海難審判法(昭和22年法律第135号)により、特別の機関として国土交通省に置かれる行政機関。海難が海技士、小型船舶操縦士や水先人の職務上の故意または過失によって発生したものであるときは、海難審判所により裁決をもって懲戒がなされることとされており、そのための海難の調査および審判を行うことを任務とする。旧・海難審判庁が有していた権能のうち、この懲戒に関するものを継承する機関として2008年(平成20)に創設され、旧・海難審判庁の原因究明に関する事務は、運輸安全委員会に統合された。
海難審判所には、審判官と理事官が置かれ、政令で定められている定数は、審判官が25人、理事官が23人である。海難審判所長は審判官をもってあてられる。海難審判所は東京に置かれ、3人の審判官のうち1人を審判長とした合議体で、旅客の死亡を伴うものや環境に重大な影響を及ぼしたもの等の重大な海難の審判を行う。これ以外の海難については、函館(はこだて)、仙台、横浜、神戸、広島、門司(もじ)(那覇に支所を有する)、長崎に置かれる地方海難審判所が、原則として1人の審判官によって管轄区域で発生した海難の審判を行う。地方海難審判所長も審判官をもってあてられる。
懲戒の事前行政手続である海難審判所の審判は、審判官が裁判官類似の権限を行使し、理事官が検察官類似の権限を行使する、裁判類似の準司法的なものとなっている。審判は、海難が海技士等の職務上の故意または過失によって発生したものであると理事官が認めたときに、その開始の申立てによって審判が開始され、審判官は独立してその職権を行使する。審判は公開の審判廷で行われ、口頭弁論に基づいて裁決が行われなければならないとされている。裁決による懲戒は、免許の取消し、1か月以上3年以下の業務停止、戒告の3種類が法定され、裁決に不服がある場合には、行政事件訴訟法上の原則と異なり、海難審判所長を被告として東京高等裁判所に裁決の取消訴訟を提起することができる。裁決が確定した場合は、理事官がこれを執行する。
[北見宏介 2022年5月20日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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