(読み)アオ

デジタル大辞泉 「襖」の意味・読み・例文・類語

あお〔アヲ〕【×襖】

《「襖」の字音「あう」の音変化》
両方わきをあけたままで、縫い合わせず、らんのない古代の上着。位階相当の色によるものを位襖いあおいい武官の礼服や朝服に用いた。わきあけのころも。闕腋けってきほう
《「狩襖かりあお」の略》狩衣かりぎぬ
あわせの衣。綿を入れたものもある。襖子あおし

ふすま【×襖】

木で骨組みを作り、その両面に紙または布を張った建具。襖障子 冬》
[類語]障子建具

おう〔アウ〕【×襖】

あお(襖)

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精選版 日本国語大辞典 「襖」の意味・読み・例文・類語

あおアヲ【襖】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「襖」の字音「あう」の変化した語 )
  2. 令制の武官の制服。襴(らん)がなく、両方の腋(わき)を縫い合わせないで、あけ広げたままのもの。地質に位階相当の色の制があるので、位襖(いあお)ともいう。わきあけの衣(ころも)闕腋(けってき)の袍(ほう)
    1. [初出の実例]「衛府督佐〈略〉位襖。〈謂。無襴之衣也〉」(出典:令義解(718)衣服)
    2. 「冠(かむり)にて襖着する人の、長(たけ)は上の垂木(たるき)近く有るが」(出典:今昔物語集(1120頃か)二四)
  3. ( 狩襖(かりあお)ともいったため、「狩」が省略されて ) 狩衣(かりぎぬ)のこと。
    1. [初出の実例]「中納言は赤色の織物のあを〈略〉頭の中将は青色のあを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
  4. 上に着る袷(あわせ)の衣。綿を入れたものもあり、男女共に用いる。襖子(あおし)
    1. [初出の実例]「長き髪をきぬの袋に入れて遠山ずりの長きあををぞ着たりける」(出典:塗籠本伊勢物語(10C前)五八)

ふすま【襖】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ふすましょうじ(襖障子)」の略。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「必ず気遣ひなされなと、ふすまを引きあくれば」(出典:浮世草子・本朝桜陰比事(1689)四)
  3. あお(襖)
    1. [初出の実例]「それならでは、ただの袙、ふすま、せめてはならば、布の破襖にても」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)よしなしごと)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「襖」の意味・わかりやすい解説

襖(建具)
ふすま

主として引き戸形式で、日本独特の建具の一種。木で骨を組み、両面から紙で下貼(したば)りをし、表面に布や紙を貼ったもの。本来「ふすましょうじ」とよび、襖障子あるいは衾障子と書いて、表面が布貼りのものをさしていたが、第二次世界大戦後ごろから、紙貼りの唐紙(からかみ)障子も区別せず、襖とよぶようになっている。引き戸形式の建具である襖の初めは、木を組んだ骨に紙や布を貼ってパネルをつくり柱の間にはめ殺した障子に設けられた開き戸が変化してできた鳥居(とりい)障子で、平安時代の中ごろまでには現れたと考えられる。初めは周囲に布で広く枠取りしてその中に絵を描き、回りに漆塗りの縁をつけ、引き手を設けていた。裏は人目に触れないときには、唐紙を貼るのが普通であった。中世末には、紙貼りの上に金箔(きんぱく)を貼って極彩色の絵を描くことが始まり、近世初めには武家住宅をはじめとして金地極彩色の形式が広まった。一方、近世の初めから茶室や数寄屋(すきや)風の建物を中心に、色紙や模様を木版で刷った唐紙が用いられるようになり、流行する。数寄屋風の建物の発展とともに、襖にも黒い漆塗りの縁のほかに、色漆塗りや生地(きじ)のままの縁、あるいは縁のない太鼓貼りのものも現れ、引き手にもさまざまなデザインあるいはさまざまな材質の木などが用いられるようになった。また、襖の中に紗(しゃ)を張った窓を設けるなど、変わったものもみられる。近年は、紙に模様や絵を印刷した襖紙やさまざまな布、写真を用いたデザイン、ビニルなどの新しい材料も用いられている。

