濡つ(読み)ソボツ

デジタル大辞泉 「濡つ」の意味・読み・例文・類語

そぼ・つ【×濡つ】

《古くは「そほつ」「そほづ」》
[動タ四]
雨や涙などにしっとり濡れる。うるおう。
「浅みにや人はおりたつ我がかたは身も―・つまで深きこひぢを」〈・葵〉
雨がしとしと降る。そぼ降る。→降りそぼ
「あけぬとてかへる道にはこきたれて雨も涙もふり―・ちつつ」〈古今・恋三〉
[動タ上二]1に同じ。
「あさ氷とくる間もなき君によりなどて―・つる袂なるらむ」〈拾遺・恋二〉
[補説]現代では「濡れそぼつ」などの形で文章語としてのみ用いられる。また、2は、連用形用例しかないので、活用は上二か四段か判定しがたい。
[類語]濡れる湿る潤う湿す濡らす潤す濡れそぼつ湿気る潤む浸潤じめつくじとつくそぼ濡れるしょぼたれるしょぼ濡れる潮たれる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「濡つ」の意味・読み・例文・類語

そぼ・つ【濡】

  1. ( 古くは「そほつ」「そほづ」。「そおつ(づ)」の時代も )
  2. [ 1 ] 〘 自動詞 タ行上二段活用 〙
    1. 雨、涙などによって、ぐっしょりぬれる。うるおう。
      1. [初出の実例]「玉笥(たまけ)には 飯(いひ)さへ盛り 玉盌(たまもひ)に 水さへ盛り 泣き曾裒遅(ソホチ)行くも 影媛あはれ」(出典:日本書紀(720)武烈即位前・歌謡)
      2. 「ひきとむるものとはなしにあふさかの関のくちめのねにぞそほつる」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    2. (雨が)しめやかに降る。しとしとと降る。しょぼしょぼふる。そぼふる。
      1. [初出の実例]「あけぬとてかへる道にはこきたれて雨も涙もふりそほちつつ〈藤原敏行〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋三・六三九)
  3. [ 2 ] 〘 自動詞 タ行四段活用 〙 [ 一 ]に同じ。
    1. [初出の実例]「あさみにや人はおりたつわがかたは身もそほつまで深き恋ちを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)

濡つの補助注記

連用形は四段活用か上二段活用か区別しがたいが、四段は確例に乏しいので、上二段として処理した。


そお・つそほつ【濡】

  1. 〘 自動詞 タ行上二・自タ四 〙そぼつ(濡)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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