火山、その周辺を震源として発生する地震で、地下で起きた何らかの破壊現象やマグマの移動で生じると考えられている。通常の地震とは異なり、火山性地震は身体で感じられることが少なく、有感地震でも規模が小さいことが多い。一方、火山性微動は火山性地震と異なり、比較的長時間続く小さな震動を呼ぶ。マグマや火山ガスの震動が発生原因だと考えられている。
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火山やその近くでおこる地震の総称。3種類があり、地震としての性質は一般の地震と変わらない地震と、低周波地震と、火山性微動とがある。このうち普通の地震でも火山現象の一部と考えられる場合には火山性地震とよばれるが、火山起源の普通の地震を一般の地震と区別することはむずかしい。
火山性地震の規模はマグニチュード5程度以下の小さいものが多いが、ハワイでは7クラスがおきたこともある。震源の深さは表面近くから深くても20キロメートルと一般には浅いが、ハワイでは50キロメートル以上に達するものがある。
低周波地震は普通の地震よりも低周波の振動が卓越しているもので、富士山の地下15~20キロメートルで観測されるほか、他の火山でもときに観測される。火山直下のマグマの活動を反映していると考えられている。2000年にはこの低周波地震がかなり増えたが、噴火には結び付かなかった。
火山性微動は地面が連続的に揺れ続けるもので、噴火が近づいたときや噴火中に発生することが多い。マグマの動きの反映と考えられている。
火山の近くに地震計を置き、小さい火山性地震の増減や分布を観測することは、火山の噴火予知の重要な手段である。火山性地震の観測によって大きな噴火の予知に成功した例がある。たとえば有珠山(うすざん)(北海道)では、過去7回知られている噴火の前には、かならず身体に感じる大きさの火山性地震があり、それから数日以内に噴火している。2001年(平成13)3月の噴火のときも激しい群発地震があり、地元の人々を噴火前に避難させて人的被害を回避することに成功した。
しかし個々の火山により地震の性質も異なり、会津磐梯山(ばんだいさん)(福島県)では2000年に火山性地震が急増して地震が一日400回を超え、低周波地震や火山性微動も発生したが、結局、噴火しなかった。火山性地震が増えたからかならず噴火するわけではない。
[島村英紀]
『島村英紀・森谷武男著『北海道の地震』(1994・北海道大学図書刊行会)』
火山体およびそのごく周辺に発生する地震をいい,震源の深さはおおむね10kmより浅い。この定義では,発生の原因については無関係に,震源の分布のみで分類している。したがって,火山の近くに起きた地震が火山性地震か,構造性地震かを議論することは意味がない。火山性地震のマグニチュードの上限は大体5程度と考えてよく,一般には微小地震がほとんどである。有感地震であっても震源が浅いので,ごく震央に近い部分のみが人体に感じられる程度である。1968年のえびの地震は霧島火山の北端部にある加久藤カルデラ内で群発した火山性地震で,震源が浅く,またマグニチュードの大きい地震もかなりあったため,人家に相当な被害が出たが,一般に火山性地震では被害は少ない。火山性地震の発生の原因は次のように考えられる。すなわち火山体はその下部の構造も含めて,かなり複雑で不均一であるため,周辺に力が加わると(地殻応力の上昇),そのような部分から小破壊が発生する。これが火山性地震である。また一方では,マグマの上昇とそれによる火山ガスの放出が火道深部で起こると,火道周辺に無理がかかり,そのために地震が起きる。したがって火山性地震を観測することによって,地下のマグマの活動を推測することができる。浅間山では,火山活動が平穏なときには,微小な地震は1日平均20~50回の割合で起きているが,噴火の前にはその数が著しく増加する。このように火山性地震活動は,それぞれの火山の活動度を把握するために最も重要である。一般に貫入するマグマの粘性が大きいデイサイトの火山では,噴火前に有感地震が発生し,ふつうの安山岩質火山では,人体に感じない微小地震が多数発生する。これはマグマの粘性の大小により,周辺に加わる力に違いが生じるからである。火山が爆発的な噴火をする場合,噴火に伴って地震が発生する。これを爆発地震という。
執筆者:下鶴 大輔
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(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)
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…1983年現在気象庁は17火山で地震観測を主とした常時監視を行っているほか,大学が七つの火山に観測所をおいている。 火山活動として最も普遍的に観測されるのは火山性地震である。日本では1910年に大森房吉によって有珠山で観測されたのがはじめであり,翌年から浅間山で観測が開始された。…
※「火山性地震」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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