もっとも広義には、個別企業の会計に対して、自然、人口、価値などを包含する人間の社会的環境を、フローとストックの両面から包括的かつ整合的に把握しようとする社会統計の体系を意味する場合もあるが、一般には、そのうちの経済的活動の側面を、企業会計の複式簿記的表記方式に従い、いくつかの勘定についてその相互関連を維持するように構成された国民経済計算の体系をいう。ここでは、後者の意味について説明する。
一つの経済社会における諸活動は、相互の関連をもちながら大きな循環過程のなかに組み込まれている。まず、国民経済の基本として企業の集団を中心とする生産活動があり、それによって生み出された価値は、その企業活動に生産諸要素(労働、土地、資本)を提供した家計に分配され、所得を形成する。そして、その所得が、企業部門で生産された財貨・サービスの購入へと向けられることにより、国民経済活動のフローとしての循環過程ができあがっている。また、この過程において生み出された価値の一部が企業および家計で蓄積され、資本形成となって新たな循環過程の維持・拡大が行われる。このようなフローとストックの実物の流れにちょうど対応する形で貨幣の流れが存在し、国民経済の各部門における資産と負債の構造を形成している。以上の国内諸活動に外国との取引関係を加えることにより、国民経済の全体構造が、企業、家計、政府、海外の各部門の経済活動における実物取引(および移転的取引)と金融取引によって、生産勘定、消費勘定、蓄積勘定として、一方の支出項目(借方)が他方の収入項目(貸方)となる形で整合的に把握されることになる。
以上を、国民経済計算の全体系を構成する具体的な部分体系との関連で整理すると次のようになる。まず、国内各部門の活動が、フローの側面において中間生産物の取引関係を中心に実物的観点から整合的に計上された体系が産業連関表であり、それと接合する形で生産要素投入と最終生産物産出の関係をとらえたものが国民所得勘定である。そして、これらと対応する形で国内各部門間の金融取引関係をフローに関して整理したものが資金循環勘定(マネー・フロー表)を形成する。海外部門の取引関係は、実物(貿易)および金融(資本)の両取引が一括して国際収支表に計上される。以上の4勘定は、最終的にストックの側面で結合され、国民貸借対照表となって、一国の資産・負債の状況が示されることになる(その正味資産額が国富)。
[高島 忠]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…システムに表す形式としては,伝統的に企業会計の〈複式記入の勘定システム〉が利用されてきた。個別企業の企業会計と区別する見地から,〈社会〉を対象とする会計という意味で,国民経済計算のことを〈社会会計social accounting〉ということもある。しかしこの〈社会会計〉という名称は,社会統計の会計形式による表章を連想させることもあって,最近ではほとんど使われなくなってきている。…
※「社会会計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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