裁判の審理・判決において裁判所のしなければならないおもなことは、事実の認定と法規の解釈・適用である。この両者を行う審級を事実審といい、法規の解釈・適用を主として行う審級を法律審という。審級制をとる場合は、まず事実審が先に置かれ、その後に法律審が置かれる。
[本間義信]
民事訴訟では、第一審、控訴審および抗告審は事実審であって、上告審および再抗告審は法律審である。裁判の事実認定は事実審の専権であって、上告裁判所は原審(事実審)の適法に確定した事実に拘束されるのが原則である(民事訴訟法321条1項。このゆえに、判決の既判力も事実審の最終口頭弁論終結時を基準とする)。したがって、上告理由となりうるのは、原判決に憲法の解釈の誤りがあること、その他憲法の違反があること(同法312条1項)、その他の特定の事由のあること(同法同条2項)、または判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違反があること(高等裁判所へ上告する場合のみ、同法同条3項)であって、事実認定の誤りは上告理由たりえない(したがって、上告審では原則として口頭弁論を開かず、新たな事実や証拠の提出も許されない)。
[本間義信]
刑事訴訟では、上告審が法律審である。ただ上告理由として、原判決に憲法違反または憲法の解釈に誤りがあること、判例違反があることがあげられるが(刑事訴訟法405条)、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があることが原判決破棄の理由とされていることからして、例外的に事実判断を行う法律審といえよう。
[本間義信]
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…裁判が当事者の権利義務を決定するという重大な課題を担うことから,訴訟法は,審級の異なる裁判所が3度にわたって審理を重ねる三審制度を設けて判決の適正を期している。各審級間の合理的職務分担を図るため,第一審・控訴審(第二審)を事実と法律の両面から事件を審理する事実審とし,上告審(第三審)を法律面に限って審理を行う法律審としている(控訴審と上告審をあわせて上訴審という)。そこで,事実の認定(事実問題)は控訴審かぎりで決着をつけることとし,上告審は法令違反(法律問題)を中心に審理をすることにすれば,単一または少数の裁判所が法的基準の最終的決定の任務を集中的に引き受けることになって,法令解釈の統一に資する。…
…そこで,上訴という機会を通じて,上級の(最終的には国内唯一の)裁判所が下級裁判所の判断を審査し,統一する制度が生み出される。 以上のような上訴制度の役割は,今日においても存在するが,大まかに見れば,第1の誤判救済の役割は,事実審への上訴である控訴により強く表れ,第2の裁判の統制の役割は,法律審(しかも,しばしば最高の裁判所)への上訴である上告により強く表れているといえよう。
[上訴制度の沿革]
ローマ法にもすでに上訴制度があったように,統治機構がある程度発達し,階層的な裁判所制度が成立しうるところでは,上訴の制度は古くから広く存在し,現代に至っている。…
※「法律審」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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