法輪(読み)ほうりん

精選版 日本国語大辞典 「法輪」の意味・読み・例文・類語

ほう‐りん ホフ‥【法輪】

[1] 〘名〙 (dharma-cakra の訳。「輪」はインド古代の武器で、仏の説く正法が邪見を破り悪をくじいて、世に広く伝わるのをたとえたもの) 仏語。仏の教法。仏の説法仏法
※勝鬘経義疏(611)十大受章「道器既増即仏法輪恒可転」
今昔(1120頃か)一「我菩提を不得、又法輪を不転ずは、返て父の王と不相見じ」 〔維摩経‐上〕
[2] 「ほうりんじ(法輪寺)(二)」の略。
※今昔(1120頃か)一七「学問の志有ければ、常に法輪に詣て、虚空蔵(ぼさつ)に祈り申けり」

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デジタル大辞泉 「法輪」の意味・読み・例文・類語

ほう‐りん〔ホフ‐〕【法輪】

《〈梵〉dharma-cakraの訳》仏語。仏の教え。仏法が人間迷いや悪を打ち破り追い払うのを、古代インドの戦車のような武器(輪)にたとえていったもの。→転法輪

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改訂新版 世界大百科事典 「法輪」の意味・わかりやすい解説

法輪 (ほうりん)

仏教で,釈迦の説いた教え(法)を車輪にたとえて呼んだもの。後には,法(仏教)もしくは仏(釈迦)そのものの象徴としても用いられるようになった。サンスクリットダルマチャクラDharma-cakraの訳。ダルマは法,またチャクラは車輪もしくは円盤形の武器を意味する。したがって法輪とは,仏の教えが1ヵ所に止まることなく,あらゆる地方のあらゆる人々にゆきわたることを,車輪のどこにでも行く自由な動きにたとえ,また人々の邪見・邪信を砕破するのを,武器としての円盤のはたらきになぞらえたものである。仏が法を説くことを〈転法輪(てんぼうりん)〉,とくに成道(じようどう)後最初の説法を〈初転法輪(しよてんぼうりん)〉というが,これも教えを説くことを車輪を転がすことになぞらえた言い方である。また,仏の偉大な特徴を表す〈三十二相〉の中の一つ,〈千輻輪相(せんぷくりんそう)〉(足の裏もしくは掌にあるという車輪形文様)も,仏の偉大なはたらきである説法(転法輪)を象徴するもの(法輪)とみることもできよう。仏像出現以前の古い彫刻では,仏のあるべき位置にしばしば輪形(あるいは聖樹など)が刻まれているが,これは仏(釈迦)を法輪(もしくは聖樹など)によって象徴的に表現したものである。また,サールナート出土のアショーカ王石柱の柱頭部分には,獅子足下の所にみごとな法輪が刻まれており,このデザイン現代のインド国旗にも,その中央部にそのまま採り入れられ描かれている。
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百科事典マイペディア 「法輪」の意味・わかりやすい解説

法輪【ほうりん】

釈迦の説いた法が人間の迷いや悪を打ち破り,駆逐するさまを,転輪聖王(全インドを統一するとされる伝説上の王)の宝輪にたとえ,舵輪(だりん)状のしるしで表現したもの。(まんじ)とともに仏教の象徴として用いられ,インド国旗の中央の図柄もこれ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法輪」の意味・わかりやすい解説

法輪
ほうりん

転法輪」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の法輪の言及

【車】より

… 仏典やジャイナ経典で高い位置を占めるインドの転輪王(チャクラバルティラージャ)は,この世界を統治する大帝王であり,仏教圏では,車輪は輪廻転生する人間の苦の世界を表したり,そこから解脱(げだつ)する道を示すときに用いた。釈迦の最初の説法は初転法輪と呼ばれ,初期には釈迦の像の代りに法輪が使われた。円形の図形である曼荼羅ともかかわり,東洋では車は最終的に解脱,完成,到達を示す象徴である。…

※「法輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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