かゆみの激しい丘疹(きゅうしん)(大豆大までのぼつぼつ)あるいは結節(大豆大以上のぼつぼつ)をいう。単純な痒疹としては虫刺されに対する過敏反応として生ずるものが知られる。節足動物とくにノミに刺されておこる小児ストロフルスにみられるかゆみの強い丘疹、またブヨに刺されたあとに生ずる固定じんま疹にみられる激しいかゆみのある硬い丘疹、あるいは疣贅(ゆうぜい)(いぼ)のような硬い結節などが例としてあげられる。かゆみが激しいあまり、しきりにかきむしり、それが刺激になって皮疹が硬くなって丘疹状あるいは結節状となると考えられている。同じくかゆみの非常に強い皮膚病で痒疹がみられるのは、遺伝性アレルギー性体質(アトピー体質)を有する人にみられるアトピー性皮膚炎で、昔の診断名であるヘブラHebra痒疹およびベニエBesnier痒疹はアトピー性皮膚炎患者にみられる痒疹に該当する。老人性皮膚瘙痒(そうよう)症の患者にも掻破(そうは)のために痒疹が丘疹状にみられることがある。ほかに妊娠した場合に生ずる妊娠性痒疹もある。慢性多形痒疹とよばれるのは中年-老年期の患者の腰背部にしばしば認められる多彩な皮疹を示す発疹である。色素性痒疹とよばれる特異な網の目状の褐色の色素沈着を伴う痒疹もある。また、痛風、腎(じん)障害(尿毒症性痒疹など)、肝障害(肝性痒疹)、悪性リンパ腫(しゅ)および白血病、糖尿病(糖尿病性痒疹)、甲状腺(せん)機能亢進(こうしん)、慢性胃腸障害、慢性化膿(かのう)性炎症などの感染病巣、卵巣機能障害などの内臓関係の病変に関連して生ずる。原因となる疾患を検索することが重要となる。
治療については、原因の病気があるならば、それを治すことであり、かゆみの強い病気に続発したものであるならば、その病気に対する治療を行うのが原則である。局所療法として副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤含有軟膏(なんこう)あるいはテープを用いる。軽症の場合は抗ヒスタミン剤含有軟膏あるいはゼリーを用いてもよい。かゆみに対する治療としては、抗ヒスタミン剤の単独投与、抗ヒスタミン剤と副腎皮質ホルモン剤の2剤投与、あるいは抗ヒスタミン剤と精神安定剤の2剤投与などを工夫して行うが、難治性のことも多い。
[伊崎正勝・伊崎誠一]
種々の原因で生じる丘疹あるいは蕁麻疹(じんましん)様丘疹を主とする病変で,はなはだしいかゆみがある。急性痒疹の大部分は小児にみられ,一般には小児ストロフルスとして知られていたが,近年発生が減っている。代わって最近では虫刺されが主因とされ,したがって夏季に露出した四肢に生じやすい。虫に刺されたのち,漿液性丘疹から充実性丘疹となり,かゆさのため不眠や食欲減退を起こし,かきこわして二次感染を受けると,飛火を続発する。亜急性および慢性痒疹は成人に多くみられ,前者は四肢に,後者は全身に発生する。原因は代謝性疾患,妊娠,悪性腫瘍など多種多様で,いずれも著しくかゆい小結節をはじめとした病変がみられる。慢性化するにつれ,これらは湿疹様となる。痒疹の治療としては,副腎皮質ホルモン外用剤をぬったり,抗ヒスタミン薬を内服する。同時に虫刺されを予防したり,亜急性,慢性の場合は,原因となる疾患の発見と治療を図る。とくに幼小児では清潔さを保つように注意する必要がある。
執筆者:山本 一哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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