[平井 聖]



襖(衣服)
あお

日本古代の衣服の一種。ペルシア系の唐風上着、盤領(あげくび)で身頃(みごろ)が一幅と二幅のものがある。この上着の裾(すそ)に、生地を横向きにして縫いめぐらした襴(らん)という部分がつかず、両脇(わき)があいた無襴衣である。袍(ほう)に有襴と無襴との別があるが、奈良時代における袍と襖との区別が、現在では不明である。養老の衣服令に規定された武官の礼服や朝服として用いられる位襖は、当色、すなわち位階相当の色によって区別された上着襖である。もとは狩猟用に用いられ、平安時代に日常着として親しまれた狩衣(かりぎぬ)は狩襖ともいわれた。『今昔物語』にみられる庶民の着た襖は、同名異物のようであり、また、室町時代より武家に用いられた素襖(すおう)は、布製の直垂(ひたたれ)であって、盤領式の上着の襖とは異なる。なお、奈良時代に着用された、袍や襖の下に重ねる内着の襖子は、正倉院に伝えられたものによると、襖と同形で、やや身丈が短く、絹製の袷(あわせ)仕立てのものである。

[高田倭男]


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改訂新版 世界大百科事典 「襖」の意味・わかりやすい解説

襖 (あお)

衣服の一種。古く中国では襖子と書き,日本ではこれを〈あお〉〈あおし〉とよんでいた(《和名抄》)。中国では,これを古代北方民族の胡服(こふく)として用いなかったが,6世紀後半の北斉から一般に用いられるようになり,袷(あわせ)の上衣として,袴(こ)とともに着用した。活動に便利であったため,乗馬や旅行,あるいは日常の衣服として広く用いられていた。日本にも,あるいは古く北方民族から伝えられていたかもしれないが,律令の衣服の制度ではこれを公式に採用して,武官の警固や従軍の場合の正装(礼服(らいふく),朝服)として規定した。〈衣服令〉に位襖(いあお)と書かれているのがそれで,位階によって差別づけ,服色を分かった。これは襴(らん)(衣のすそにつけた細い裂)のない衣で,腋(わき)の開いたものであった(《令集解》)。後にはこれが闕腋袍けつてきのほう)になった。またこれから狩襖(狩衣)や素襖(すおう)が発展したようである。また,奈良朝前後には官戸奴婢(ぬひ),3歳以上の者に毎年衣服を給したが,冬にはこの布襖(ぬのあお)が給与されていた(雑令)。袷であったが,綿入れのようなものもあって,ひろく冬季の防寒衣とされていたようである。子どもや女子,あるいは老人も着ていた。遠山摺(とおやまずり)の長い襖を着た女もいた。

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襖 (ふすま)

木製格子の両面に厚紙または布をはり,四周に木の枠をつけた引違い建具。襖障子または唐紙(からかみ)障子のこと。平安時代の絵巻物には寝殿などの内部間仕切りとして多く描かれているが,当時は特定の名称がなく広い意味での障子のひとつとして扱われていた。〈襖障子〉の語は室町時代の文献にはじめて登場するが,その語源は明らかでない。襖は日本家屋の室内装飾の重要な構成要素で,貴族・武家の住宅や寺社では唐絵,やまと絵,水墨画,金碧画など,そこに描かれる絵は時代ごと,また,室ごとに手法・題材をかえて室内空間をいろどった。なお〈からかみ〉は唐紙障子の略で,本来は中国渡来の模様刷りの紙,またはそれを模したものをはった襖を意味した。

 江戸時代ころから,襖紙には,雲紙(くもがみ),墨流し,水玉などが用いられ,また唐紙師は木版によって群青(ぐんじよう)または雲母で模様を刷り出したものを作った。襖紙の寸法は江戸末期までは横1尺5寸(1尺は約30.3cm),縦1尺で,襖1枚を12枚で張った。江戸末期には楽水紙,泰平紙などとよぶ襖1枚大のものがすかれるようになった。襖紙の種類は多く,中でも〈鳥の子〉が上等とされている。葛布,芭蕉布,更科など布も用いられる。
障屛画
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百科事典マイペディア 「襖」の意味・わかりやすい解説

