湿る(読み)シメル

デジタル大辞泉 「湿る」の意味・読み・例文・類語

しめ・る【湿る】

[動ラ五(四)]
乾いていたものが水分を含んでぬれた感じになる。水気を帯びる。「夜露で―・った地面」「―・っている洗濯物
気がめいる。物思いに沈む。また、元気がなく沈んだ状態になる。振るわない。「―・って重苦しい雰囲気」「打線が―・って快音が聞かれない」
勢いが弱まる。衰える。
「やうやう風直り、雨の脚―・り」〈明石
火が消える。
「火―・りぬめり」〈かげろふ・下〉
落ち着きがある。
「人ざまも、いたう―・り、恥づかしげに」〈絵合
[類語]濡れる潤う湿す濡らす潤す濡れそぼつ湿気る潤む浸潤じめつくじとつくそぼつそぼ濡れるしょぼたれるしょぼ濡れる潮たれる

しと・る【湿る】

[動ラ五(四)]しっとりとぬれる。しめりけを含む。しめる。
夜霧に―・った娘の浴衣たもとの中に」〈風葉・五反歩〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「湿る」の意味・読み・例文・類語

しめ・る【湿・沈】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 水分を吸ってしっとりと濡れる。水気を帯びてうるおう。
    1. [初出の実例]「しろき御衣ひきかけて、御ぐしは少ししめりて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
    2. 「霧にいたうしめりたるをぬぎ、鬢のすこしふくだみたれば」(出典:枕草子(10C終)三六)
  3. 火や灯火が消える。
    1. [初出の実例]「次に火炎(ほのほ)(シメル)時、躡誥出児亦た言(のりたまはく)」(出典:日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))
    2. 「火しめりはてて、しばしあれど」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  4. 雨、風などの勢いが静まる。衰える。
    1. [初出の実例]「やうやう風なほり、雨の脚しめり、星の光も見ゆるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
  5. 静かになる。ひっそりと静まる。
    1. [初出の実例]「夜深きほどの人の気しめりぬるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)椎本)
  6. 態度や性格などがしっとりと落ち着いている。
    1. [初出の実例]「これは、人ざまも、いたうしめり、恥づかしげに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
  7. 物思いに沈む。憂いに沈む。
    1. [初出の実例]「今年は、天下ににくき人ありとも、思ひなほらましなど、しめりて思へば」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  8. 雰囲気(ふんいき)が沈む。
    1. [初出の実例]「夜るは、遅く始まれば、定まりてしめるなり」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)三)
    2. 「雨は歇(や)まず、お勢は済まぬ顔、家内も湿り切って誰とて口を開く者も無し」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)

しと・る【湿】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 水分を含んでしっとりと濡れる。しめる。しける。
    1. [初出の実例]「あかつきのしとる羽二重や衣がへ〈貞長〉」(出典:俳諧・沙金袋(1657)比)
    2. 「湿(シト)った塩煎餠猫板の上へ出した」(出典:新世帯(1908)〈徳田秋声〉一三)
  3. 落ち着く。
    1. [初出の実例]「沈勇にして性がしづみしとってけなげにして思案ふかうして大なことをようないたぞ」(出典:玉塵抄(1563)三六)

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