甲賀(市)(読み)こうか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲賀(市)」の意味・わかりやすい解説

甲賀(市)
こうか

滋賀県南東部にある市。2004年(平成16)甲賀郡の甲賀、水口(みなくち)、土山(つちやま)、甲南(こうなん)、信楽(しがらき)の5町が合併、市制を施行して成立。市名は古代以来の郡名に由来。市域の東部は鈴鹿山脈(すずかさんみゃく)、南部は信楽山地の山々が占め、北部には水口丘陵が展開。東から南は三重県、南西は京都府に接する。おもな耕地・集落は西流する野洲川(やすがわ)流域(甲賀谷)やその支流杣川(そまがわ)の流域(杣谷)、瀬田川支流大戸(だいと/だいど)川(信楽川)の流域(信楽谷)に形成される沖積平野に展開。野洲川沿いに、旧東海道にほぼ合致する国道1号が東西に、その南方を新名神高速道路が走り、これに交差する国道307号が縦断し、南西端部を422号、北東端部を477号(鈴鹿スカイライン)が横断する。JR草津線・近江鉄道本線・信楽高原鉄道が通じる。鈴鹿山脈は鈴鹿国定公園、南西部の山域は三上(みかみ)・田上(たなかみ)・信楽県立自然公園の域内。奈良時代、旧信楽町域北部に聖武(しょうむ)天皇によって紫香楽宮(しがらきのみや)が造営された。一帯には甲賀寺跡など、同宮に関連する遺跡群があり、紫香楽宮跡として国の史跡に指定される。なお、甲賀寺の造営は、のちに東大寺造営に引継がれる盧舎那仏(るしゃなぶつ)建立に伴うもので、こうした事業のため当地に奈良大工が移り、これが甲賀杣大工の誕生由来との伝承もある。当地は古くから鈴鹿越えで畿内と東国を結ぶ交通の要衝で、江戸時代に東海道が整備されると、水口と土山は五十三次の宿場町となって繁栄した。水口宿は水口藩城下町としての性格もあわせもっていた。伝統的工芸品の指定を受ける信楽焼は鎌倉時代以来の歴史を有し、関連資料や伝統的作品を展示する信楽伝統産業会館がある。近年は甲南フロンティアパーク、甲賀西工業団地、八田サテライトパークなどの工業団地が造成され、工業出荷額は県内市町村の上位を占める。ゴルフ場や住宅地の造成も著しい。農林業では水稲、チャの栽培、養鶏などが盛んで、かんぴょうは特産品。また、市域の約7割を森林が占め、スギ、ヒノキの良材を産出する。面積は481.62平方キロメートル、人口8万8358(2020)。

[編集部]

『『甲賀町史』(1973・甲賀町)』


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