泣いて馬謖を斬る(読み)ないてばしょくをきる

故事成語を知る辞典「泣いて馬謖を斬る」の解説

泣いて馬謖を斬る

規律を保つため、個人的な思い入れは捨てて、違反をきちんと処罰することのたとえ。

[使用例] 本来ならば、泣いて馬謖を斬るべきところであるが、それではまた、あまりに芝居が過ぎるとの非難もあろう[岸田国士*戯曲二十五篇を読まされた話|1926]

[使用例] その同級生等が〈略〉「泣いて馬謖を斬る」とか云い出したのを聞いて[石坂洋次郎*若い人|1933~37]

[由来] 「三国志しょく書・しょかつりょう伝、馬謖伝」が伝える話から。二二八年、三国時代の中国でのこと。蜀という国の宰相、諸葛亮(通称は孔明)は、国と決戦するにあたり、腹心部下の馬謖を先陣に抜擢しました。しかし、馬謖は諸葛亮の命令に従わず、自分の判断で軍を進めたため、蜀軍は大敗を喫してしまいます。そこで諸葛亮は、令違反の責任を問い、「謖をりくして以て衆に謝し(馬謖を処刑して他の兵士たちに謝罪し)」、また「これが為になみだを流し(このためにを流し)」たのでした。

[解説] ❶当時の蜀の国力は、魏に比べるとはるかに劣っていました。その差を補うためには、量より質が重要。規律の取れた軍隊は、その根本です。この話からは、弱小国を背負って立つ諸葛亮の苦しい立場を、見て取ることができます。❷表向きは非情ですが、本当は涙を流している。それを逆手にとって、非情な処置を取りたいときに、相手や周囲に怨まれないよう、言い訳のように使うこともできます。❸歴史的な事実にフィクションも交えて作られた「三国志演義」では、この場面に「孔明、涙をふるひて馬謖を斬る」というタイトルを付けています。「涙を揮って馬謖を斬る」の形でもよく使われるのは、ここに由来しています。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「泣いて馬謖を斬る」の解説

泣いて馬謖を斬る
ないてばしょくをきる

私情を捨てて法を守り、綱紀を粛正するために親しく愛する者を処断すること。中国、蜀(しょく)の知将諸葛孔明(しょかつこうめい)は、劉備(りゅうび)の没後その遺詔を奉じて宿敵の魏(ぎ)を討ったが、街亭の戦いで指揮に反して大敗した部将の馬謖を、その輝かしい過去の戦功と親交にもかかわらず、泣き泣き斬罪(ざんざい)に処して、一軍へのみせしめとした、と伝える『蜀誌』「馬謖伝」などの故事による。

[田所義行]

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ことわざを知る辞典「泣いて馬謖を斬る」の解説

泣いて馬謖を斬る

私情においては忍びないが、規律を保つためにはたとえかわいがっていた者でも他への見せしめのために処罰する。

[解説] 中国、三国時代、蜀のしょかつこうめいが魏との戦いのおり、腹心の部下の馬謖が命にそむいて大敗したので、軍律違反のかどでやむをえず涙をふるって斬罪に処したという「蜀志―諸葛亮伝」などの故事によることば。

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デジタル大辞泉「泣いて馬謖を斬る」の解説

いて馬謖ばしょく

《中国の三国時代しょく諸葛孔明しょかつこうめいは日ごろ重用していた臣下馬謖が命に従わずに大敗したために、泣いて斬罪に処したという「蜀志」馬謖伝の故事から》規律を保つためには、たとえ愛する者であっても、違反者は厳しく処分することのたとえ。

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とっさの日本語便利帳「泣いて馬謖を斬る」の解説

泣いて馬謖を斬る

魏との戦いで抜擢された馬謖は孔明の命令に背いて大敗を喫した。惜しい才器ではあったが、軍規を厳しく守るため、将兵起用の誤りであったことを謝し、孔明は「涙を揮(ふる)って馬謖を斬る」こととなった。

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