襖【ふすま】

襖障子の略。唐紙(からかみ)とも。木で骨組を作り,その両面に紙または布を張ったもの。框(かまち),力骨,組子,火打板,引手板等からなり,下張りを数回行ったのち,鳥の子,奉書,芭蕉布等の襖紙を張る。室町・桃山期を中心に寺院,殿舎等では襖絵が多く描かれた。→障壁画
→関連項目唐紙四季絵建具衝立

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「襖」の解説


ふすま

引違いの建具の一つ。木で骨を組んで,両側から紙または布を何重にも張ったもの。細い木の縁を回し,引手をつける。平安時代の住宅で,屋内の間仕切り装置として成立したもので,その後,間仕切り建具の最も一般的なものとして広く普及した。当初はたんに障子と称したが,明障子(あかりしょうじ)が発明され使われると,紛らわしさをさけるために襖障子・唐紙(からかみ)障子・襖とよぶようになった。表の紙や絹には唐紙など装飾的なものを使ったり,絵を描いたりした。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「襖」の意味・わかりやすい解説


あお

日本の律令制下の武官の朝服の名。袖から下の両方の脇を縫い連ねず,ほころばせて行動の便をはかり,うしろ身を特に長く仕立てたもの。その形式から闕腋の袍 (けってきのほう) ともいい,また位階相当の色に染めたものを位襖 (いあお) ともいう。 (→袍袴 )


ふすま

唐紙ともいう。障子のような木の骨組みの両面に紙または布を張り,周囲に化粧縁を取付けた和風住宅の間仕切り用の引き戸。昔は現在の障子を明り障子,襖を襖障子,模様のある紙を張ったものを唐紙障子と呼んだ。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「襖」の解説

ふすま【襖】

木の骨組みの両面に紙または布を張り、引き手を取り付けた建具。日本建築で、装飾を兼ねて間仕切りや押し入れの引き違い戸とする。茶室に多く用いられる縁のない太鼓張り襖、明かりとりのために一部に明かり障子をはめ込んだ源氏襖、片面を板戸に、片面を襖にした戸襖などもある。◇「襖障子」ともいう。

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日本文化いろは事典 「襖」の解説

襖は、和風住宅の仕切りとして、長い間使用されてきました。必要なときに開け閉めや取り外しが簡単にできる、とても柔軟な建具です。芸術分野でも役割は大きく、鎌倉時代から江戸時代に寺院や城に襖に描かれた絵(襖絵)は、重要な文化財として現存しています。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

リフォーム用語集 「襖」の解説

日本建築の特徴である、和室の建具の事。木製の枠組みの両面に紙または布を張ったもので、二本の溝を設けて引き違いになっている。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【中国服】より

…しかし,全中国人口の94%を占める漢民族が,伝統的に身につけてきた服装が中国服であるとすれば,宋代以後の中国服は四つの基本衣によって構成された(中国古代の服装については,〈服装〉の項を参照されたい)。袍,襖,衫,褲がそれで,このうち袍,襖は袷(あわせ)または綿入れの秋冬着で袍は丈が長く,襖は丈が短い。衫は単(ひとえ)の春夏用でこれには丈の長い長衫と丈の短い短衫がある。…

【障子】より

…和風建築に用いられる建具の一種。古くは戸,衝立(ついたて),襖(ふすま)などの総称であったが,現在は明障子(あかりしようじ)をさす。障子の語はすでに奈良時代の《西大寺資財流記帳》(780)に見られ,〈補陀羅山浄土変一鋪〉は〈障子絵〉で周囲に〈紫細布縁〉を施していたという。…

【寝殿造】より

…そして生活の複雑化にともなって北庇が発展し,いくつもの部屋が造られるようになる。その間仕切として用いられたのが襖で,そこにはやまと絵が描かれ,几帳や帷(とばり)などとともに華やかな空間を演出した。そして明障子(あかりしようじ)(現在の障子)が用いられ,部屋に畳が敷きつめられるようになると,次代の書院造の祖型が形成されることになる。…

※「襖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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