火渡り(読み)ヒワタリ

デジタル大辞泉 「火渡り」の意味・読み・例文・類語

ひ‐わたり【火渡り】

修験道行者などが燃えている火の上を呪文じゅもんを唱えながらはだしで渡る術。

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改訂新版 世界大百科事典 「火渡り」の意味・わかりやすい解説

火渡り (ひわたり)

修験者が,屋外で焚く柴灯護摩(さいとうごま)の残り火などを使用して,燠(おき)や焼木の上を呪文経文を唱えつつ歩くことをいう。これは,修験者が山岳修行などによって体得した超自然力である験力を示す験術一種で,刃渡りなどもその一連の行為である。正式には,火生三昧耶法といい,護身法によって自己を清浄にした後,本尊不動明王と合体したと観じ,みずからが火を統御しうる存在となって火を渡る。これによって,修験者は,みずからが不動明王の力を体得したことを民衆に納得させ,その力によって諸霊を操作して災厄の原因である邪神,邪霊の存在をつきとめ,加持祈禱などで治病,除災を行い,民衆の現世での不安,悩みの除去につとめたのである。火渡りには,修験者や行者などの先達に続いて一般の信者も参加するが,決して火傷はしないと信じられ,けがれを祓い,無病息災を祈願することが意図されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火渡り」の意味・わかりやすい解説

火渡り
ひわたり

修験道(しゅげんどう)や御嶽(おんたけ)講の行者(ぎょうじゃ)などが、験術の一つとして、燃焼している炭火や火の上を渡り歩く儀礼。修験道では火生三昧耶法(かしょうさんまいやほう)とよび、その火によって世の中の穢(けがれ)や罪を焼き尽くし、同時に彼らの崇拝する火炎に包まれた不動明王と一体化すると考えられている。今日でも山岳宗教系の寺社などでは祭礼のおりなどに行っているところもあるが、近世期には信者や一般民衆に験術を誇示するといった目的から盛んに行われた。修験者の儀礼後に、現世利益(げんぜりやく)を願う信者たちを歩かせるといった形態も少なくない。火渡り儀礼は広く世界のシャーマンの間でもみられるが、燃焼力を獲得して霊的な力を発揮できる状態に到達した表現であるという。

[佐々木勝]

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百科事典マイペディア 「火渡り」の意味・わかりやすい解説

火渡り【ひわたり】

神道教派や修験(しゅげん)道で行う術の一つ。割木を積んでたき上げ,燃え盛るころ,火をたたいて平らな火道をつくり,塩をまき,裸足で渡る。行者が呪文(じゅもん)を唱え九字を切って渡り,信者がこれに続いて渡る。京都の愛宕(あたご)神社や熊本阿蘇神社など,火の神をまつるところでも行う。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火渡り」の意味・わかりやすい解説

火渡り
ひわたり

修験道などの荒行の一つ。火を神聖視する思想から起ったもので,燃えている火の上をたたきながら,はだしで歩く苦行で,行者は呪文を称えながら信者を先導する。京都の愛宕神社,熊本の阿蘇神社などで行われる。

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