油単(読み)ユタン

デジタル大辞泉 「油単」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐たん【油単】

ひとえの布や紙に油をしみ込ませたもの。湿気や汚れを防ぐため、調度器物覆いまたは敷物風呂敷などに用いた。
たんす・長持ながもちなどを覆う布。ふつう、木綿で作られ、定紋唐草などを染め出したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「油単」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐たん【油単】

〘名〙
① ひとえの布や紙などに油をしみ込ませたもの。湿気を防ぐために、唐櫃(からびつ)長持(ながもち)などの調度や、槍・笛などの器具のおおいにしたもの。また、灯明台(とうみょうだい)の敷物などにも用いられた。
※延喜式(927)七「韓竈一具 納以明櫃、置於大案、覆以緋油単、夫六人」
② 油紙や布で作った風呂敷。多く、旅行用具として衣類を包んだり、雨雪を防いだり、防寒具の代用としたりした。
浮世草子・好色万金丹(1694)四「髪は剃らねど身は風雲の僧より軽く、〈略〉油箪(ユタン)一つを菌(しとね)にして、山にも登る里にも降る」
箪笥(たんす)や長持などにおおいかぶせる布。近世以後、多く用いられた。ふつう、木綿でつくられ、萌葱(もえぎ)色、浅葱色、紺色などに家紋を入れたり、唐草、松竹梅などの模様を染め出したりした。
※雑俳・柳多留‐五(1770)「下女か荷もゆたんをかけて数に入」
※浮世草子・沖津白波(1702)四「よしある人のぬけ参りとみへて爪端きよげなる振袖、下女に油単(ユタン)脇懸(わいかけ)をさせ」

ゆ‐た【油単】

※宇津保(970‐999頃)吹上上「男に、ゆたおほひたる台据ゑたる行器(ほかゐ)持たせて」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「油単」の意味・わかりやすい解説

油単
ゆたん

器物にかけて、湿気や汚れを防ぐ布製の覆い。もとは雨にぬれるのを防ぐために、単(ひとえ)の布の覆いに油を引いて製したものであったため、この名でよばれている。唐櫃(からびつ)、長持、たんすなどにかけられる油を引いていないものも油単といわれ、紺色、萌黄(もえぎ)色、浅葱(あさぎ)色などの地色に定紋や松竹梅、唐草などの文様を白で表した染物が多く使われた。また、輿(こし)や牛車(ぎっしゃ)などに用いられ、雨水を防ぐ雨皮(あまかわ)といわれる覆いも油単に類するものである。

[高田倭男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「油単」の意味・わかりやすい解説

油単
ゆたん

箪笥,長持などの諸道具のおおいに用いる萌黄唐草の布で,定紋などを染め抜いたもの。平安時代には室内で器物の下に敷いた油引きの一重の布帛や,紙の敷物のことを油単と称した。塵やよごれよけ,日よけ,装飾を兼ねて,箪笥のおおいに使われている。のちに旅行用の雨具,風呂敷としても用いた。

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普及版 字通 「油単」の読み・字形・画数・意味

【油単】ゆたん

油ひきの物。

字通「油」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の油単の言及

【油紙】より

…桐油(とうゆ)紙ともいい,西の内紙,美濃紙など厚手の純日本紙に,まずカキ渋を塗って乾燥し,その上に桐油または荏油(えのあぶら)を何回も塗って乾燥したじょうぶな防水紙。これを表にして裏に薄布を合わせた防水衣を桐油合羽(とうゆがつぱ)と名づけて古くから外出着に用い,ただ厚紙のみのものは油単(ゆたん)と呼ばれて荷物の雨覆いに用い,雨傘には必ず用いられた。また雨よけの障子に張って油障子と呼び,現に歌舞伎の舞台に見る《吉例寿曾我》対面場のしとみ障子,《鬼一法眼三略巻》菊畑の花壇の覆いなどがそれである。…

【雨具】より

…また白絹に油を引いた雨衣(あまぎぬ)は,中世の貴族たちが装束の上から着け,修験者は油紙製の雨皮(あまかわ)を用いた。雨皮は油単(ゆたん)とも呼ばれ,牛車や輿にも掛けられた。16世紀にポルトガルからカパが入り,ラシャ,木綿の合羽や和紙に桐油を塗った紙合羽が用いられた。…

※「油単」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」