日本大百科全書(ニッポニカ) 「法定鉱物」の意味・わかりやすい解説
法定鉱物
ほうていこうぶつ
鉱業法の適用を受ける鉱物で、鉱業法適用鉱物ともいう。鉱業法は、鉱物資源の合理的開発によって公共の福祉増進へ寄与することを目的として定められている。そのために、鉱物資源の保護と有効活用を規範として、その開発の法的規制が必要となる。その対象となる鉱物が法定鉱物として、以下41種が規定されている(鉱業法第3条1項)。金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、蒼鉛(そうえん)鉱、スズ鉱、アンチモン鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クロム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ヒ鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、リン鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスファルト、可燃性天然ガス、硫黄(いおう)、石膏(せっこう)、重晶石、明礬(みょうばん)石、蛍石(ほたるいし)、石綿、石灰石、ドロマイト、珪石(けいせき)、長石、ろう石、滑石、耐火粘土(ゼーゲルコーン番号31以上の耐火度を有するものに限る)および砂鉱(砂金、砂鉄、砂スズその他沖積(ちゅうせき)鉱床をなす金属鉱をいう)。また、これらの鉱物を掘採・取得する権利(鉱業権)も鉱業法に定められている。探査・開発をするためには、法的に鉱区設定を申請し、国の承認を要する。また、鉱物資源を探査・発見しても、これらをただちに掘採することはできない。鉱業法の適用を受け、採掘が認められる鉱物は、法定鉱物でも経済価値のあるものに限られる。経済価値は、品位、埋蔵量、選鉱、製錬、運搬、採掘などの難易、需要、価格などの総合的見地から定められる。また、公害等調整委員会において、鉱物を掘採することが一般的に公益に反するかまたは農業、林業もしくはその他の産業と対比して適当でないとされたときは、鉱物資源が存在しても掘採することができない(鉱業法第15条)。鉱業権者には、鉱区税納付の義務が課せられる。また、これらの鉱物の廃鉱または鉱滓(こうさい)(スラグ)も、その中に法定鉱物を含む限りは鉱業法の適用を受ける。また、法定鉱物以外の鉱物の採掘は、その土地の所有権者に任されている。ただし、ベントナイト、雲母、酸性白土、珪藻土、陶石などの非金属資源は、石材や砕石と同様に砕石法の適用を受ける。
[金田博彰]