊娠中の女性の遺体を川に投げ捨てることが行われている。

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大辞林 第三版の解説

すいそう【水葬】

( 名 ) スル
水中に遺体を投じて葬ること。水葬礼。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

水葬
すいそう

死体を処理する方法の一つ。死体を水中に役げ込んで水の流れにのせて流し去ったり、魚がその肉を食べてしまうのにゆだねる。北西部アメリカやメラネシアなどでは、この葬法はおもに奴隷や身分の低い者に対して行った。メラネシア島嶼(とうしょ)部では、水葬することにより死者は海獣に再生すると考えられている。チベットでは子を生めない女性の死者や悪い病気による死者を皮袋に包んで水に投じ、邪気を祓(はら)う。インドでは火葬の骨灰を聖なるガンジス川にまく。海などに死体放棄をするやり方の水葬よりも整った形式をもつのが舟葬であり、死体を舟に乗せて海へ送り出す。舟葬が海洋民族にみられるのは、自然環境からいっても当然のことである。太平洋では、ポリネシア諸島民の間で盛んであり、ミクロネシア、メラネシアにも及ぶ。古代ゲルマンの海洋民族では、舟にはさらに火がつけられ、水葬と火葬が結び付いていた。舟葬のかわりに舟や舟形の棺に死者を入れて埋葬する形式もあり、舟葬の痕跡(こんせき)を残すものといえる。
 日本では、かつて室町時代に疫病の死者を京都の賀茂(かも)川に流したとか、鳥取県はわい温泉の東郷池に、火葬の骨や灰を投げ込む風習があったと伝えられている。また、日本では今日でも、棺のことを一般にフネとよんだり、入棺のことをオフネイリとよんだりするし、また志摩半島では棺のことをノリフネといい、常陸(ひたち)の海辺では葬儀の世話役のことをフナウドというなど、舟葬の痕跡を物語ると思われる材料がいくつか残っている。[清水 純]

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世界大百科事典内の水葬の言及

【死】より

…(1)死亡届 人が死亡した場合には,届出義務者(親族,その他の同居者,家主など)がその事実を知った日から7日以内に,診断書または検案書を添付して,死亡地の市区町村長に届け出なければならない(戸籍法86~93条)。(2)埋葬,火葬,水葬 死体の葬り方は国により文化によってさまざまである(遺灰を川に流す国,鳥葬が行われている国など)。日本では,〈墓地,埋葬等に関する法律〉(1948)によって,埋葬(土葬をいう),火葬を原則とし,特別な場合として,船員法15条で船舶の乗員の水葬が認められている。…

【チベット族】より

…葬礼は,ダライ・ラマやパンチェン・ラマの場合,ミイラ化してまつられるが,高位の僧は火葬,一般の人々,下位の僧は鳥葬(チャトル)される。水葬は罪人に,土葬は疫病死者に限られた。鳥葬は死者に捨身供養により善業を積ませる意義づけもあった。…

【補陀落渡海】より

…そして熊野では,江戸時代には那智浜ノ宮の補陀落寺住持は,臨終が迫ると船に乗せられて海上に放たれ,補陀落渡海させられたという。これは中世までは補陀落渡海の希望者のみが補陀落寺の住持となって,渡海のための修行をしたのであるが,近世には渡海の希望者がなくなったために,水葬に変化したものである。しかし伝承では,水葬の棺を沈めたのは那智沖の山成島の岩礁であったという。…

※「水葬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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