法三章(読み)ホウサンショウ(その他表記)Fǎ sān zhāng

デジタル大辞泉 「法三章」の意味・読み・例文・類語

ほう‐さんしょう〔ハフサンシヤウ〕【法三章】

《「史記高祖本紀から》高祖を滅ぼした後、秦の始皇帝の定めた厳しい法律を廃し、殺人傷害窃盗だけを罰するとした3か条の法律。転じて、法律を簡略でゆるやかなものとし、法治万能主義を排すること。

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精選版 日本国語大辞典 「法三章」の意味・読み・例文・類語

ほう‐さんしょうハフサンシャウ【法三章】

  1. 〘 名詞 〙 ( 中国、漢の高祖の故事から ) 殺人・傷害・盗みだけを処罰するという三章の法。転じて、法律がきわめて簡略なこと。
    1. [初出の実例]「高祖関中に入て秦の苛法を去。法三章を立」(出典:滑稽本・風来六部集(1780)飛だ噂の評)
    2. [その他の文献]〔史記‐高祖紀〕

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改訂新版 世界大百科事典 「法三章」の意味・わかりやすい解説

法三章 (ほうさんしょう)
Fǎ sān zhāng

中国,漢の高祖劉邦)が秦を下したとき(前206)に定めた規約。すなわち〈人を殺す者は死刑,人を傷つけおよび盗む者はそれぞれ処罰する〉とし,他の秦の煩瑣な法律はすべて廃止して人心を収攬した。しかしこれは反秦の将軍劉邦が関中父老に対して発布した約束軍令の類)であって,これのみでは姦悪な行為を防止できず国家統治の法として十分でなかったため,漢初に丞相蕭何(しようか)は秦の法の中から時勢にかなったものを選んで九章律をつくったといわれる。
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故事成語を知る辞典 「法三章」の解説

法三章

法律がとても簡単で、むやみに人々を罰しようとしない政治のたとえ。

[使用例] 昔の奉行は、いまの警視総監よりもさらに権力が強く、法三章な概念裁判を片付けていったものらしい[野村胡堂江戸の昔を偲ぶ|1955]

[由来] 「史記―高祖紀」に出て来るエピソードから。紀元前三世紀の終わりの中国、しん王朝が滅亡する際のこと。その都を攻め落とした武将りゅうほうは、繁雑で人々を苦しめていた秦の法律を廃止して、殺人と傷害と窃盗を処罰するだけの「法は三章のみ(法律は、三つの条文だけだ)」としたので、人々に感謝されたということです。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法三章」の意味・わかりやすい解説

法三章
ほうさんしょう

法律がきわめて簡略なことのたとえ。「法三章のみ」ともいい、法律をくだくだしく制定せずに、たったの三か条にするとの意。中国、漢の高祖が秦(しん)の軍を破って関中を平定した際、住民を集めて、秦の苛烈(かれつ)な法を改め、殺人は死罪、傷害と盗みはその罪の軽重に応じて処罰する三か条だけにすると約束し、人々が大喜びした、と伝える『史記』「高祖」の故事による。

[田所義行]

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