修験者が,屋外で焚く柴灯護摩(さいとうごま)の残り火などを使用して,燠(おき)や焼木の上を呪文や経文を唱えつつ歩くことをいう。これは,修験者が山岳修行などによって体得した超自然力である験力を示す験術の一種で,刃渡りなどもその一連の行為である。正式には,火生三昧耶法といい,護身法によって自己を清浄にした後,本尊不動明王と合体したと観じ,みずからが火を統御しうる存在となって火を渡る。これによって,修験者は,みずからが不動明王の力を体得したことを民衆に納得させ,その力によって諸霊を操作して災厄の原因である邪神,邪霊の存在をつきとめ,加持祈禱などで治病,除災を行い,民衆の現世での不安,悩みの除去につとめたのである。火渡りには,修験者や行者などの先達に続いて一般の信者も参加するが,決して火傷はしないと信じられ,けがれを祓い,無病息災を祈願することが意図されている。
執筆者:鈴木 正崇
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修験道(しゅげんどう)や御嶽(おんたけ)講の行者(ぎょうじゃ)などが、験術の一つとして、燃焼している炭火や火の上を渡り歩く儀礼。修験道では火生三昧耶法(かしょうさんまいやほう)とよび、その火によって世の中の穢(けがれ)や罪を焼き尽くし、同時に彼らの崇拝する火炎に包まれた不動明王と一体化すると考えられている。今日でも山岳宗教系の寺社などでは祭礼のおりなどに行っているところもあるが、近世期には信者や一般民衆に験術を誇示するといった目的から盛んに行われた。修験者の儀礼後に、現世利益(げんぜりやく)を願う信者たちを歩かせるといった形態も少なくない。火渡り儀礼は広く世界のシャーマンの間でもみられるが、燃焼力を獲得して霊的な力を発揮できる状態に到達した表現であるという。
[佐々木勝]
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