江上波夫(読み)エガミナミオ

デジタル大辞泉 「江上波夫」の意味・読み・例文・類語

えがみ‐なみお〔‐なみを〕【江上波夫】

[1906~2002]考古学者・東洋史学者。山口の生まれ。東大教授・上智大教授・古代オリエント博物館館長。アジア民族・文化形成史、東西文化交渉史を研究。日本国家の起源について、騎馬民族説を唱える。著作に「騎馬民族国家」「ユウラシア古代北方文化」など。平成3年(1991)文化勲章受章

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20世紀日本人名事典 「江上波夫」の解説

江上 波夫
エガミ ナミオ

昭和・平成期の考古学者 古代オリエント博物館館長;東京大学名誉教授。



生年
明治39(1906)年11月6日

没年
平成14(2002)年11月11日

出生地
山口県下関市

出身地
東京

別名
号=幻人

学歴〔年〕
東京帝国大学文学部東洋史学科〔昭和5年〕卒

主な受賞名〔年〕
毎日出版文化賞〔昭和43年〕「騎馬民族国家」,紫綬褒章〔昭和44年〕,勲三等旭日中綬章〔昭和52年〕,文化功労者〔昭和58年〕,文化勲章〔平成3年〕,モンゴル北極星勲章〔平成4年〕

経歴
東亜考古学北支留学生として北京に留学。帰国後、東方文化学院(のちの東京大学東洋文化研究所)研究員を経て、昭和23年東京大学東洋文化研究所教授。42年退官後、46年上智大学教授、53年古代オリエント博物館長となる。専攻は匈奴文化、東西文化交渉史だが、日本の国家形成について23年「騎馬民族征服説」を発表、学会波紋を投げかけた。55年には水中考古学を提唱、水中文化財の発見・所在の確認を行う。57年日本オリエント学会会長、59年日本水中考古学会会長、第12期学術会議会員など歴任。平成2年アジア史学会設立と同時に会長。「アジア民族と文化の形成」「騎馬民族国家」「江上波夫著作集」(全12巻)など専門の著作のほか、幻人と号し詩集「幻人詩抄」がある。昭和58年文化功労者。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「江上波夫」の意味・わかりやすい解説

江上波夫
えがみなみお

[生]1906.11.6. 山口
[没]2002.11.11. 神奈川
東洋史学者,考古学者。 1930年東京帝国大学東洋史学科を卒業と同時に東亜考古学会の留学生となって北京に渡り,水野清一らとともに長城地帯をはじめ各地の調査研究を行なった。 1931年東方文化学院 (のちの東京大学東洋文化研究所) 研究員,1948年東京大学教授。この間も内モンゴルへの踏査旅行をするなどして,騎馬民族諸集団の実態に関する研究を深め,『蒙古高原横断記』 (1937) ,『蒙古高原──錫林郭爾,烏蘭察布に於ける地質・古生物,人類の調査』 (1943) ,『ユウラシア古代北方文化』 (1948) などの著作を発表した。さらに 1948年には,日本人および国家の形成を世界史的な観点からとらえ直そうという騎馬民族征服説の構想を打ち出し,その後 10年余をかけて 1964年『日本における民族の形成と国家の起源』にまとめた。 1967年の退官後は札幌大学教授,上智大学教授,古代オリエント博物館館長,日本考古学協会会長,さらに 1972年市民との連合による「東アジアの古代文化を考える会」会長などを歴任。一般の日本人に固定観念にとらわれない歴史観を提供することに努め,『騎馬民族国家』を発表したほか,幻人の筆名で詩集『幻人詩抄』 (1975) も上梓している。生化学者江上不二夫は実弟。 1983年文化功労者。 1991年文化勲章を受章。 1992年モンゴル政府より北極星勲章を授与される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「江上波夫」の意味・わかりやすい解説

江上波夫
えがみなみお
(1906―2002)

考古学者、東洋史学者。山口県生まれ。1930年(昭和5)東京帝国大学文学部東洋史学科を卒業し、東亜考古学会留学生として北京(ペキン)へ派遣され、1931年東方文化学院研究員、1935年内蒙古(うちもうこ)(内モンゴル)を横断踏査し遊牧民系騎馬集団の生活と文化の理解を深めた。1937年『蒙古高原横断記』を発表、1948年東京大学東洋文化研究所教授、1956年東京大学イラン・イラク遺跡調査団長を務め、1958年共著『日本民族の起源』、1964年『日本における民族の形成と国家の起源』、1967年『騎馬民族国家』を発表し、騎馬民族日本征服説を唱えた。1962年東京大学東洋文化研究所長、1967年同名誉教授、のちに札幌大学教授、上智大学教授、日本考古学協会委員長、東アジアの古代を考える会会長、古代オリエント博物館長、日本オリエント学会会長などを歴任。1983年文化功労者、1991年(平成3)文化勲章を受章。著書に『日本古代文化の成立』『江上波夫著作集』、詩集『幻人詩抄』など。

