流質（読み）りゅうじち

精選版 日本国語大辞典

りゅう‐じち リウ‥【流質】

〘名〙

① 質流れのこと。ながれじち。

② 債務者が弁済期をすぎても債務を履行しない場合に、債権者が質物の所有権を取得し、または質物を売却してその代金を優先的に弁済にあてること。民法上では禁止されるが、商事債務のための質権、営業質屋・公益質屋の質権については例外的に認められる。

※質屋取締法（明治二八年）（1895）一〇条「質置主は流質期限前は何時たりとも元利金を弁済して」

ながれ‐じち【流質】

〘名〙 受け出すべき期限が過ぎて、質置主の債務不履行のため質権者の所有となった質物。また、その場合の、質物が質権者の所有となること。

※内閣文庫本建武以来追加‐嘉吉元年（1441）「土倉已下流質事 過_二約月_一者、任_レ法可_レ為_二銭主計_一也」

出典　精選版 日本国語大辞典

デジタル大辞泉

りゅう‐しち〔リウ‐〕【流質】

１ 質流れ。ながれじち。
２ 債務不履行の場合に、質権者に質物の所有権を取得させ、または質物を売却してその代金を優先弁済にあてさせること。民法は流質契約を無効とするが、営業質屋・公益質屋については例外として認める。

出典　小学館

日本大百科全書(ニッポニカ)

流質
りゅうしち

質権設定と同時に、または債務の弁済期前における特約によって、債務者が弁済期に債務を履行しないときに債権者に質物の所有権を取得させるか、あるいは質物を売ってその代金を債権の弁済にあてさせること。これは質権者（債権者）にとっては便利な方法であるが、ともすると債務者の窮乏に乗じてわずかな債務のために高価な質物を奪って不当の利をむさぼることを許すことになるので、民法では、流質契約は無効であるとしている（349条）。しかし、このような制限は、譲渡担保の有効性が認められることによって実効性を失っており、立法論としては、債権者が暴利を得る場合にだけ無効とすべきであるという主張や、質権者に清算（質物の価額と債権額との差額の、質権設定者への返還）義務を認めるべきであるという主張がされている。また、この規定の例外が認められる場合が多く、この規定が適用されることは少ない。すなわち、当事者間の自由競争を尊重する商事関係、および少額の金融を目的とする営業質屋については流質契約は有効とされている（商法515条、質屋営業法1条・19条）。なお、禁じられるのは弁済期前の特約だけであり、弁済期以後における同旨の特約は禁止されていない（民法349条の反対の解釈）。

［高橋康之・野澤正充］

[参照項目] | 質権

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

流質
りゅうしち

質権設定契約または債務の弁済期前の契約によって，債務不履行の場合に質権者に弁済に代えて質物の所有権を取得させ，あるいは他に任意に売却して優先弁済にあてさせること。債権者が債務者の窮迫に乗じて高価な物の質入れを強要し，不当な利益をむさぼるおそれがあるので，民法はこれを禁じている (349条) 。しかし，債務の弁済期以後においては，かかる契約は一種の代物弁済であって債務者の窮迫に乗じるおそれもないので，有効である。また，流質特約があっても，無効となるのはその特約だけで，質権設定契約自体の効力には影響しない。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

世界大百科事典（旧版）内の流質の言及

【質権】より

…しかし生産用具としての動産については，そもそも占有移転を要求することは不適当であり，また不動産質権は民法上も認められているが，質権者たる金融機関などによる不動産の収益は少なくとも今日では非現実的なものとなっている。
［流質］
　民法上，質権による優先弁済の実現は民法その他の法律に定めた方法によるべきものとされ，被担保債権の弁済期到来前の契約をもって法律の定める方法によらず任意に優先弁済の方法を定めること(流質契約)は禁止されている(349条)。暴利行為の防止がその禁止の理由である。…

※「流質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」