化学式CH3OH。メタノール,木精,カルビノールなどともいう。1661年R.ボイルは木材の乾留から中性の液体を得たが,1834年J.B.A.デュマによって,この物質はCH3OHと決定された。最も構造の簡単なアルコールである。
一酸化炭素を水素で還元する高圧接触反応により製造する。
CO+2H2─→CH3OH
ふつう工業的には,250~350気圧,300~400℃で行われ,触媒としては酸化亜鉛ZnOと酸化クロム(Ⅲ)Cr2O3との混合物が用いられる。原料ガスは,天然ガス,水性ガス,メタンの分解などにより得られる(C1化学)。
融点-97.78℃,沸点64.65℃,密度d145=0.79109,屈折率n15D=1.3312。水,エチルアルコール,エーテルなど多くの有機溶剤に溶ける。
アルコールとしての一般的性質をもつ。
(1)金属との反応によるアルコラートの生成。たとえば,
(2)エステル化反応
(3)エーテル化反応
(4)一酸化炭素との反応
メチルアルコールを飲用すると急性中毒(メチルアルコール中毒)を起こし,酩酊,腹痛,視力障害などの症状が出,多量の場合は昏睡におちいり,死亡する。致死量は30~100gとされるが,7~8gでも重篤な症状を起こすことがある。メチルアルコールは体内で代謝されて,ホルムアルデヒドからギ酸を経て二酸化炭素に分解されるが,これらの毒作用はホルムアルデヒドとギ酸によるとされる。治療は他の急性中毒と同様,胃洗浄や下剤の投与,輸液を行うが,メチルアルコールの代謝を抑える目的でエチルアルコールを与えることもある。
用途はきわめて広い。ホルムアルデヒド(ホルマリン),塩化メチル,ギ酸,酢酸などの合成原料として用いられる。そのままでは,自動車耐寒燃料,溶剤,エチルアルコールの変性剤として多量に用いられる。
執筆者:中井 武
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出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…芳香族化合物の側鎖の飽和炭素原子に水酸基のついた化合物もアルコールで,芳香族アルコールとよんでいる。 個々のアルコールの慣用名は,一価アルコールでは水酸基と結合しているアルキル残基の名称の後に,アルコールを付記して,たとえばメチル基の場合をメチルアルコール,エチル基ではエチルアルコールのように命名する。IUPAC命名法では,水酸基に対して〈オールol〉という語尾を用い,たとえばメタンCH4に対応するCH3OHをメタノール,エタンC2H6に対応するアルコールはエタノールと命名する。…
…メチルアルコールの別称。A.W.H.コルベはメチルアルコールにカルビノールの名称を与え,他の一価アルコールをその置換体として命名した。…
…これらのプロセスのいくつかについて補足しよう。(1)メタノール(メチルアルコール)が合成ガスから安価に生産されるようになれば,海外からこれを輸入し,合成化学原料として利用することができよう。その筆頭候補は酢酸合成である。…
※「メチルアルコール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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