狩倉(読み)カリクラ

デジタル大辞泉 「狩倉」の意味・読み・例文・類語

かり‐くら【狩倉/狩座/狩競】

狩猟をする場所。狩り場。
「駒めて狩りする人は―の虎伏す野べぞゆかしかりける」〈散木集・九〉
狩猟。特に、鹿狩り
「今日の―むなしからめや」〈夫木・三六〉

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改訂新版 世界大百科事典 「狩倉」の意味・わかりやすい解説

狩倉 (かりくら)

狩蔵とも書く。領主の独占的な狩猟区域で,所領内の狩猟に好適な山や野を選び,四至を定めて囲いこんだもの。獣の生態系を守るために,百姓等がその中へ自由に出入りし,また採草・伐木など生産活動を営むことを厳しく禁じた。狩倉の成立時期は不明であるが,12世紀の前期には,まず〈神狩蔵〉の存在が知られる。この神の狩倉は,13世紀初期に肥後国阿蘇神社などで確認される狩猟神事を営むための狩倉と考えられる。和泉国大鳥神社にも,11世紀末から12世紀初頭ころ,4ヵ所の狩庭があった。神の狩倉はこのころ広く生まれていたと推測される。

 つぎに,13世紀前期には,〈地頭分の役〉としての狩倉と〈領家分の狩倉〉の存在が確認される。この荘園内に設けられた領家の狩倉は,その狩使が下向して行う狩猟を経営の基軸とした。そして,狩役は,狩倉と地縁的に密接な関係のある村々の百姓に雑公事(ぞうくじ)として課された。獲物についても,彼らに皮革をはりこしらえさせて上納させた。領家の狩倉設定の目的は,一つには,豊かな狩庭支配の固定化と狩猟の直接管理による皮革の安定的な獲得にあったといえる。この狩倉は,おそらく12世紀以前には成立していたであろうが,13世紀中葉地頭の押領などでほとんど消滅した。一方,〈地頭分の役〉としての狩倉は,領家の狩倉の何ヵ所かがその得分として分与されたものである。鎌倉後期の西国では,いくつかの荘園で10~30ヵ所もの狩倉の存在が知られ,地頭の管掌するところであった。その多くは元来領家に帰属したと考えられる。地頭の狩倉には,ほかに私領主の狩倉に系譜をもつものもあった。狩倉の経営は,領家のそれとほぼ同じであったが,新たに軍技訓練の場としての要素が加わった。なお,荘園内に多くの狩倉が設けられたのは,獣の習性と保護のために,ある期間をおいて狩猟を行う必要によるのであろう。鎌倉後・末期に至ると,地頭の狩倉支配の弛緩とあいまって,百姓等が狩倉内の古木を伐採し,あるいは焼き払い耕地を開くようになった。狩倉の荒廃・消滅である。これは,一つには,地頭が支配領域内の市場や狩猟をもっぱら支配するようになったためである。それと,狩倉が,多くの場合百姓等の生活領域と隣接していたことによる。狩倉が地頭・国人領主層の所領譲与の対象とされたのは,西国では14世紀の前半東国ではその末までである。
狩場 →狩猟伝承
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「狩倉」の意味・わかりやすい解説

狩倉
かりくら

狩猟する場所、すなわち狩場。さらには、狩場で行われる狩りそのものや、狩りにおいて獲物を競い合うことをも意味した。律令(りつりょう)制下においても、農民の用益を妨げぬ限り山野を狩猟地として占取することが認められていたが、平安中期以後になると、在地領主たちによって原野がしだいに「狩倉」「狩庭(かりにわ)」として領有されるようになった。弓馬を主要武器とする彼らは、そこで狩猟による戦技訓練を行うとともに、そのような山野の領有によって在家(ざいけ)住人たちを支配したのである。『吾妻鏡(あづまかがみ)』建久(けんきゅう)4年(1193)3月21日条によれば、下野(しもつけ)国那須野(なすの)、信濃(しなの)国三原(みはら)などの「狩倉」がみえる。また、安芸三入荘地頭得分(あきみるのしょうじとうとくぶん)田畠等配分注文(はいぶんちゅうもん)(『鎌倉遺文』4849号)によれば、「狩蔵山」が地頭の所領としてみえている。なお、民俗では、シカ、イノシシの生息する区域全体を「カクラ」(狩倉)とよび、その区域内で狩猟を行うのである。

[黒田日出男]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「狩倉」の解説

狩倉
かりくら

狩蔵・狩庭(かりば)とも。中世,荘園領主や在地領主が狩猟のため囲いこんだ山野。平安後期には和泉国大鳥神社ほか各地の神社に狩猟神事を営むための狩倉・狩庭が成立した。鎌倉時代には荘園領主や在地領主により多くが囲いこまれた。巻狩や騎射などの戦闘技術を養う軍事訓練の場でもある。一般百姓の立入は堅く禁じられていたが,中世中期以降しだいに形骸化した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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