[編集部]

『『江上波夫著作集』全12巻・別巻(1984~86・平凡社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「江上波夫」の解説

江上波夫 えがみ-なみお

1906-2002 昭和-平成時代の考古学者,東洋史学者。
明治39年11月6日山口県に生まれ,5歳から東京で育つ。生化学者・江上不二夫の兄。昭和23年東大東洋文化研究所教授。24年「日本民族―文化の源流と日本国家の形成」で騎馬民族による日本征服王朝説をとなえた。31年から東大イラン・イラク遺跡調査団長をつとめる。のち上智大教授などを歴任し,54年古代オリエント博物館長。平成3年文化勲章。平成14年11月11日死去。96歳。東京帝大卒。著作に「騎馬民族国家」(毎日出版文化賞),「ユーラシア古代北方文化」など。

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百科事典マイペディア 「江上波夫」の意味・わかりやすい解説

江上波夫【えがみなみお】

考古学者,東洋史学者。山口県生れ。東大卒。東大教授などを歴任。北方ユーラシア,西アジアなど各地の考古学的調査により,大和朝廷は騎馬民族による征服王朝だとする騎馬民族日本征服説を主唱。主著《ユーラシア古代北方文化》,《江上波夫著作集》全13巻がある。1991年文化勲章。
→関連項目騎馬民族説

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367日誕生日大事典 「江上波夫」の解説

江上 波夫 (えがみ なみお)

生年月日:1906年11月6日
昭和時代;平成時代の考古学者
2002年没

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世界大百科事典(旧版)内の江上波夫の言及

【王朝交替論】より

…かつて津田左右吉が,《古事記》《日本書紀》には,仲哀天皇と応神天皇の間で一つの段落があり,仲哀以前は天皇の系譜が父子相承となっていたり,天皇の称号だけで諱(いみな)を欠いているなど,実在性に乏しく,6世紀の帝紀(ていき)に記されていたのは,応神より後の天皇であろうとしたことにはじまる。その後,林屋友次郎によって,〈応神新王朝論〉が説かれ,応神以前の天皇は存在しないとされ,水野祐は,仲哀以前を〈古王朝〉,応神以後を〈中王朝〉とし,邪馬台国と戦った狗奴国が東遷して,この〈中王朝〉を形成したと考え,いわば江上波夫が,大和の王朝を騎馬民族の征服によって生まれたとした騎馬民族説をさらに進め,〈ネオ騎馬民族説〉とでもいうべきものを主張した。他方で,〈古王朝〉は大和三輪にあり,〈中王朝〉は河内に成立し,河内王朝が三輪王朝を征服したという説もあらわれた。…

【オロン・スム】より

…1929年,ヘディン西北科学考査団の黄文弼(こうぶんひつ)によって元碑のあることが発見された。その後,江上波夫はここに十字架のある景教徒の墓石を発見し,35‐41年に3度の調査を行った。長方形の外城(南北約570m,東西約960m)とほぼ方形の内城(南北約280m,東西約290m)からなり,内城の東区内中央に宮殿址がある。…

【騎馬民族】より

…この対外活動は遊牧騎馬民族間のものもあったが,また南方の農耕地帯にも多く行われ,この地帯に対する略奪および征服活動は,その後ながい間にわたって世界の歴史を激動させ,展開させることに重要な役割を果たした。 ところで江上波夫は,以上の遊牧騎馬民族のほかに,北東アジアの農主牧副民系または半農半猟民系の騎馬民族として,夫余,高句麗,靺鞨(まつかつ),渤海(ぼつかい),女真,満州などをあげている。そして夫余や高句麗と関係ある北東アジア系の騎馬民族が,まず南朝鮮を支配し,やがてそれが弁韓(任那)を基地として北九州に侵入し,さらには畿内に進出して大和朝廷を樹立し,日本における最初の統一国家を実現した。…

【テル・サラサート】より

…イラク北部のモースルの西51kmにあって,メソポタミアにおける土器の初現期に始まる遺跡。江上波夫を団長とする東京大学イラク・イラン遺跡調査団が,日本人として西アジアで初めて発掘を行った記念すべき遺跡である。1956,57,64,65年の4次にわたって発掘を行い,さらに76年に東京大学イラン・イラク学術調査団が深井晋司団長のもとで第5次の発掘を行った。…

※「江上波夫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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