国の名勝で、山梨県大月市の桂川に架かる長さと高さがそれぞれ約31メートル、幅約3・3メートルの木造の橋。橋脚はなく両岸から張り出した4層のはね木で支える特殊な構造で、くぎを使っていない。同市によると、600年ごろに朝鮮半島から渡来した技師が、サルが手足を支え合って橋を架ける光景を見て工法をひらめいたと伝えられる。現存の猿橋は1984年に江戸時代の姿を復元した。
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富士山の溶岩流の割れ目を浸食した桂川の深い渓谷に架かる橋。幅員五・四メートル、橋長三三・九メートル、水面からの高さ約三〇メートル。現在の橋は昭和五九年(一九八四)八月に架替えられたもの。伝説によると、百済の渡来人志羅呼が推古天皇の代に猿が川を越えるのにヒントを得て、橋を架けることに成功したという。架橋の方法は谷が深く橋脚を立てることができないため、両岸から刎木を四段に差出し、たがいにせり持たせた上に橋桁をのせる構造(刎木式・肘木式)となっている。その構造が特異なことから古くより知られ、峡谷の自然美と人工の構造美が調和する名橋として国の名勝に指定される。
文明一九年(一四八七)聖護院道興が
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
山梨県大月市の東郊,相模川の支流桂川の渓谷にかかる木橋。〈えんきょう〉ともいう。創建の時期は明らかではないが,きわめて古いと推定され,1226年(嘉禄2)にはすでに文書に記録が見られる。両岸から4層に順次張り出した刎木(はねき)の上に木の橋桁を渡し,刎木の他端は地中に埋め込まれ,安定を保っている。このような工法は刎木橋または肱木橋(ひじきばし)と呼ばれたが,現在の分類からすればカンチレバー形式に属する。渓谷が約30mと深く,橋脚を立てられないため,強さに限界のある木の桁で約31mの長さを一挙に渡るのに考え出されたのがこの構造である。腐食を防ぐため刎木の先端に付けられた小さな板のひさしと相まって木造構築物としての美しさにも秀で,日本古来の名橋の一つに挙げられている。またその構造の珍しさから,日本三奇橋の一つとされてきた。名の由来は,猿が藤蔓(ふじづる)によって渓谷を渡るのにならって架橋したなどと伝えられるが,構造上はこれと関係ない。しばしば架替えが行われたが,今も元の姿を保存している。
執筆者:伊藤 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
山梨県大月市(おおつきし)、桂川(かつらがわ)に架かる橋。「えんきょう」ともいう。木曽(きそ)の桟(かけはし)、岩国の錦帯(きんたい)橋とともにわが国の三奇橋の一つ。国指定名勝。橋は、溶岩を侵食した深い絶壁に架けられ、水面からの高さ31メートル、長さ32メートル、幅3.3メートルあり、1本の支柱も使わず、両岸から長く斜上に突き出された四段の刎木(はねぎ)が橋脚のかわりをしている。伝説では、古代、推古(すいこ)天皇の時代に来日した、百済(くだら)僧志羅呼(しらこ)がサルが何匹もつながって川を渡るのを見て、この架橋法を思い付いたという。JR中央本線猿橋駅から徒歩15分。
[横田忠夫]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…山梨県大月市の東郊,相模川の支流桂川の渓谷にかかる木橋。〈えんきょう〉ともいう。創建の時期は明らかではないが,きわめて古いと推定され,1226年(嘉禄2)にはすでに文書に記録が見られる。両岸から4層に順次張り出した刎木(はねき)の上に木の橋桁を渡し,刎木の他端は地中に埋め込まれ,安定を保っている。このような工法は刎木橋または肱木橋(ひじきばし)と呼ばれたが,現在の分類からすればカンチレバー形式に属する。…
…日本の古橋の中でとくに構造的に変わったものとしてあげられてきた岩国(山口県)の錦帯橋,甲斐(山梨県)の猿橋,黒部(富山県)の愛本橋をいう。愛本橋の代りに木曾の桟(かけはし)あるいは祖谷(いや)(徳島県)のかずら橋を入れる説もあるが,桟はけわしい崖に沿って板をかけ渡した橋で,構造的には上述の諸橋ほどの特色はない。…
…いずれにせよ寿命は短く,とくに平地河川の木橋は洪水や戦火により存亡つねならぬ状況であった。その中で世界に誇れるものとして,三奇橋と称される猿橋,錦帯橋,愛本橋(かわりに木曾の桟(かけはし)をあげる場合もある)がある。甲斐の猿橋は7世紀に百済(くだら)の帰化人によってつくられたというが定かではない。…
※「猿橋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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