火の鳥(読み)ひのとり

精選版 日本国語大辞典 「火の鳥」の意味・読み・例文・類語

ひのとり【火の鳥】

(原題L'oiseau de feu) バレエ音楽ストラビンスキー作曲。一九一〇年作・初演。王子イワンが火の鳥の助けで王女を魔王から救うというロシア民話から取材。M=フォーキンが振付してパリのオペラ座で初演され、ストラビンスキーの出世作となった。三つの演奏会用組曲があり、第二組曲がよく演奏される。

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デジタル大辞泉 「火の鳥」の意味・読み・例文・類語

ひのとり【火の鳥】

《原題、〈フランスL'Oiseau de feuストラビンスキー作曲のバレエ音楽。1910年パリで初演。ロシア民話に基づくもの。
伊藤整長編小説。昭和28年(1953)刊行。とある女優の半生を描く。昭和31年(1956)、井上梅次監督により映画化。
手塚治虫の長編漫画。昭和29年(1954)発表の「黎明れいめい編」に始まる連作で、永遠の命をもつという火の鳥をめぐる人間模様を描く。

ひのとり[人工衛星]

昭和56年(1981)2月に打ち上げられた日本初の太陽観測衛星ASTRO-Aアストロエーの愛称。宇宙科学研究所(現JAXAジャクサ)が開発。すだれコリメーターを搭載し、太陽フレアX線による二次元画像の取得に成功。太陽活動の極大期に行われた国際的な太陽観測計画に各種データを提供した。平成3年(1991)7月に運用終了。

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百科事典マイペディア 「火の鳥」の意味・わかりやすい解説

火の鳥【ひのとり】

ストラビンスキー作曲のバレエ音楽。東スラブ民話の火の鳥伝説に基づき,ディアギレフの依頼で作曲。1910年〈バレエ・リュッス〉の第2回パリ公演において,フォーキンの台本・振付で初演。特有の色彩的なオーケストレーションリズムは観客に衝撃を与え,無名に近かったストラビンスキーの出世作ともなった。その後,A.ボルム〔1884-1951〕,バランチンクランコらにより再演出されたが,1970年に初演されたベジャールの演出は実在したパルチザン〈火の鳥〉を主題とした独自のもの。作曲者自身による演奏会用組曲版も3種(1911年,1919年,1945年)ある。→カルサビナ

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改訂新版 世界大百科事典 「火の鳥」の意味・わかりやすい解説

火の鳥 (ひのとり)
zhar-ptitsa[ロシア]

東スラブの昔話に登場し,翼が炎のように輝くことからこの名がある空想上の鳥。この鳥について語られるロシアの昔話《イワン王子と灰色の狼》では,旅に出た末息子の主人公に火の鳥を生け捕りにすべしなどの難題が課される。火の鳥は主人公を遠くまで運んだり,魔女のもとからの逃亡を助けて助言を与え,死んだ主人公を蘇生させる援助者としての役割をもつ。その反面,昔話の火の大蛇と同じく,主人公の母を連れ去る略奪者として語られることもある。こうした伝承の背後には火をめぐる神話的観念,ならびにこの世とあの世の仲介者,他界への導き手あるいは霊魂鳥としての鳥のシンボリズムが存在している。この鳥のイメージは芸術作品にも影響を及ぼし,ロシア文学(V.A. ジュコーフスキー,P.P. エルショフ)や絵(I.Ya.ビリビン)に題材を与え,同名のバレエがストラビンスキーの作曲,M.M.フォーキンの台本と振付によって,1910年にパリでディアギレフのバレエ・リュッスの手で上演された。
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デジタル大辞泉プラス 「火の鳥」の解説

火の鳥〔漫画〕

①手塚治虫による漫画作品。その血を飲めば永遠の命を得られるという火の鳥を中心に、古代から未来まで、地球から宇宙を舞台に、生命の本質を描いたシリーズ長編。『漫画少年』1954年7月号~1955年5月号、『少女クラブ』1956年5月号~1957年12月号、『COM』1967年1月号~1978年3月号、『マンガ少年』1978年4月号~1981年4月号、『野性時代』1986年1月号~1988年2月号に連載。最新版は講談社手塚治虫文庫全集全11巻+少女クラブ版全1巻。第1回(1970年)講談社出版文化賞児童まんが部門受賞。劇場用アニメもある。
②1978年公開の日本映画。①を原作とする。監督:市川崑、脚本:谷川俊太郎。出演:若山富三郎、尾美としのり、高峰三枝子、江守徹、草笛光子大原麗子、林隆三ほか。
③①を原作とする日本のテレビアニメ。放映はNHK(2004年4月~6月)。制作:手塚プロダクション。声の出演:竹下景子ほか。

火の鳥〔曲名〕

①ロシア生まれの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーのバレエ音楽(1910)。原題《L'Oiseau de feu》。セルゲイ・ディアギレフの依頼により作曲された。『ペトルーシュカ』、『春の祭典』とともにストラヴィンスキーの三大バレエ音楽の一つとして知られる。
②ロシア出身の舞踊家・振付家ミハイル・フォーキンによるバレエ(1910)。原題《L'oiseau de feu》。音楽は①を使用。初演はバレエ・リュス。現在はジョージ・バランシン、モーリス・ベジャールの振付による版も知られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火の鳥」の意味・わかりやすい解説

火の鳥
ひのとり
L'Oiseau de feu

ロシアの作家 A.N.アファナーシエフの童話による1幕3場のバレエ。音楽 I.ストラビンスキー。振付 M.フォーキン。装置 L.バクスト,A.ゴロービン。バレエ・リュスにより,1910年パリで初演された。王子イワンは火の鳥の助けを借りて,魔王カスチェイに捕われの身となっていた王女を救い出し,結婚する。 26年に復活上演されたが,このときの装置は N.ゴンチャロワに変っている。その後,数回にわたり改訂上演されているが,特に 49年 G.バランシンがニューヨーク・シティー・バレエ団で上演した際には装置を M.シャガールが担当,70年 M.ベジャールが 20世紀バレエ団で上演した際には,火の鳥をパルチザンのグループととらえ,男性に演じさせて,ともに話題作となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火の鳥」の意味・わかりやすい解説

火の鳥
ひのとり
L'oiseau de feu フランス語
Жар‐птица/Zhar-ptitsa ロシア語
The firebird 英語

バレエ。ロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフの依頼で1910年ストラビンスキーが作曲。ロシアの古い民話に取材したもので、火の鳥の助力を得たロシアの王子が魔王に捕らわれた王女たちを救出するまでのいきさつを幻想的に描いた作品。同年フォーキンの振付けによりパリ・オペラ座で初演され、大成功を収めた。当時まだ無名だったストラビンスキーはこの一作で一躍ヨーロッパ中の注目を集める存在となり、とくにその色彩的な管弦楽法とリズムの多様さが20世紀の音楽に与えた影響は大きい。初演の翌年、作曲者は演奏会用の組曲版をまとめ、のちに1919年と45年にその改訂を行っている。

[三宅幸夫]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「火の鳥」の解説

火の鳥 (ヒノトリ)

動物。架空の鳥

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