水源から圃場(ほじよう)まで灌漑用水を送るための水路。機能的にみて,水源から灌漑地区までの水路は送水を主目的とし,灌漑地区内の水路は各圃場への配水に重点が置かれる。圃場での用水量を基に配水計画をたて,灌漑地区入口での必要な水量および水位が決められ,この地点を送水系の分水点として,各分水点での水量と水位を満足するよう全体の水路路線や容量が定められる。灌漑地区内の用水量が時間的に変動する場合には,分水工地点などにファームポンドを設け,送水系からの流量を調節しつつ配分する。また送水系の途中にも適当に調整池を設けて,用水の有効利用と配水管理を容易にしている例が増加しつつある。水路の構造としては開水路と管水路(パイプライン)に大別できる。従来は開水路による自然流下方式が多かったが,施工技術の進歩と水路用地や水質対策上有利な管水路を採用し,自然圧またはポンプ加圧によって圧送する事例が増えてきている。水路の通過する地点によっては,水路トンネル,暗きょ,逆サイフォン(伏せ越し),水路橋,落差工,急流工などの工種もとり入れられる。また水路の付帯構造物として,分水工,放水工,余水吐き,量水装置,水位水量調節ゲートなどが水路途中に設置される。水路の維持管理上,最大流速と最小流速の許容範囲内で流すよう設計され,ちりよけ用のスクリーンも導入される。灌漑ブロック内では,畑地灌漑であればパイプラインが圧倒的に多く,水田灌漑用にも開水路からパイプラインに変更する地区が多くなっている。各圃場での取水が比較的自由なため水管理が容易なこと,機械の運行の障害にならないことなどによるものである。なお,従来灌漑用水のみを目的とした水路でも,集落の生活用水,浄化用水,防火用水,融雪用水など多目的用途が含められるようになり,非灌漑期にも一定の水量を流す必要がある場合も多い。以上のような用水路系の複雑なシステムを合理的に運用するため,一元化した集中管理方式を採用する方向にある。
→用水
執筆者:豊田 勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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